親が入院したら、まず動くお金の手続き——最初の3ステップ
「親が入院」の連絡は、たいてい突然きます
薬局で働いていると、「親が急に入院して、何から手をつければいいか分からなくて」という相談を受けることがあります。気が動転している中で、医療費の心配まで重なると、誰でも焦ります。
そんなときに、最初に押さえておくと安心な「お金の手続き」を、順番に整理しました。むずかしい制度の細かい話は後回しでかまいません。まずはこの3ステップだけ覚えておいてください。
ステップ1:保険証の種類と「負担割合」を確認する
最初に、親がどの健康保険に入っていて、窓口で何割負担なのかを確認します。
75歳以上の方は後期高齢者医療制度に入っていて、窓口負担は所得に応じて1割・2割・3割に分かれます。同じ入院でも、1割か3割かで支払う額は大きく変わります。保険証(またはマイナ保険証)と、負担割合の通知を手元に用意しておきましょう。
ステップ2:窓口の支払いを「上限まで」にする手続き
ここがいちばん大事なステップです。
医療費が高額になっても、高額療養費制度(1か月の自己負担が上限を超えた分が戻る制度)があるため、青天井にはなりません。さらに、次の手続きをしておくと、最初から窓口での支払いを上限額までに抑えられます。
マイナ保険証:入院先の受付で「限度額情報の提供」に同意すれば、原則それだけで上限が適用されます
限度額適用認定証:マイナ保険証を使わない場合は、加入先(後期高齢者なら各都道府県の広域連合や市区町村の窓口)に申請して発行してもらいます
この一手があるだけで、いったん数十万円を立て替える必要がなくなります。
たとえば後期高齢者で「一般」区分の方なら、入院を含む1か月の自己負担は世帯で月57,600円が上限の目安です。手続きをしておけば、窓口の支払いもこの範囲でおさまります。
ステップ3:「保険がきく分」と「実費」を分けて把握する
入院費には、高額療養費の対象になるものと、ならないものがあります。
対象になる:診察・検査・手術・入院(保険適用分)など
対象にならない:入院中の食事代、差額ベッド代(個室などの部屋代)、文書料など
とくに差額ベッド代は、本人や家族が希望して同意した場合に発生する費用です。病院側の都合での個室移動など、同意していないケースでは支払いを断れる場合があります。入院が決まったら、保険がきく分と実費分を分けて、会計窓口で概算を聞いておくと安心です。
薬局の薬代も、同じ月の「上限」に含まれます
薬剤師の立場から、ひとつ補足です。高額療養費の上限は、病院の窓口だけの話ではありません。その月にかかった自己負担をまとめて見る制度なので、病院での受診と、その処方箋で院外薬局からもらう薬代も、同じ月なら合算できます。
つまり、入院や通院で同じ月にすでに上限に達していれば、その月の薬代について、上限を超えた分は負担しなくてよくなります。マイナ保険証や限度額適用認定証で窓口を上限までにしてあれば、薬局での支払いもその範囲におさまります。「病院で限度額まで払ったのに、薬局でまた満額…」とならないよう、薬局でもマイナ保険証を忘れずに出しておくと安心です。
介護も使っているなら「合算」も忘れずに
親が医療と介護の両方を使っている場合、それぞれで別々に自己負担を払っていることになります。このとき知っておきたいのが、高額医療・高額介護合算療養費という制度です。
これは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に、同じ世帯で支払った「医療保険の自己負担」と「介護保険の自己負担」を合算し、所得区分ごとに決まった年間の上限額を超えた分が、あとから戻ってくる仕組みです。
月ごとの高額療養費とは別に、「1年分をまとめて」医療と介護を合算してくれる制度です。
年間の上限額は所得区分によって変わります。目安として、70歳以上の一般的な区分ではおよそ年56万円、年収約370〜770万円の層ではおよそ年67万円です。1年を通して医療費と介護費の両方が積み重なるご家庭ほど、効いてきます。
ひとつ大事な注意点があります。この制度は、条件を満たしても自動では戻ってきません。お住まいの市区町村や、加入している医療保険の窓口へ、自分で申請する必要があります。医療と介護がどちらも一定額かかった年は、対象になっていないか一度確認してみてください。
なお、合算できる自己負担にも細かい条件(70歳未満は1か月21,000円以上の分のみが対象など)があります。仕組みの詳しい中身や戻る金額のイメージは、記事末尾の関連記事「医療費と介護費、年間67万円超えたら戻ってくる」でも紹介しているので、あわせて読んでみてください。
薬剤師×FPとして感じること
親の入院でいちばんもったいないのは、制度を知らずに払いすぎてしまうことです。とくにステップ2の「窓口で上限を適用する」手続きは、知っているかどうかで、立て替えの負担がまるで変わります。あわてず、この順番で動けば大丈夫です。
今日からできること
親の保険証の種類と窓口負担割合を確認しておく
マイナ保険証の利用登録、または限度額適用認定証の申請先を調べておく
入院時はお薬手帳も持参し、ふだんの薬を病院に正しく伝える
領収書は医療費控除にも使うので、月ごとにまとめて保管する
いざというときに迷わないよう、元気なうちに親子で一度話しておくと安心です。
参考にした情報源
この記事は、次の公的・専門情報をもとに作成しています(2026年6月時点)。最新の取り扱いは加入先の健康保険でご確認ください。
全国健康保険協会(協会けんぽ)限度額適用認定証・高額療養費
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r305/厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
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▶ 入院前に1枚申請するだけで、窓口払いが数十万円→約8万円になる話
(限度額適用認定証の申請のしかたを詳しく)
https://note.com/kusuri_to_okane/n/n892426157fbe
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(上限額や仕組みをもっと深く知りたい方へ)
https://note.com/kusuri_to_okane/n/n113330b28312
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https://note.com/kusuri_to_okane/n/n8112eddf8e72
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