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読まれる漫画は”親切なネーム”から!プロ直伝、今すぐ活かせる3つの改善ポイント【添削実例つき】

「なんで私の漫画、あんまり読んでもらえないんだろう…」
「商業作品と何かが違う気がするけど、具体的にどこが…?」

いい話・いいキャラを思いついて形にしたはずなのに、伝わらないとき…悲しいですよね。
私の価値観って誰にも共感してもらえないのかも…って思ったり。

それ、”価値観のずれ”じゃなくて”伝え方のずれ”が原因かもしれません。


こんにちは、漫画家の9℃です。

前回のアイデア記事、たくさん読んでいただけて嬉しかったです!感謝。

予告の通り、今回は
親切なネームの作り方 についてお話していきます。
最後にちょっとしたお知らせもあるので、ぜひ読んでいってください!



「親切なネーム」って何?

まずは、記事タイトルにもしている「親切なネーム」について説明します。
私が勝手に作った呼称なのですが…

漫画のおもしろさは「作劇力×演出力」で決まる

「おもしろさ」という不安定な物差しは使いにくいので、一旦「おもしろさ」を構成している要素を分解しましょう。
ざっくり二つに分けられる能力によって、漫画のおもしろさは作られています。

  • 作劇力…企画、シナリオ、キャラクターを作る力

  • 演出力…上記要素を漫画技法によって表現する力

プロでもそれぞれの細かい能力値はバラバラです。
「絵はそこまでうまくないが、ストーリーや構図に引き込む力があり評価される」などの例もあり、全てが高水準である必要はありません。


作劇力と演出力の向上スピードの違い

重要なのは、この二つの能力は全く質が異なるという点。

作劇力を短期間でレベルアップしていくのは、正直難しいんです。

作劇力の土台は感性、経験、着眼点、発想力などによります。
これは「生まれつきのもので勝負するから上達は無理」ということではなく
「再現性をもって、みんな同じ方法で上達させることが難しい」んです。
それぞれが自分に合う進み方を選ぶべきところなので、この本を読んだり講座を受けたらすぐうまくなります!とはいかないんですね。

裏を返せば、作劇力は「人生をかけて、いくらでも向上できる能力」です。
良さの天井がないので。楽しいね~!

一方、演出力はある程度短期間でプロレベルへの底上げが可能です。

演出技法(コマ割りや構図)にはある程度普遍的な型があり、それらは全て
読者にストレスなく、誤解なく読んでもらうという目的のもと設定されています。
必要な土台は知識、実践、客観性のみで、知識量も本にしたとて少なめ。

もちろん、演出力でも個性を発揮できるシーンは多くあります。
が、それはプロの中でもかなり特化している例なので、ここでは扱いません。テクいコマ割りや構図、憧れますよね…

ここで言いたいことはつまり、

作劇力は長い目で育てつつ、まずはすぐに底上げできる演出力を上げていく

方が上達を実感できるし掲載にグッと近づけてオススメ! ということです。


演出力を上げると、親切なネームが作れる

先ほど、演出力をつけるべき理由を話しました。
読者にストレスなく、誤解なく読んでもらう
これが全てです。
これを、ただ「親切なネーム」と言い換えているだけの話です。

なぜ「不親切なネーム」がダメなのか。
読者にストレスをかけ、読み方を間違われることで損するのは誰でしょうか?

作者です。

「情けは人の為ならず」という諺がありますが、それと同じです。
親切なネームは読者の為ならず。
読者にストレスなく、誤解なく読んでもらうことで、一生懸命描いた漫画を最後のページまで読んでもらえます。
自分が「このシーンで感動していったん止まって!」と思って演出したコマで、感動していったん止まってもらえます。
読まれるための親切を、技術で実現していきましょう。


「不親切なネーム」って何?

目標が明確になったので、次は状況把握へ。

演出力が足りてない漫画とは

どうしても厳しい言い方になってしまうこと、お許しください。
アマチュア作品を投稿サイトなどで読むことがあるのですが、感じることが多いのは

  • 伝わりにくい

  • なんか疲れる

  • 話が頭に残らない など。

分かりますか、この由々しき事態…
展開・テーマ・キャラどうこうまで辿り着きにくいんです、不親切な漫画の場合。

そしてさらに厳しい現実として立ちはだかるのは、
編集者(読者)は基本的にこの「不親切さ」を察知できるが、具体的に何を改善すべきかまで提案できる人は多くない という点です。

私は連載ネーム修正をあちこちで受けてきていますが、体感では

【ネーム指摘内容内訳】※展開など作劇要素については省略
・ここが理解しにくかった(8割くらいの編集者が言う)
・ここがセリフ量が多すぎる(7割)
・ここのコマを大きくして(5割)
・ここの背景など情報を増やして(2割) ←仕上げ後なども
・ここのコマ割りを変えて(1割)
・ここの表情を変えて(1割)

みたいな感じ。

志望者が編集者に「この漫画は、つまりどういうことを言いたかったの?」と問われてしまう…みたいな場面を耳にしますが(実話かはともかく)、これは「テーマが浅い」という意図ではなく「主旨を読ませるための技術が足りていない」点への指摘であることが多いのではないかと。
それならそう言ってほしいが、とは思う 編集さんも伝える力があるに越したことないので…

だから漫画家は、基本自分で考えないといけないんです。
自分のどんな表現が、不親切さにつながってしまっているのか。

…ただ、急に考えよう!って言っても難しいので。

今回の本題はここから!
私9℃が思う「不親切なネーム」に頻出していた表現3つを紹介し、直し方を提案する になります。

さっそく3つの具体例、挙げていきます!


不親切ネームに起きがちなエラー3選

ズバリ、

  • 誰がどのセリフを喋ってるのかわかりにくい

  • キャラが早口でまくしたててくる感じがする

  • ページをめくりたい動機に乏しく、めくっても旨味に乏しい です。

もう本当大体これ。
演出力に必要な知識って少なめだと前述しましたが、つまり不親切さにもそこまでバリエーションはないんです。

ここから、3点の具体的な改善法をお話します。
ちなみに、上から順にすぐ直しやすいです。3つ目はちょい難関。

これを見て、あ~そのくらいのレベル感ね!とピンと来た方は、きっとこのレベルのことは問題なく実践できているのでこの先読まなくても大丈夫です。
ただ、ご自身が添削とかアドバイスするときに伝え方が難しいな…などあれば参考にしていただいたり、広めてもらえるととても嬉しいです!


3つの「不親切さ」スピード改善方法


①ふきだしにツノをつける

まずは一つ目のエラー「誰がどのセリフを喋ってるのかわかりにくい」についてです。

ふきだしにツノ、つけましょう。
以上。

…さすがにこれだけだと待て待てって感じだと思うので、解説します。

コマ内の人物が喋っているとき、ふきだしからその人物の顔(口)に向かってちょこっと尖らせよう…という話です。

コマ外の人物が話しているときには不要です。
(※そういうケースでのツノを用いた表現方法もありますが、これは作者と読者の意図のすれ違いが起きやすく、拘りがなければ推奨しません)

また、エモさ強調シーンでツノ無しふきだしを使うなどの例外はあります。そのときは他の工夫をより丁寧にしていく必要があります。

あくまでも演出は手段。今回の例では
誰が喋っているセリフなのかを読者に一瞬も悩ませない」ことができればどんな手段を使ってもよく、その中で一番楽なのがツノの常用です。

漫画を描いている人は、漫画を読むのが大抵得意です。
なので発言者が誰なのかを「セリフの内容でわかるはず」「口調でわかるはず」と思ってしまいがち

けれど、実際には想像以上に読者にストレスをかけています。
意外と難しいんです、初見の漫画でその判断をしながらストーリーや絵も並行して楽しむのって。
また「よく考えた上でどっちが喋ってるか断定できない」くらい分かりにくいケースも散見します。ツノさえ…ツノさえあれば…

基本的に必ずコマ内発言にはツノをつける、というルールにしておかないと困るのが、
「セリフ+発言者ではない人」の組み合わせのコマのとき「この作者だと、どっちが言ってるのかの判断ができないな…」となってしまう点。
いつも書けていれば「このコマはツノがないから別の人が喋ってるんだな」と飲み込みやすいです。

併せて「キャラの口の開閉」にも注意を向けましょう。
キャラが単体でいるコマ+ツノふきだし の場合には、キャラの口が閉じている状態でセリフを発していても一応OKです。
が、二人いるのに発言者の口が閉じていて黙っている方の口が開いていると混乱しやすいので避けた方が無難です。

好例紹介

ここでつまずいていた方にはぜひ今すぐ実践してレベルアップしていただきたいので、さらに私以外の作家さんの大変参考になる例を挙げます。(勝手に)

すずゆき先生の『盛り上がらないデート』という作品です。
こちらは内容の良さは勿論なんですが、

・メイン二人の口調がどちらも敬語で似ている
・感情表現が繊細なため表情差もつけにくい
・会話劇メイン

という難しい要素を「親切さ」でカバーし唯一無二の魅力に仕上げている好例です。
どちらが喋っているか難しいシーンがほぼ全くありません。
どのページにも読者を迷わせない技術が散りばめられているので、そこに着目して読んでほしいです。


②ふきだしを細長くしない・セリフの改行を増やす

またもやふきだし。そのくらい大事なんです。すぐ改善できるし。
「素人感」の一番の原因はふきだしの形、と言っても過言ではないです。

ふきだしの形(比率)については様々な作品を見て真似しましょう。複数作品見て基準を作るのがオススメ。素材でもいいです。


そして、二つ目のエラーとして挙げていた「キャラが早口でまくしたててくる感じがする」ですが、この問題の正体は

セリフの改行が少ない ことから来る違和感です。
この違和感は「漫画っぽくなさ」とも言い換えられます。

漫画特有の不思議な感覚かもしれず、もしかしたら「そう感じたことがない」という方もいるかもしれませんが…
縦に長い言葉の列は、漫画では忌避されます。
一方的にベラベラ喋っている印象を与え、読者にも「聞き流していいセリフ」である判断をされてしまいます。

そもそもセリフ文字数が多すぎるという問題も併発します。
作風にもよりますし、必ずしも「このぐらいまでのセリフ量で!」「何文字で改行して!」とルールを決めることはできません。ただ、

  • この作品において本当に必要なセリフなのか?

  • 絵で伝えられることをわざわざ被せてしまっていないか?

  • もっと短い表現で的確に伝えられないか?

ということは、プロになってもずっと考え続ける必要があります。

漫画のセリフと現実世界での会話とを比較すると、漫画では結構大胆にそぎ落とされた表現を使っていることに気づきます。
実際の人間に似せるのではなく、魅力を誇張したデフォルメ絵を作画に用いるように、セリフにもデフォルメは必要なんです。

こちらの改善例については、3つ目も話した後でまとめて紹介します。


③背中合わせのページごとの流れを意識する

ここからちょっと話のレベルが上がります。
前の2つまでができてから習得でOKなんですが、一旦読んでもらえれば!

ネーム添削や技法書を読むと、その多くが
1ページ分もしくは見開き2ページ分のコマ割り・構図などを添削解説しているように思います。
それも学べることはとても多いですが、

本来優先して上達すべきは、背中合わせのページごとに情報の流れを整える力です。

背中合わせのページとは…
紙の本において、同じ紙の表裏に印刷されたページ同士のこと。
前ページをめくると後ページが読める。

コマの数やサイズ、セリフ内容やふきだしもとても大事な演出です。
しかし、それ以前に
どの情報までを前ページに収め、どの情報から後ページを始めるか
という判断がうまくできていないと、読者の興味や期待を持続することができません。最悪、途中で読むのをやめてしまいます。
ページをめくる・読み進めるという行為は「続きを知りたい」という能動的な欲求を搔き立てなければ成立しないので。
逆にうまく作れば、意図的に読者の期待を煽り「おもしろい」という感動を増大させることもできます。

TV番組などにはCMの挿入が収益上必須ですが、CMに入った途端にチャンネルを換えられてしまわないように、CM明けを期待させる内容を工夫して散りばめていますよね。
漫画は読者自身の手でページをめくってもらう分、映像視聴以上に「めんどくささと興味を天秤にかけられ続ける」エンタメです。
ページを読み終わるたびにCMが入ってくる…くらいの意識で工夫を凝らす必要があります。

以前のネーム制作についての記事で「配置プロット」について触れました。
配置プロットを作ることの意図は、実はここにあったわけです。

ページをめくった一番最初のシーン(多くの日本の漫画は右上のコマ)に印象的なシーンを持ってくる
そして、同時に
そのシーンを期待させるため、振りとなる演出で前ページ(左下のコマ)を終わらせる
ということを意識しましょう。
ページ内や見開きでのバランスなどについて考えるのは、その後。

昨今はスマホで漫画を読む人が増えているため、実は左右関係なく
全てのページ同士が背中合わせ関係にある 状況です。
つまり、以前よりもシビアにめくりの意識をつけていく必要があります!


補足と予告:コマ内の情報がぶつ切りになってしまう方へ

不親切なネームの中にこれも多いと感じるのが
並んでいるコマ同士がぶつ切りになっている印象を受ける 点です。

これは、2~4コマ漫画とか1ページ完結漫画であればあまり気にしなくていい内容ですが、複数ページになると問題になってきます。

ぶつ切りになっているというのは、良く言えば「キリが良い」んです。
コマの中にひとつの行動やセリフなどの状況が入っていて、前後が見えていなくてもそのコマでは誰が何をしているかはっきりわかる状態です。
けれど「前後を気にするヒントが存在しない」演出は、漫画としては悪手です。だって、次を期待する余地がないということなので。

今回は「めくり」について話しましたが、期待をもたせなければならないのはコマとコマの間でも同様です。漫画のコマは
「前コマからのパスを受け取り、次コマへパスをつなぐ」ことを意識して絵やセリフを作る
必要があります。

このあたりは添削で扱ったり、いずれ詳しく記事にするつもりです。


不親切から親切へ、ネーム添削実例

今回3つの改善方法を上げたので、それらを踏まえ具体的にネームを直していきます。

使う題材は、私が11年前に描いたオリジナル同人誌です。恥ずかしっ
4ぺージ分抜粋して添削します!(全文リンクはラストに貼ります)

まずは、当時のままの4ページ分を見ていきましょう。

オリジナル漫画(添削無し状態) 2015/9℃作

こんな感じ。
枠線がガチャいとか色々気になるんですが、さておき
3つの改善方法に照らし合わせながら見ていきましょう!


3つの改善方法、具体的に活かして添削

まず、①ふきだしにツノをつける から。

できてるところが多いです。
ただ「画面内に2つセリフがあると、片方にはツノをつけてない」という箇所が数点あります。なんでだ
逆に紛らわしくなるので、直しましょう。
口の開き方はほぼ違和感ないですね。

次は、②ふきだしを細長くしない・セリフの改行を増やす について。

ちょっと長いな~!たまに早口!
セリフ密度によって絵のサイズも小さくなってしまっていて、それにより「見せ場の少なさ」を感じます。
削れるセリフは削り、改行を意識し、もう少し画のインパクトに空間を割きましょう。

最後に③背中合わせのページごとの流れを意識する について。

この4ページは左始まりなので、めくりの頭は2ページ目と4ページ目になります。

2ページ目は、1ページ目の「意外な一面を知る」という終わりからの「感心する」という主人公の気持ちの流れを描いていますが、自然な流れすぎてちょっと弱いですよね。
そこで切るくらいなら「意外な一面を知る」部分を印象付けるほうがキャラへの好感度アップに繋がるので、そっちを後ろにずらしましょう。そうすると1ページの終わりでは「知らなかった彼の一面が見えてきそう」という期待演出が作れます。

4ページ目は、内容は悪くないです。ガミガミ言われているのに主人公がニヤけている、という意外性が相手への好感度の高まりを感じさせる演出になっています。
ただ、絵が小さくて印象が薄まってしまっています。大きく扱いたいので、ページ内の整理が必要です。

コマの大小についての話は今回あまりしていませんが、ポイントは
重要な展開/感情の動きを扱うコマを大きくする ことです。

今回私は、全展開とその展開における感情の変化を文章に起こし、並べてみました。(この後の画像参照)
そして、出てきた感情に番号を振り、この話において特に重要となる感情をピックアップし、4か所重要だと認定しました。
それが、今回コマを大きくして印象づけるべき内容です。
逆に言うとそれ以外のコマは補助的役割なので、容赦なくカットしたり軽量化していく勇気と覚悟も必要です。

上記を踏まえ、添削として書きこんだものがこちら。

添削例。ツノについては指摘省略

そして、添削を踏まえて描き直したネームがこちらです。

修正例。今回はページ数を増減させない縛りで直しました

いかがでしょう。読みやすくなってませんか。

今回は結構がっつり変更しましたが、ふきだしツノ&セリフ修正(緑ペンの箇所)だけでも親切さを改善できると思います。
その上でめくり意識ができると「読まれる」から「楽しまれる」へのステップアップも可能です。


まとめ

ここまで、漫画を構成する二つの能力の解説から、中でも「知っている」だけで差をつけやすい演出力についてお話しました。

今回の記事は特に、漫画家志望者の方や、趣味だけどもっと漫画うまくなりたいな…という方向けに書いています。
自分の漫画と見比べながら、気づかずに読者に負荷をかけていなかったか見直すきっかけとしていただけたらとても嬉しいです。
親切なネームづくりは常に心掛ける必要があるので、私も改めて気を引き締めていこう!と書きながら思いました。一緒に頑張りましょう!

予告:添削受付スタート!

今回お話した「親切なネームを作ろう!」というコンセプトをもとに、私は
skebにてネームアドバイスの依頼を募集することにしました。

色々言いましたが、自分の漫画を客観視するというのは難易度が高いです。
編集者さんが誰でも具体的改善案を出せるわけではない、という話もしました。

そこで、皆さんの漫画を「読まれる」形に整理するお手伝いをしたいなと考えました。

今回の添削実例のような整理と赤入れ、修正案出しなどをしていく予定です。
skebは簡易的な一往復のやりとりをするサービスなので、今後本格的に添削・壁打ち相談を受けていくためのモニターテストのような感覚で受けていきます。
その分価格抑えめでサッと依頼できるところが強みなので、ぜひ気軽にネームや過去作品など投げていただければ嬉しいです!

次に投稿する記事にて、詳細な内容説明とskebページへのリンクを貼ります。
ご興味ある方は、アカウントをフォローしてお待ちいただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた!

9℃

参考


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9℃ ありがとうございます!これからも頑張ります。