【完全版】年収の壁——2026年の変化と今後の予定
「130万円を超えないように」働いていませんか
「扶養から外れたくないから」と、パートで働く時間をセーブしている方は多いと思います。いわゆる「年収の壁」です。
この壁は、ここ数年で毎年のように見直されていて、2026年も大きな変化があります。さらに、今後10年ほどかけて段階的に変わっていく予定まで決まっています。この記事では、壁の仕組みから、これまでの経緯、2026年の変化、今後の予定までを、まとめて整理します。少し長いので、気になるところから読んでみてください。
読みたいところから読めます。
そもそも「130万円の壁」とは
家族の健康保険の扶養に入っていると、自分で健康保険料や年金保険料を払わなくてすみます。この扶養に入れる収入の目安が、原則として年130万円未満です。
年収が130万円以上になると、扶養を外れ、自分で社会保険(勤め先の健康保険・厚生年金)か、国民健康保険+国民年金に入ることになり、保険料の負担が生まれます。
これが「130万円の壁」と呼ばれる理由です。手取りが一時的に減るのを避けるため、その手前で働く時間を抑える人が多いのです。
もう一つの「106万円の壁」
実は、130万円より手前に「106万円の壁」もあります。これは、パートやアルバイトでも一定の条件を満たすと、扶養を外れて勤め先の社会保険に入る、というルールです。これまでの主な条件は次の通りでした。
週の所定労働時間が20時間以上
月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
2か月を超えて雇われる見込み
学生でない
勤め先が一定規模以上(企業規模要件)
「106万円」は、このうちの賃金の条件(月8.8万円)を年収に換算した呼び名です。
これまでの経緯(2023〜2025年)
壁をめぐるルールは、ここ数年で続けて見直されてきました。
2023年10月:年収の壁・支援強化パッケージが開始。繁忙期などで一時的に130万円を超えても、事業主が証明すれば連続2回まで扶養を続けられる仕組みができました
2024年10月:社会保険の企業規模要件が「101人以上」から「51人以上」に拡大。より小さな会社のパートも社会保険の対象に
2025年6月:年金制度改正法が成立。106万円の「賃金要件」を撤廃する方針が決まりました
2025年10月:19歳以上23歳未満の被扶養者について、収入の要件が130万円未満から150万円未満に引き上げ(学生などの働き控え対策)
2026年に変わること
今年は、扶養の判定と106万円の壁に動きがあります。
2026年4月〜:健康保険の扶養に入れるかの判定が、「実際の収入」から「労働契約にもとづく見込み年収」を基準にする方向へ。雇用契約上の年収が130万円未満であればよい、という考え方に整理されます
2026年10月〜:106万円の「賃金要件(月8.8万円以上)」が撤廃される見込み。これにより、収入の金額ではなく「週20時間以上働くかどうか」が、社会保険に入る主な基準になっていきます
つまり「106万円の壁」は、これから実質的に姿を消し、「週20時間の壁」へと移っていくイメージです。
今後の予定(2027〜2035年)
さらに先の予定も決まっています。
2027年10月〜2035年10月:社会保険の企業規模要件が段階的に縮小され、2035年10月に撤廃される予定。最終的には、会社の規模に関係なく、週20時間以上働く人は社会保険に加入することになります
2029年10月以降:これまで一部の業種・規模に限られていた個人事業所への適用も、段階的に広がる予定です
長い時間をかけて、「働く時間が同じなら、勤め先の規模にかかわらず社会保険に入る」という形に近づいていきます。
所得税の「103万・178万円の壁」とは別もの
ニュースでよく聞く「103万円」「178万円」といった壁は、ここまでの健康保険の話とは別の、所得税の壁です。2025年の税制改正で、基礎控除などの引き上げにより、税金がかかり始めるラインが見直されました。
ポイントは、税金の壁と、健康保険(社会保険)の壁は別々に動いているということです。「税金の壁が上がったから、扶養も大丈夫」とは限りません。混同しやすいので、分けて考えると整理しやすくなります。
130万円を超えると、保険料はいくら?
実際に扶養を外れると、どのくらいの負担になるのでしょうか。
たとえば年収130万円で勤め先の社会保険(協会けんぽ)に入ると、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて、本人負担はおおよそ年18〜19万円ほどが目安です(40歳未満の場合。料率や区分で変わります)。会社が同じくらいの額を負担してくれるので、保険料の総額はおよそその倍になります。
一方、勤め先の社会保険ではなく、扶養を外れて国民健康保険+国民年金に入る場合は、保険料を全額自分で負担するため、さらに重くなることもあります。
「壁の少し手前」で抑える人が多いのは、この負担がいきなり発生して、手取りが一時的に下がるためです。
「壁を超える=損」とは限らない
ただし、壁を超えるのが、いつも損とは限りません。社会保険に自分で入ると、保険料の負担は増えますが、その分、受けられる保障も増えます。
将来受け取る年金が増える(厚生年金が上乗せされる)
病気やケガで働けないときに傷病手当金が受けられる
出産で休むときに出産手当金が受けられる
目先の手取りだけでなく、将来の保障まで含めて考えると、判断が変わることもあります。一定以上しっかり働くなら、むしろ超えてしまったほうが世帯にプラスになるケースもあります。
薬剤師×FPとして感じること
「壁」という言葉のせいで、超えること自体が悪いことのように感じてしまいがちです。でも本当に大事なのは、自分や家庭にとって、どの働き方がいちばん納得できるかです。
制度は毎年のように変わり、これから10年ほどかけて「働く時間で決まる」方向に進んでいきます。仕組みと流れを知っておくと、「なんとなく抑える」から「自分で選んで決める」に変わります。
今日からできること
自分が今、家族の健康保険の扶養に入っているかを確認する
働く時間を調整しているなら、2026年の新しい基準(労働契約の見込み年収・週20時間)で考え直してみる
「超えたらいくら負担が増えて、将来の保障はどう増えるか」をセットで比べる
迷ったら、勤め先の担当か、加入している健康保険に相談する
参考にした情報源
この記事は、次の公的情報をもとに作成しています(2026年6月時点)。要件や時期は今後の改正・勤務先により変わるため、最新の取り扱いは勤め先・加入先でご確認ください。
厚生労働省「年収の壁」への対応
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00004.html首相官邸 いわゆる「年収の壁」対策
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/nennsyuunokabe/index.html
あわせて読みたい
▶ 2026年、保険料はこう変わる——上がる分を制度で取り戻す
(給与から引かれる社会保険のお金の話)
https://note.com/kusuri_to_okane/n/n5f5f6380bb1e
▶ 退職後の保険、任意継続か国保かで年間数万円変わる——損しない選び方
(扶養を外れたときの保険の選び方)
https://note.com/kusuri_to_okane/n/n4c97ca2debe9
▶ 病気で休んだとき月収の2/3が最長18か月——傷病手当金の計算と申請の話
(社会保険に入ると受けられる保障のひとつ)
https://note.com/kusuri_to_okane/n/nfb5aa26c507d
いいなと思ったら応援しよう!
記事が役に立ったら、応援していただけると励みになります。
いただいたぶんは、書籍や資料の購入にあてて、次の記事に還元します。
もちろん、読んでいただけるだけで十分うれしいです♪