パジェロと、ランクル80のあいだで
第2話
私の車人生の分岐点
第一話からの続き
結婚を意識しはじめた頃だった。
それまでの僕の生活は、 海と風と、週末の予定で回っていた。 ダットサントラックにトレーラーを繋ぎ、 ヨットやジェットスキーを積んで走る。 多少の不便も、むしろ楽しかった。
でも、人生は少しずつ形を変えていく。
結婚。 家族。 これから先の生活。
「次の車」は、 遊びだけでなく、 暮らしを背負う存在になる。
27歳。十分青い。
まだ何者でもなかった。
当時はアウトドアブームの真っ只中で、 クロカン四駆は時代の主役だった。
候補に残ったのは二台。
三菱パジェロ(2代目)と、 トヨタ・ランドクルーザー80。
日産のサファリも候補に上がったが別メーカーに乗ってみたかった。
どれも当時の国産クロカンの頂点で、 性能も、信頼性も、存在感も申し分なかった。
正直に言えば、 どちらを選んでも正解だったと思う。
だからこそ、迷った。
そして僕は、 トヨタの営業所に足を運んだ。
価格と支払いの話をしたときだった。
営業マンの言葉が、 僕にはこう聞こえた。
「お前みたいなガキに、買えるのか?」
——もしかしたら、 本当にそう言ったわけじゃない、と思う。
でも確かに、当時の私は、そう、聞こえた。そう感じた。
値踏みされているような感覚。
背伸びしている若造を、 試すような視線。
その瞬間、 胸の奥で何かが、すっと冷めた。
車がどうのこうの、じゃなかった。
トヨタへの嫌悪感。
「あ、ここは自分の居場所じゃない」 そう感じてしまった。
それだけで、十分だった。
その場を出て、 決めた。
トヨタ車には、多分、一生乗らない。
ずいぶん青い決断だったと思う。
27歳なんて、 そんなものだ。
若くて、 意地もあって、 それでも本気で、 人生の一部を預ける車を選ぼうとしていた。
その気持ちを、 踏みにじられたように感じた。
結果として、 僕はパジェロを選んだ。
トラブルも多い車だったけど、家族との思い出を沢山作った。
当時飼っていたハスキー犬も一緒に連れて、 キャンプに出かけた。
スキー場にもたくさん出かけた。
パジェロは、 僕が家族を作っていく過程の創成期に
いつも自然との遊びと共にいてくれた。
もし、 あのときランクル80を買っていたら・・・。
今頃はレクサスRXあたりを乗っていたかもしれないなぁ。(笑)
トヨタ車に抵抗はなくなり、 その後のカーライフも、 今とはまったく違うものになっていただろう。
でも今は、 こう思う。
あれは失った未来じゃない。
選ばなかった道だった、と言うこと。
車選びは、 合理だけでは決まらない。
誰に、どう迎えられたか。
その一瞬の感情が、 その後の人生を、 静かに決めてしまうことがある。
パジェロと、ランクル80のあいだで、 僕は一つの道を選んだ。
その選択が、 今の自分へと、 確かにつながっている。
おそらく この先も、私はトヨタ車に乗ることはないだろう。
第3話に続く
