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【寒田神社】ヤマトタケルからアメリカ人宇宙飛行士までの歴史を刻む式内社

神社とアメリカ人宇宙飛行士。ありえそうにない組み合わせです。しかし、その二者の縁が実現したのが神奈川県の西部にひっそりと鎮座する式内社。
短時間に複数の参拝者が訪れ、熱心に祈る方の姿も見られました。
さらに、こちらの神社にはヤマトタケルに関する二つの伝承が存在していました。それらの伝承に触れて感動しつつ、酒のことが頭をよぎります。神道では飲酒禁止ではないことに感謝です。


寒田神社(さむたじんじゃ)
神奈川県足柄上郡松田町松田惣領1767/駐車場無料・トイレなし
公式ホームページ:事実上の閉鎖状態のため以下のページを参照。

神奈川県神社庁の紹介ページ
https://www.kanagawa-jinja.or.jp/shrine/1210209-000/

松田町の公式ホームページの観光情報での紹介ページ
https://town.matsuda.kanagawa.jp/site/kankou-sub/samutajinja.html


■地域に密着してきたことを感じる式内社■

あ、あった!
見つけたのは年季の入った、寒田神社の石製の社号標。
それほど大きくはない道路から入る小道に立っていました。
注意しながら、大通りを運転しないと見落としてしまいそうです。

右側に社号標が写る。

小道に入ってしばらくすると鳥居が見えてきます。
道路に対して鳥居、参道、社殿がかなり斜めになっています。

真南を向いて一直線に並ぶ鳥居、参道、社殿。

おそらくはこれらの施設を真南に向くようにしたためだと思われます(推測ですが地図で確認しました)。
神道の基本が忠実に守られた神社です。

《相模国の式内社》太字は「神社訪問記」で投稿済みの神社。
1.寒田さむた神社(松田町)
2.川勾かわわ神社(二宮町)
3.前鳥さきとり神社(平塚市)
4.高部屋たかべや神社(伊勢原市)
5.比々多ひびた神社(伊勢原市)
6.阿夫利あふり神社(伊勢原市)
7.小野おの神社(厚木市)
8.大庭おおば神社(藤沢市)
9.深見ふかみ神社(大和市)
10.宇都母知うつもち神社(藤沢市)
11.寒川さむかわ神社(寒川町)
12.有鹿あるか神社(海老名市)
13.石楯尾いわたておの神社(※注記1参照)

※注記1:候補地が相模原市に4ヶ所、大和市、座間市、藤沢市にそれぞれ1ヶ所の合計7ヶ所ある。このような式内社の候補神社を論社(ろんしゃ)または比定社(ひていしゃ)と呼ぶ。

鳥居をくぐると拝殿まではすぐ。それほど大きい神社ではありません。
しかし、参道の両側に鉢植えの花が並べられ、神職や氏子さんによる、温かい手作り感があります。ぬくもりを感じる神社です。

私が参拝したときには、年配の男性がわりと長い時間拝殿に手を合わせていました。
服装から判断してはいけないかもしれませんが、思い切りの普段着だったので、おそらく近所の方ではないかと。
毎日参拝されているのかもしれません。

さらにどういうわけだか、南アジア系と思われる若い女性二人が参拝をしていきました。
なかなか懐が深そうです、寒田神社。

拝殿まで並べられた鉢植えが心を和ませてくれる。

■歴史を感じる境内を巡る■

拝殿は「青丹よし…」という感じのコントラスト。
和歌の世界では「奈良」専用の枕詞ですが、ここでは勝手にこの表現を使わせていただきます。
「青丹よし」に著作権はありませんし。

古いながら、よく手入れが行き届いた社殿。

さて、寒田神社はなんといっても主祭神がヤマトタケル。
それほど遠くないし、ぜひいつか参拝したいと思いつつ、なかなか参拝できなかった神社です。

noteで神社訪問記を綴り始めたのが、参拝の大きなきっかけとなりました。
ありがとうnote。

立派な額。日々開閉されているであろう社殿。

拝殿の扉に施されているのは社紋でしょうか?
かなり仏教的な雰囲気です。
これまた神仏習合の名残りかもしれません。

寒田神社について詳しいことを知りたいのですが、ホームページもSNSも閉鎖されています。
Facebookの2022年9月30日の投稿には次のように綴られていました。

当社ホームページに対するクレームがありました為、ホームページ及びSNSを閉鎖させていただく事に致しました。
長らくフォローしていただきました方々にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解ください。
尚、御朱印につきましては、引き続き休止とさせていただきます。
今後のお問合せは電話にてお願い致します。

寒田神社のFacebookより。

いったい何があったのでしょう?
文面からは静かなお怒りの様子がじんわりと感じ取れます。
だいたい、神社のホームページにクレームって、どんな人がどんなことを言ったのでしょうか?

寒田神社を敵に回すということは、御祭神のヤマトタケルを敵に回すということで、それはついでに私を敵に回すということです。かかってきなさい。

いずれにせよ、その方のせいで、貴重な情報が入らなくなってしまいました。大好きだったアーティストが引退してしまったような悲しみです。

拝殿側から見た境内。神聖な空気とぬくもりが漂う。

年季の入った狛犬の造形が目を惹きます。
阿形あぎょう(口を開いた形)の躍動感と、吽形うんぎょうの重厚感の対比がすばらしいです。

阿吽あうんともに、獅子が千尋せんじんの谷に子供を落とす試練を与えている場面を表したもの。

阿形(あぎょう)の狛犬。谷に落とされた子獅子が這い上がる。
吽形(うんぎょう)の狛犬。こちらの子獅子の方がより上に這い上がっている。

■ヤマトタケルの足跡■

驚いたのは、ヤマトタケルが腰掛けた石があったこと。
茅ヶ崎市の腰掛神社と同じ伝承です。

ヤマトタケルの遠征路は長大ですから、各地に伝承が残っています。
また一つヤマトタケルの足跡に触れて感動しました。

ヤマトタケルが腰掛けた石。

Geminiでイメージ画像を作ってみました。
こんな感じで腰掛けたのでしょうか?

古代日本人ぽくない顔立ちのヤマトタケル。

そういえば、
「遠征の成功を祈願して川に酒を流し、遠征からの帰路にこちらに寄ると、まだ川に酒の匂いが残っていたので酒匂川になった」
という社伝があると聞きました。

へぇ! 知らなかったです。
酒匂川にはずっと親しんできましたが、初めて地名由来を知りました。
(ついでに、ちゃんと酒にもずっと親しんでいます。)

この、身近すぎて知らなかったことについてのエピソードを知ったときの感動って、独特のものがあります。
意識もしていなかった小さな蕾が、突然ふわっと花開くような感じでしょうか。

夕暮れ少し前の酒匂川。

社殿の裏手には、歯の供養碑なるものもありました。
抜いた歯を供養するということのようです。

私は抜いた親知らずを一本保管したままなのですが、これは供養したほうがいいのでしょうか?
といって、勝手にここに埋めたら怒られますよね、やっぱり。

歯の供養碑。歯に関する言い伝えは地域差もあるので大変。

■アメリカ人宇宙飛行士との心温まる話■

突然ですが、20世紀半ばにタイムスリップします。
時は東西冷戦の真っ只中。
アメリカとソ連は宇宙開発競争にもしのぎけずっていました。

ソ連に遅れを取っていたアメリカは、1962年に、人が乗った宇宙船(フレンドシップ7/別名マーキュリー6号)で地球を回る計画に挑戦します。

アメリカでは、今まで有人の宇宙船が地球を回ったことはありませんでした。
フレンドシップ7が地球を一周以上すれば、アメリカ初の快挙となります。

国立航空宇宙博物館(ワシントンD.C.)に展示される「フレンドシップ7」(MA-6)。2009年9月5日撮影、HrAtsuo撮影。CC0 1.0(パブリックドメイン)

宇宙船に乗り込んだのが米海兵隊中佐だったジョン・グレンさん。

その宇宙船の打ち上げ前に、松田町で下駄店を営んでいた77歳の渋谷徳三さんが、寒田神社で祈祷を受けた神札しんさつを、国会議員を通じてグレンさんに贈っていたのです。

その神札をグレンさんが宇宙へ持っていったかどうかは定かではありません(私は持っていったと信じています)。
そして計画は成功。グレンさんは地球を周回した、初のアメリカ人宇宙飛行士となりました。
宇宙船にトラブルもあったようで、グレンさん、危機を乗り越えての成功でした。

この出来事は「ライトスタッフ」という映画にもなり(1984年)、オスカー賞®️を4回受賞しています。
さらに、グレンさんは、「ディープインパクト」という映画(1998年)の登場人物のモデルの一人にもなりました。

そして翌1963年、ジョン・グレンさんが来日。
渋谷さん宅を直接訪問して「大願成就」のお礼を伝え、寒田神社に参詣されました。
歴史に名を刻んだ宇宙飛行士が訪れた神社。
すごくないですか?

さらに、36年後の1998年。
77歳になったグレン氏がスペースシャトル・ディスカバリー号(日本人の向井千秋さんも同乗)で再び宇宙へ向かう際にも、寒田神社からお札が贈られました。

77歳は、渋谷さんがグレンさんに寒田神社の神札を贈ったときの年齢です。
これまた不思議な縁を感じます。

それにしてもお元気ですね、グレンさん。77歳で宇宙へって。
自分もまだまだ頑張らなきゃ。

マーキュリー宇宙服姿のジョン・H・グレン・ジュニア飛行士。1962年2月、NASAグレン研究センター提供。米国においてパブリックドメイン

■ようやく夫婦揃いました■

最後に寒田神社の説明板の写真を載せておきます。
1472年にはオトタチバナヒメも合祀されて、晴れて夫婦二神揃って御祭神となりました。
めでたし、めでたし。

ヤマトタケルが腰掛けた石があり、アメリカ人宇宙飛行士とも縁のある神社。歴史の長さへの感動が湧いてきます。

神社を維持していくには、関係者のみなさまの大変なご苦労もあると思いますが、式内社としていつまでも残っていくことを願って止みません。

■御祭神■

倭建命(ヤマトタケルノミコト)
弟橘比売命(オトタチバナヒメノミコト)
菅原道真(すがわらみちざね)
誉田別命(ほむだわけのみこと)

ヤマトタケルは第12代・景行天皇の皇子。父の命令で各地の「まつろわぬもの」を成敗するための遠征を繰り返す。

オトタチバナヒメはヤマトタケルの妻の一人。三浦半島で荒れた海を鎮めるために自ら海中に身を投げる。
詳しくは以下の記事をご覧ください。

菅原道真は言わずと知れた天神様。学問の神様。
誉田別命は第15代・応神天皇のこと。八幡系の神社の御祭神で武神でもあります。

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