凪いでいく話
その人と話している時、その人に関するショックなことを知った。
その瞬間、体の中心を撃ち抜かれて 空洞になった。
その空洞から飛び出した心は 氷の中に放り込まれた。
その人を目の前にしながら そのまま時は流れて 会話は進んで、わたしは平静を装いながら 空洞を抱えて 凍ったまま 笑っていた。
その日からその人は旅に出て、しばらく会えない日が続いた。
会えない間も ずっとその人のことを考えていて、
でも いつの間にか 会いたくない気持ちが膨らんでいって、
もう このまま会えなくてもいい と思っていた。
けれど、
帰って来たその人に 会った。
久しぶりに会ったその人は 何も変わらず わたしの名前を呼んで、いつものように 穏やかで 優しかった。
もう会えなくてもいい と思っていたのに、
やっぱりまた会いたい と思ってしまう。
空洞を抱いて
少しとけてゆるんだ心のまま
凪いでいく。
その人のそばを
ただ これからも
凪いでいく。
