京セラの技術×アートで想いをカタチに。~環境配慮技術でタペストリー~
こんにちは!京セラ広報note編集部のNatsuです。
昼休み、京セラ本社の食堂フロア「mimosa terrace(ミモザテラス)」でふと壁に目を向けると、視界に飛び込んでくるのは、緑と水の気配をまとった鮮やかな風景。
思わず足を止めて近づいてみると、色鉛筆の線の濃淡や重なりまで繊細で目が釘付けに!

この作品は、障がいのある作家さんが描いた原画をもとに制作されたタペストリー。京セラでは2022年から、こうした作品をタペストリーとして掲示する取り組みを続けてきました。
そして今回は、京セラが開発した捺染*¹インクジェットプリンター「FOREARTH(フォレアス)」 を使って初めて作品をプリントし、展示をおこないました。
この企画の裏側に込められた想いと取り組みについて、今回はご紹介します。
*¹捺染=布へのプリント
FOREARTHって何?
ー“きれい”と“サステナブル”を同時に叶えるプリント技術ー
FOREARTHは、捺染市場で高い評価を得ている京セラのインクジェットプリントヘッドを搭載した、京セラドキュメントソリューションズの環境に優しいデジタル捺染インクジェットプリンターです。

実は現在も広く使われている従来のアナログ捺染では、工程の中で大量の水を使用することをご存じでしょうか。染料による布の染色、洗浄、スチーム等の工程で、生地1kgあたり約153リットル*²もの水が使われ、排水に含まれるマイクロファイバーが海洋汚染に大きな影響をもたらしているともいわれております。
京セラが開発したFOREARTHでは、工程を大幅に削減、プリントと乾燥のみとした事で、水使用量を大幅に削減し、生地1kgあたりわずか約0.02L*³を実現。 同時にエネルギー消費量とCO2排出量の削減にも貢献します。
品質面では、独自開発の水系顔料インクと前後処理剤を含むオールインワンシステムにより、顔料捺染特有の発色・風合い・堅牢性という品質課題を高次元で克服し、生地の柔らかさを保ちながら、高精細で鮮やかな表現を多様な生地で実現する事が可能となりました。
環境への負担を抑えながら、ものづくりの自由度も広げられる技術なのです。本技術は、パリ、ミラノ、東京ファッションウィークに参加するブランドデザイナーに多く採用されるなど、国際的にも評価を受けています。

更にFOREARTHには、京セラの強みであるファインセラミックスの独自技術と高い吐出性能を実現する、京セラの循環インクジェットプリントヘッドが搭載されています。

社会貢献活動と技術の出会い
今回の取り組みは社会貢献活動と技術、それぞれの現場の気づきから生まれました。
この企画を進めたのは、総務部 社会活動推進課の伊原さんと、プリンティングデバイス営業部の喜田さん。
伊原さんのチームは、障がいのある方の才能を発揮する機会づくりの一環として、京セラ本社一階の京セラギャラリーでの特別展に加え、原画に比べ展示場所や保管が自由なタペストリー展示を展開しています。
一方で、喜田さんの、捺染のデジタル化を促進するND(捺染デジタル)プロジェクトでは、「技術の魅力をどう伝えるか」という課題がありました。そうした中で浮かびあがってきたのが、「アートを通じて技術を伝える」という発想です。

喜田さんは、日頃から京セラギャラリーの特別展やタペストリー展示を目にしていたといいます。
「時間を忘れて見入ってしまうほど、色の絶妙な組み合わせやダイナミックな表現に惹きつけられました。作家さんたちの常識にとらわれない発想力や独自性に感動し、このような作品を自分たちのインクジェットプリントヘッドで、印刷してみたい!この色の多さ、鮮やかさを、京セラの技術なら表現できるのではないかと思いました。」
一方で、伊原さんにもつなげたい理由が生まれていました。
「大阪・関西万博で、滋賀のお魚博士として有名な高校生が描いたイラストをFOREARTHでプリントしてサステナブルな衣装を制作した事例を見て、繊細な描写がとてもきれいに再現されていることに驚きました。自社技術を使用して、障がいのある作家さんの作品を、より美しく表現できるのではないかと感じました。」
さらに、水の使用量を大幅に削減できるという環境配慮の点からも意義ある取り組みになると感じたそうです。
「ちょうど連絡しようと思っていたタイミングで声をかけて頂いて、驚きました」と喜田さん。
“社会活動”と“最新技術”、異なる領域がそれぞれの視点から可能性を見出し、ひとつの企画へとつながっていきました。
作品はどう選んだ?
今回選ばれたのは、京都府の障がいのある方の作品を記録する「アートと障害のアーカイブ」(京都府とart space co-jin〈きょうと障害者文化芸術推進機構〉が実施)に登録されている、藤橋貴之さんの作品。色鉛筆で描かれた繊細で色鮮やかな風景です。
使われている色は、なんと170色にのぼります。


作品の選定にあっては、それぞれがこんな想いを語ります。
喜田さんは「時期」を強く意識しました。
「新入社員が入社して約3か月ほど。疲れもたまりやすい時期だと思います。お休み明けに会社へ来たとき、外の気候に負けない“晴れやかさ”を感じられるものを届けたいと思い、見た人が清々しい気持ちになれる作品を選びました」
伊原さんもまた、季節感と“FOREARTHらしさ”を重視。
「『水』を想起させる作品であること、そして初夏の展示なので、季節にあった緑のある爽やかな日本と海外の自然の風景であることを大切にしました。タペストリーを見て思い出に心を巡らせ、癒しを感じてもらえたらと考えました。」
“原画の近さ”にこだわる——タペストリー制作、2つの工夫
タペストリーは、原画と比べて展示場所を選ばず、多くの人に見てもらえる一方で、再現性が課題になりがちです。
そこで今回は、より原画に近い表現を実現するために、2つの工夫をおこないました。
①作品を引き立てる“余白”と設計
作品が一番美しく見えるように、外側の白幅(フレームのような役割)や、作家名・作品タイトル・説明文の配置にこだわりました。統合デザインセンター(以前のnoteをご参照)にレイアウトの協力を依頼し、全体のバランスを調整しました。
②色再現の追求と最適な出力メディアの選択
今回のタペストリー制作では出力テストを通して作品本来の美しさがダイレクトに伝わる色表現を追求しています。布の選択においては、色再現性だけでなく展示向けの耐久性を兼ね備えた生地を選択しました。

“社内の真ん中”に掲示する意味——立ち止まる場所へ
完成したタペストリーは、早速「mimosa terrace」に設置されました*⁴。場の雰囲気は一気に鮮やかに。通り過ぎていた場所が、“立ち止まる場所”に変わります。
また、社内からは、
・明るい気持ちになれます!作品とFOREARTHの良さが最大限にいかされていて美しいです😊
・色がすごく鮮やかなのに、柔らかい印象を受けますね!細かな色合いに感心しました。
などの声が寄せられています。
伊原さんと喜田さんは、「色鉛筆の線の濃淡まで再現できているところにも、ぜひ注目してもらえたら嬉しい」と語ります。

これから——この活動を起点に、もっと多くの人へ届く未来へ
こうしたタペストリー展示の取り組みは、京都から関西、さらに九州へと京セラの事業所内で広がっています。
今後は、さまざまな場所に広がり、日常の中でふと心を動かすきっかけになっていくといいなと思います。
そして、その背景に京セラの技術があること。
布の上にあるのは、色だけではありません。作家さん、関わった社員の想い、そして「誰もが活躍できる社会」への願いが、そこに込められています。
*² Kujanpää , M. & Nors , M. (2014). Environmental performance of future digital textile printing. VTT Technical Research Centre of Finland.VTT Customer Report Vol. VTT CR 04462 14
*³ 当社調べ2022年
*⁴ 社内スペースでの展示となっており一般公開は行っていません。
以前の関連するnote👇
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