🦋メイ&カレン01|メイのちょっと得した日
メイの部屋には、相変わらず服や
未開封の雑貨が散らかっている。
でも、レシートだけは違った。
家計講座に参加し、透明な袋に入れるように
してから、床に増えなくなったのだ。
「……あれ? これ、家計のためっていうより、部屋の治安が守られてない?」
「一石二鳥じゃん!」
メイは袋を軽く抱え、
ちょっと得した気分になる。

その日の週末。
「マダム〜、最近前より散らからなくなったんです。レシート大作戦のおかげかも!」
マダムは穏やかに微笑んだ。
「いい変化ざます。家計は数字だけではなく、
生活動線の問題ざますから」
メイは笑顔でうなずいた。
◆
家計講座に参加するようになってから、
メイの暮らしは少しだけ変わっていた。
レシートを集める生活が、習慣となりつつあったこの頃──
久しぶりに街を歩いていたら、
たまたま可愛いお店を見つけた。
ガラス張りの小さな店で、棚には色とりどりの焼き菓子。クッキーも、ケーキも、
全部、ちょっとどころじゃなく可愛い。
「……なにここ!」
メイは足を止めて、そのまま吸い寄せられるように中へ入った。
甘い匂い。やわらかい照明。
木の棚に並ぶクッキーは、
ひとつひとつ丁寧に包まれている。
(え、待って)
(かわいすぎない?)
気づけばスマホを取り出していた。
ピカピカのショーケース。
ぎゅっと並んだお菓子と、
ガラスの中で、やさしく溶ける色。
角度を変えては、ぱしゃり。
もう一枚、ぱしゃり。
「これはさすがに……映えすぎでしょ!」
満足したところで、ようやく値札に目がいく。
「……あ、ちょっとお高い」
そう思ったのに、
なぜかすぐには店を出られなかった。
一歩前に出て、また一歩戻る。
それを何度か繰り返し、
迷った末に、一番小さな袋に目を留めた。
「まあ、最近頑張ってるし。これくらいなら…」
会計を済ませ、レシートを財布にしまう。
店を出る前に、買ったばかりの袋を手に、もう一枚だけパシャリ。

「かわいすぎる♡」
袋を持ち直し、
ほんの少しだけ立ち止まって考える。
「でもこれ……一人で食べるのは、
ちょっともったいないかも」
(どうせなら、誰かと)
店の外に出ると、午後の光が
街をやわらかく染めている。
「あっ!そうだ。久しぶりに顔見に行っちゃお」
そうつぶやいて、来た道とは違う方向へ歩き出した。
この森をもう少し歩く⬇︎
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