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突撃!京セラのデザイナーに聞いてみた!(1)

こんにちは、広報のリドミーです。
突然ですが、こんなふうに思ったことはありませんか?
「企業や工場で使われる法人向けの製品にデザインは必要?」
今回は、そんな素朴な疑問をきっかけに始まった
「突撃!京セラのデザイナーに聞いてみた!」をお届けします。
 
答えを探すために向かったのは、京セラの統合デザインセンター。
「デザイナー=おしゃれ」というイメージに、少し気後れしながらの訪問でしたが、その印象は、いい意味で見事に裏切られました。
キーワードは、「つなぐ」
今回は、地道に、誠実にデザインと向き合うデザイナーたちの言葉とともに、京セラのデザインが、どのように製品や事業と関わっているのかを4つの事例を通して、2回に分けてご紹介します。


京セラにデザイナーがいるの?

「京セラって、何をしている会社?」
そう聞かれると、「スマホ」「太陽光発電」「部品かな?」と、いくつか思い浮かぶものの、「これ!」とひと言で答えるのは、意外と難しいかもしれません。 
なぜなら、京セラは、法人向け製品から一般のお客様向け製品まで、非常に幅広い分野で製品・サービスを手がけている会社だからです。
 
だからこそ、どの製品に触れても「京セラらしい」と感じてもらうことが大切。その役割を担っているのが、横浜・みなとみらいに拠点を置く「統合デザインセンター」です。
同センターでは、グループ内の製品デザインからUI(ユーザーインターフェース)、ブランディングまで、法人向け・一般のお客様向けといった垣根を越えて、デザインの力で京セラの価値を社会に伝えています。

法人向け製品にデザインは必要ですか?

今回の取材のきっかけとなったのが、この1枚の製品写真。
これ、何の製品かわかりますか?

実はこれ、金属加工用の工具を扱う機械工具事業本部の新たなセンシングソリューション「VIMOA(ヴィモア)」のセンシングツールです。
一瞬、一般のお客様向けの通信端末のようにも見える、「色」が印象的な製品です。
しかしこの製品が使われるのは、切削工具で金属を削る工作機械の内部という、れっきとした法人向け製品です。
そのギャップから、冒頭のあの疑問が頭をよぎりました。
 
「法人向けの製品に、デザインは本当に必要なの?」
このVIMOAとの出会いが、今回の取材のスタートです。

◆「モノ×コト売り」(ソリューションビジネス)へ、事業の変化を伝えるデザインの力

そこで、「VIMOA(ヴィモア)」のロゴやブランディング、そして機器デザインを手がけた二人のデザイナーに突撃してきました。

「VIMOA」のロゴとブランディングを担当した照山さん(右)と、
機器デザインを担当した奥井さん(左)

―あの、法人向け製品にデザインは必要なんでしょうか?

―照山:
VIMOAの事例は、その質問に対する一つの答えかもしれません。
まず、機械工具事業本部は、切削工具──金属を削るための刃物を製造、販売する、いわゆる王道の製造業向け製品を扱っています。
ですが、今回のVIMOAは少し違います。
この製品を工作機械に取り付け、切削中の微細な振動を高精度で測定し、リアルタイムで可視化・監視・分析することで、切削加工の改善やスムーズな生産ラインの立ち上げまでを支援するセンシングソリューションです。

つまりVIMOAは、「工具(モノ)を売る」ビジネスに、「課題を解決するソリューション(コト)を提供する」ことを掛け合わせていく。つまりビジネスが“変わっていく”、その象徴的な存在です。
これから変わっていく、という事業本部の意思をデザインで可視化し、プロダクトを通じて世界観や価値観を正しく伝える。それこそが、自分たちに任された仕事です。 

照山さん

―お二人は実際、どのように進めていったのですか?

-奥井
これまではスマホのように基本的な原型がある製品のデザインに携わることが多かったですが、VIMOAは前例がない製品で自分にとって新しい挑戦となりました。

―照山
正直なところ、切削工具の業界も製品についてもほとんど知識がなかったので、まず、展示会に足を運び、「見ること」、「知ること」から始めました。 そこで目にしたのは、スマホの世界とはまったく別の景色でした。 大型機械の存在感と迫力、重厚な書体や力強い原色のロゴなど、工作機械・工具業界ならではの緊張感あふれる雰囲気が伝わってきました。

―照山
VIMOAのロゴを検討するにあたり、まず取り組んだのは「業界ごとのロゴ のイメージマップ」の作成でした。 いくつかの業界をピックアップし、違いや傾向をマッピングしている中で見えてきたのは、ロゴは単なる企業の記号ではなく、事業の立ち位置や向かう方向を語る存在でもあるということでした。 VIMOAのロゴも、イメージマップ上でモノ売りからソリューション業界へと移行しているエリアのロゴを参考にアイデアを展開し、作成しています。「事業を変えていく」という事業本部の強い想いと自然に重なったのではないか、と思います。

検討に使用した資料の一部、上段から中段左の図が各業界ロゴのイメージマップ

◆モノ×コト売り(ソリューションビジネス)へ変化する想いを込めた「シフトブルー」

冒頭の製品写真で、目を引いたのがVIMOAのブルーのカラー。
そもそも、法人向け製品でここまで「色」を前面に出すことは多くない。
だからこそ、このブルーは少し珍しく感じました。
―照山
今回、コト売りのソリューションビジネスへ挑戦するVIMOAには、そのビジネスの姿勢や方向性を体現する「色」が必要だと考えました。
京セラには社内で定義された色があります。機械工具事業本部では、パンフレットなどに独自の「ブルー」を使っていますが、業界内には似たような原色に近いブルーを使っている企業も多い。そこで選んだのが、VIMOA独自のカラー「シフトブルー」です。

シフトブルーは、モノ売りからデータや知見を生かすコト売りのソリューションビジネスという新たなステージにシフトしていく、という事業本部の意思を表した色です。とはいえ、モノ売りを否定しているわけではありません。製品を届けることに加え、これまで培ってきた価値をデータとして昇華し、新たなビジネスへつなげていく。イメージマップを参考に、よりデジタルサービスやソリューションに見られるような、明るくビビッドな方向に従来のブルーをシフトさせ、その想いを表現しました。

◆デバイスで世界観を発信

機器のデザインについても教えていただけますか?

奥井さん

―奥井
機器デザインのコンセプトは「タフネス」です。
力強さと信頼感を表現するため、多面体をベースにしたフォルムを採用しました。
ただし、センシングソリューションとしての先進性や高精度さが伝わるよう、無骨なデザインではなく、アルミ削り出しの質感を生かしたソリッドな基本形状から鋭さや洗練されたイメージのデザインにしています。

実は、VIMOAには、京セラの高耐久スマホで使われているバッテリーを搭載 しています。試作段階では乾電池を使っていましたが、電池交換のたびに電池蓋のネジを外す必要がありました。変更したことで使いやすさが大きく向上し、お客様の利便性につながったと思います。

「VIMOA」のカラーには、メインカラーのシフトブルーに加え、センサー部分に
サブカラーとして黄色の「コーションイエロー」が使われている。工作機械のどこに
装着されているか、一目でわかるよう、あえて注意を引く「色」にした。「現場での
安全意識を高めつつ、機能的なアクセントとして効かせた、視認性設計です」(奥井)

「デザインとは、会社とユーザーをつなぐコミュニケーションの手段です」、そう話すのは、照山さん。
「法人向けであっても、一般のお客様向けであっても、その本質は変わりません。複雑なものを、いかにわかりやすく、直感的に伝えられるか、その役割を担うのがデザインです。
ロゴやブランドは、世に出でてから自走していくことが大切です。その世界観が多くの人に共有され、ビジネスのさまざまな場面で自然と使われていく状態を目指して、日々、デザインに向き合っています。
 
奥井さんもまた、「デザインとは、使い手との信頼関係を築くためのインターフェース」だと話します。
使い心地や、手に取った瞬間の印象は、企業への信頼感につながる。
だからこそユーザーがどう使うかを深く想像することを大切にしているそうです。
「製品やサービスの裏にある技術や価値を、きちんと形にすることが、デザインの役割だ」と言い、開発現場と対話を重ねながら、誠実なデザインを積み上げています。
                 ***
 
VIMOAには、製品に託された事業本部の意思を受け止めたデザイナーの想いが込められていました。
 では、一般のお客様向け製品はどうなのか?
そんな疑問を胸に、次に向かったのは、京セラが運営する食物アレルギー対応サービス「matoil(マトイル)」、そのパッケージデザインを手がけた統合デザインセンターの森さんを突撃しました!
森さんは、このmatoilのパッケージを通して、何を伝えようとしたのでしょうか?

デザインで伝えるワクワク感とは?

matoilは京セラのスタートアップ制度から誕生し、現在事業化を目指している食物アレルギー対応サービスです。
食物アレルギーがあっても、行動や選択肢が制限されることがないように、自宅だけではなく、旅先へなど、さまざまなシーンで食事を提供しています。
そのmatoilのデザート3種類が、2026年3月1日からJALの国際線ファーストクラスとビジネスクラスの機内特別食のデザートとして採用されました。

「matoil」のパッケージデザインを担当した森さん

―森
実はmatoilが、一般のお客様向け商品にパッケージデザインを付けるのは、今回が初めてでした。
普段はWebやLINEで注文を受け、調理した食材を真空パックにして、商品名や原材料名などが書かれたシールを貼りお届けしています。一見とてもシンプルですが、届いたらそのまますぐに調理ができ、安心して食べられるという機能性に優れたパッケージです。
ただ、この方法が成り立つのは、matoilを既に知っている人からの「指名買いビジネス」だからこそでした。
 
今回JALの機内特別食として提供されることで、matoilのことを全く知らない方が、初めて商品を手に取る、そんな場面が増えてきます。しかもおそらく、アレルギーのある方が多く利用されると思います。
だからこそ大切にしたのは、「どのような想いで、誰のために作られているデザートなのか」をきちんと伝えること。その背景がわかることで、機内という特別な空間でも、安心して楽しんでもらえる。そんな思いからパッケージデザインをスタートさせました。
 
―パッケージのデザインは、どうやって決めていったのですか?

―森
JALの機内特別食に採用されたことで、matoilとお客様の接点は一気に広がります。その大切な「最初の接点」が、パッケージだと考えました。
そこで、デザートを手に取ったときに感じてほしい気持ちを言葉にするところから始めました。出てきたキーワードは、「楽しさ」「ワクワク感」「安心感」「おもてなし」「手作りのぬくもり」。
これをもとに、チームメンバーと4つのデザイン案を作成しました。

JALの機内特別食用に考えたmatoilデザートパッケージ、
4つのデザイン案は、どれも食べる体験を楽しめるデザインになっている

最終的に選んだのは、「食べる喜び・安心・楽しさ」がいちばんダイレクトに伝わる「窓」のデザイン。飛行機の窓から知らない世界を覗くようなワクワク感と、matoilのデザートに出会う瞬間のときめきを重ね合わせた。

パッケージをひろげた内側にはmatoilからのメッセージと、InstagramにつながるQRコードが
記されている。 窓のかたちとメッセージの配置を合わせる工夫も。「食べ終わった後も、
ここからmatoilの新しいつながりが生まれてほしいーそんな願いを込めています。」(森)

もうひとつ意識したのが、形の異なる3種類のデザートを「matoil」というひとつの世界観で統一すること。3つのデザートが横並びで並んだときにどう見えるか、そのバランスは、何度も確認しながら細かくデザインを詰めていきました。

「京セラはアメーバ経営のもと、各部門がそれぞれ事業価値を考えていますが、ベースにある想いは同じです。」
最後に森さんが考える京セラのデザインとは何ですか?と聞いたところ答えてくれました。

デザインには、事業のテーマやモノの価値を正しく伝える力がある。その力を使って、ひとつひとつは違って見えても、遠くから見ればちゃんと「京セラ」であると思える。そんな根底を流れる“想い”みたいなものをデザインに込めたいな」と日々考えています。

森さん

***

取材を終えてみると、デザインには法人向け、一般のお客様向けという垣根はないと感じました。
デザインとは、「京セラ」と社会をつなぐものであり、製品の価値を正しく伝えるものでした。
デザインの力ってすご~い、と思っていたら、ちょっと待って・・・。
そうは言っても、商品を取り出したら捨てられてしまう(かもしれない)「箱」にもデザインは必要ですか?という疑問がまた湧いてきました。
ということで、もう1度、突撃しますのでお楽しみに。

次回、目次
・捨てられてしまう外箱にデザインは必要
・京セラの裏側をデザイン?

◆VIMOAに関する情報はこちらVIMOAスペシャルサイト

◆matoilに関する情報はこちら

※「ViMoA」、「VIMOA」(ロゴ)は、京セラ株式会社の登録商標です。
※ QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。