#11【実録】一枚の婚姻届が家族との縁を切った話
10月末…
朝から1本の電話があった。
「おじいちゃんが救急車で運ばれた」
母からだった。
朝の日課のマラソンの最中に倒れて
通行人の方が救急車を
呼んでくれたと言っていた。
母は動揺していて…
病院についたらまた連絡すると言って
電話は切れた。
———
私も大好きな祖父が倒れたと聞いて
かなり動揺しながら
病院に行く準備をしたのを覚えている。
よしきは出掛ける予定があったけど
私のショックな状態を見て
予定をキャンセルしてくれた。
———
母から電話が鳴った…
「おじいちゃん…大動脈解離で
ICUに入って手術になるって。」
「…大丈夫なの?」
「先生の話では難しいバイパス手術になるから
これから会議になるらしい」
「あたし病院これから向かうね」
「ICU入ってるし
みおの今の金髪の姿みたら
おじいちゃん驚いちゃうから
手術終わってから来なさい。
まだ赤ちゃんのことも
話せてないの…」
わかったと言うしかなかった。
———
家族の誰かが救急車で運ばれるなんて
はじめてだったし
大動脈解離がどんな病気なのかも
当時の私は知らず
会いに行くことすらできないことに
涙がでた。
———
メールで会議の結果
次の日の朝から手術になったことを
知らされた。
おじいちゃんは母方の祖父で…
母自身が相当気を病んでいるであろう事は
容易に想像がついた。
———
翌日早朝…
電話が鳴った。
おじいちゃんが亡くなった。
のちに聞いたんだけど
手術まで待てずに
血管が裂けてしまったと…
———
その時のことは
あまりにもショックで…
あまり記憶にない。
お葬式もあまりにも
現実感がなくて。
ただただ哀しくて。

———
お腹の子をおじいちゃんに
会わせたかった…
抱いてほしかった…
私の小さい頃のように
いろんな事をこの子に教えてあげてほしかった…
———
おじいちゃんは
家でも浴衣で過ごすような人で。
碁が上手で。
物知りで。
親指が取れる手品をよくしてくれる
優しい人だった。
———
祖父が亡くなってからは
哀しいのと悪阻で…
私はベッドで過ごすことが
多くなった。
金髪じゃなければ…
もっとちゃんとしてれば…
後悔はたくさんあった。
———
最初はよしきも
心配してくれていたと思う。
でも途中からは
友達から誘われれば
朝まで遊ぶなんて日も
でてきていた。
———
そんな中、
婚姻届をだす約束をしていた
11月22日を迎えた。
自分達の書く欄は
あらかじめ書いてあったと思う…
———
保証人の欄…
ここで勝手に結婚したら
また親を傷つけるかもしれない。
そう思っていた私は
実家にお願いにいった。
———
ピンポンを押して
鍵を開けてくれたのは母だった。
お葬式以来はじめてあう母。
「どうしたの?」
「婚姻届を出すんだけど
サインをお願いしたくて」
「…お母さんは反対だって
言ったよね?」
「わかってるけど
でも認めてほしくて」
「普通に考えて…
反対してるって言われて
なにも状況が変わってない中
おじいちゃんの49日も
すんでないのに
お願いにくるっておかしいよ。
それによしきくんは?
頼みにくるなら
普通ふたりでくるでしょ?」
「あたしが来なくていーって言ったの。
お母さんが怒るの分かってたから。」
「怒られても認めてほしいなら
来るべきだし
これで勝手に結婚するなら
みおとは縁を切るから」
そう言って
リビングの扉を
バタンと閉められた。
———
涙が流れた…
普通にお祝いしてほしかった。
そんな気持ちの方が強くて…
———
すると
父が静かに近づいてきた。
私が握りしめていた婚姻届を
何も言わず
そっと受け取った。
そして保証人の欄に
自分の名前を書いた。
そしてそっとペンを置いて
私を見ながら…
「お母さん…おじいちゃん
亡くなったばかりで辛いから。
でもその子を産みたいっていう
みおの気持ちはわかったから。
大変だと思うけど
頑張りなさい。
お母さんには
少し時間をあげて。
お母さんも優しい人だから
いつかわかってくれるよ。」
と父は言った…
泣きながら実家をでた。
———
こうして母を説得することが
出来ないまま
私は結婚した。
箸休めに【番外編】祖父との思い出もどうぞ。
#12【実録】Xmas…最悪なプレゼントの話につづく
