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11.森の仕立て屋と、壊れたカゴ

この話は、モコが転んで木の実を落としてしまった日の、帰り道のできごとです。
🔙前回の話はコチラ

木の実を拾い集め、森のやさしさに触れて、
少しだけ胸が暖まった日。その帰り道、
モコは再びしょんぼり歩いていた。

「壊れたモコ……」

転んだはずみで、カゴの取っ手がすっぽりと外れてしまったのだ。

胸の奥が、またほんの少し重くなる。
モコは壊れたカゴを抱え、アツコの家へ向かった。

森の仕立て屋の家からは、今日も軽やかなミシンの音がしている。
トントン、カタカタ、すう、と糸を引く音。

その音が、ぴたりと止まった。

「アツコ〜……」

「どうしたの」

モコはカゴを差し出す。
「壊れちゃったモコ。かなしいモコ」

アツコは外れた取っ手の根元を持ち上げた。
「あら。丸ごと抜けたのね」

「転んだモコ。痛かったモコ」

「あらあら……」
声は静かで、やわらかい。
少し指で揺らし、編み目を確かめる。

「ここ、少し広がってるわね。
持ったとき、ぐらぐらしてなかった?」

モコはぱちくりする。

「してたモコ」

「同じところを何度も持つとね、
糸は少しずつ伸びるの。転んだのはきっかけ」

「ちょっと待ってて」

そう言って立ち上がると、
奥の部屋から小さな箱を持って戻ってきた。
針、糸、細い革紐、丈夫な芯。

「今度は、前より強くしてあげるわね」
「ここ、編み目が広がってるでしょう?」

モコがのぞきこむ。

「ほんとだモコ」

「力はね、いつも同じ場所に集まるの」

アツコは細い革紐を取り出した。

「だから、元の穴だけに戻すと、また抜けるわ」

革紐を一段下の編み目まで通す。

「少し広く受けるの」

きゅ、と締める。

「点じゃなくて、面で支える」

パチンと糸を切る音。

「ほら」

モコはそっと指で縁を押してみる。
前は少し頼りなかった場所がぐらつかない。

「わぁ、強くなってるモコ!」
そう言った顔がふわりとほころぶ。

「ええ。前より、ずっと丈夫よ」

モコはカゴをぎゅっと抱え、弾むように駆け出した。

「今度は、もっと気をつけるモコ〜」

小さな影が、小道の奥へと消えていく。
その足取りは来た時よりずっと軽かった。


🌿モコのひとりごと
✔︎壊れたけど直ったモコ
✔︎森には助けてくれる人がいるモコ
✔︎今度は大事に使うモコ





🧵アツコの話をもう1話読む


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