ハンドルの向こう側で
〜選んできた車、選ばなかった道〜
第1章
「この車を、長く乗りたい」と思った日から」
最近、ふと考えた。
今乗っているBMW X6を、できるだけ長く乗りたい。

新しい車が欲しいわけじゃない、 と言えば嘘になるが、最近の物価高には心底辟易してるし、還暦を過ぎて、今更なぁ、って思いもある。
グリーン政策、EV政策がその欺瞞を曝け出し、やっぱりガソリンエンジンだ、というおっさんのコダワリが表面化した結果かもしれない。
この車はいい。長距離を走っても疲れない。 高速道路では、アクセルを踏めば、直列6気筒ターボ(NA55)のシルキーな加速が私を楽しませる。
——型落ちになったけど、ああ、この車、いいよな。
そう思ったとき、 今まで自分が乗ってきた歴代の車たちってどんなだっけ?とカーライフが一気に巻き戻った。
1台目。
最初に乗ったのは、日産のラングレーだった。スカイラインに似た面構え。父の会社の営業車を譲り受けた。 若かったし、車は乗れればなんでもよかった。
2代目
程なくして買ったのが、ダットサントラックのWキャブだ。アメリカンスタイルに憧れがあった。わたせせいぞう氏のイラストと片岡義男の小説が好きだった。

あの頃の僕は、ディンギー(ヨット)のレース三昧だった。 週末になればトレーラーを繋ぎ、ヨットを引っ張って海へ向かった。 砂浜からヨットを降ろし、風と波と遊んだ。
マリンスポーツが好きで、 中古のカワサキのジェットスキーを買って荷台に積み込んで海で遊んだ。 ダットラは、最高の相棒だった。 濡れても汚れても気にならない。 「生活」と「遊び」の境目が、あいまいだった時代の車だ。今のカミさんと出会ったのも、この頃。そして、この車だった。

結婚する、少し前だったと思う。
ダットラの次の車を考え始めた。27歳の頃だ。
その時に浮上したのが、 三菱パジェロ(2代目)

と、
トヨタ・ランドクルーザー80だった。
当時はアウトドアブームで、クロカン(クロスカントリー車、オフローロド車)が人気だったし、どちらも当時の国産クロカンの頂点で、 ダットサントラックの後継としてどちらを選んでも正解だったと思う。
だからこそ、迷った。
そして、トヨタの営業所に足を運んだ。
そこで交わした、ほんの短いやり取りが、
結果的に、それ以降の僕のカーライフを決めてしまうことになる。
——その話は、次で書こうと思う。
今こうしてBMW X6のハンドルを握りながら思うのは、
車選びは、性能や価格だけで決まるものじゃない、ということだ。
誰に、どう扱われたか。
その車が、自分を迎え入れてくれたか。
その積み重ねが、
気づけば自分の人生を形作ってきていた。
BMW X6を長く乗りたいと思った日、
僕は初めて、
自分がどんな車を選び、
どんな理由で別れてきたのかを、
ゆっくり振り返る気になった。
