暮らしの森|モコの毛で作る、ふわふわ枕
春、森の空気が少し軽くなった頃。
モコは自分のしっぽを、くるりと抱えた。
「伸びたモコ」
冬のあいだに育った毛は、ふわふわで、少し重たい。アツコは毛並みを指で確かめる。
「冬毛が抜けきってないわね。絡まる前に整えましょう」
切り落とした毛をアツコは丁寧に集める。
「すてないモコ?」
「捨てないわよ。あなたの毛は軽くて温かいもの。仕立てはね、無くすことじゃないの。
循環させること」
「?」
「よくわかんないモコ」
◆
数日後。
洗って乾かして、ほぐした毛は、空気を含んで、ふわりと広がっていた。
アツコはそれを目の細かい内袋に入れ、外側をやわらかな森の布で包む。
ミシンが静かに動き、
やがて小さなふわふわの枕ができた。
「はい。モコ専用の枕よ」
「わぁ!」
モコはぎゅっと抱きしめる。
すると小さくなり、手を離すとゆっくり戻る。
「わ!すごいモコ!」
アツコは頷いた。
「使い終わったらこの袋に入れるといいわ。
小さく持ち歩けるわよ」
「外にも持っていけるモコ?」
「ええ、もちろんよ。ピクニック行く?」
「やったモコ〜!」
軽くなったしっぽ。
やわらかな午後。
サンドイッチをほおばる口もとに笑顔が
浮かぶ。
「外で食べると、おいしいわね。」
食べ終わったモコは、枕を抱えたまま
芝生にごろんと寝転がる。
「ふわふわモコ〜」
アツコは少し笑って、糸くずを払った。
春の風が、また少しだけ軽くなっていた。
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