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【6月23日追記】「言い訳すんな」の中身を分解してみた ――注意された直後の第一声が大事な理由

左官歴10年の職人、こはるです。

今日は、みんな大好き、

「言い訳すんな」

について考えてみようと思います。

これにまつわるエピソードは、
きっと使う方も、使われる方も、ネタにはことかきませんよね?笑

ただ、この言葉はかなり危ない言葉でもあります。

相手の説明を聞かずに黙らせるための「言い訳すんな」。  
濡れ衣を着せているのに、反論を許さないための「言い訳すんな」。  
怒りたいだけで、相手を押さえつけるための「言い訳すんな」。

これは指導ではなく、ただの圧力です。
そういう相手を押し潰すためだけの「言い訳すんな」からは、

全力ダッシュで逃げてください。



今回書きたいのは、押しつぶす言葉ではありません。
理不尽に見えるけれど、実は意味がある方の「言い訳すんな」。

もっと正確に言うなら、

注意されたら、第一声で逃げるな。

という話です。


犯人探しをしたいわけじゃない

誰かを注意するとき、最初に知りたいのは、責任の所在ではありません。

誰が悪いのか。  
わざとやったのか。  
悪意があったのか。

そこを聞きたいわけじゃないんです。
もちろん、それが必要になる場面もあります。

でも、現場でまず確認したいのは、

君は今、それができていると思っているのか?

ということ。

できていないことがある。  
今はそれを指摘している。  
その状況を、まず自分でも見えているのか。

そこが知りたいんです。


実例1:親方の鏝を直置きした話

ある日、仕上げの仕事をしていました。

わずか1.5mmほどの厚みで材料を塗り広げ、鏝波なく仕上げる材料です。

使う鏝は、よくしなる薄い鏝。

少しでも傷がついたら、それがそのまま筋となって壁を傷つけます。
昨日まで使っていた下地用の鏝とは、扱いが変わります。

親方が壁を1枚仕上げ、使い終わった鏝を、そっとウマの上に置きました。

ウマというのは、長い脚立みたいなものです。

そのあと、新人くんが親方の鏝を拭いて、ウマの上に直接置きました。

カツッ。

小さな音がしました。

親方は振り返って、
「お前、鏝を直接置くなって言われなかったか?」

と声をかけました。

それに対して、新人くんは、
「え?言われてませんけど。」

と答えました。

私は、そのやりとりを見て、静かに怒りました。

「ねえ、言われてませんじゃないでしょ。」

これの何が悪いんだろう?

たしかに、新人くんからしたら混乱する部分はあります。

実は、職人たちは自分の鏝を普通にウマの上に置いています。

だから、
「え?みんな置いてますよね?」

と思ったかもしれません。

でも、そこには大きな違いがあります。

職人たちは、自分の鏝を自分の判断で置いています。  
傷がつけば自分の責任だし、このくらいなら大丈夫というラインも知っています。

でも、新人くんが扱っていたのは、

親方の鏝です。
先輩の商売道具です。

しかも、その鏝がどれくらい繊細で、どこまでなら大丈夫なのか、まだ分かっていません。

私たち職人が、自分の道具を自分の判断で直置きするのと、  
新人が、先輩の仕事道具を傷つける危険を知らずに直置きするのは、意味が違います。

だから親方は、怒鳴ったわけではありません。

「言われなかったか?」

と確認したんです。

そこで本当に確認したかったのは、
「聞いたことがあるか、ないか」

ではありません。

今、自分がまずい扱いをしたことに気づいているか。

ということだと思います。

でも第一声が、
「言われてませんけど。」

だった。

本人は、ただ事実を言ったつもりだったのかもしれません。

でも、注意している側には、
「自分は悪くありません」

と聞こえてしまうことがあります。


実例2:添加剤を入れていなかった話

別の日の話です。

現場で使う材料を、フタ付きのバケツに小分けしていました。
そこに、カビ防止の添加剤を入れていきます。

添加剤は真っ白い液体なので、全体を混ぜてしまわなければ、入れたかどうかはひと目で分かります。

バケツは30個くらい並んでいました。

私は新人くんに、
「このくらいの量を、ここにあるバケツ全部に入れてね。私が混ぜていくから。」

と言って、いくつか添加剤を入れて見せました。
そして、私はひとつずつ材料を練り返し始めました。

この時点では、新人くんは指示通りに動いてくれていたんです。

しばらくして親方に呼ばれ、話を聞きに少し離れました。

戻ってくると、いくつかフタが付いたままのバケツが残っています。
開けてみると、案の定、添加剤は入っていません。

練り返した様子もありません。

新人くんは、別の作業をしていました。

私は念のために聞きました。
「これ、添加剤入れたの?」

すると返ってきたのは、

「え?入ってませんでした?」

でした。

静かに怒りのスイッチが入る音がしました。
「白い添加剤、入ってるかどうか見れば分かるよね?  
全部に入れてねって言ったよね?  君は入れたの?」

すると、

「入れたのかと思って入れてませんけど?」

と返ってきました。

……ねえ、怒ってもいいよね?

「言い訳ばっかすんな。」

とうとう、私の口から出てしまいました。

これ、添加剤いれたの?(見たらわかるはずだけど…)

これ、入れ忘れたことだけに怒ったわけではありません。

もちろん、気づいた時点で私が自分で入れれば済む話ではあります。

でも、現場は数人で回しています。
頼んだことをやってもらえないと、段取りが狂います。

私が気づいたからよかったものの、他の人だったら、添加剤が入っていると思ってそのまま材料を使っていたかもしれません。

ここで問題だったのは、

「俺は入れてません」という事実ではありません。

全部に入れてね、と頼まれていた仕事が終わっていないこと。
そして、その状態で別の作業に移ろうとしていたこと。

だから、こっちが聞きたいのは、

「君が入れたのかどうか」

ではありません。

頼まれた仕事が、途中で止まっている。
その状態のまま別の作業に移っている。
その状況をどう捉えているのか?

ということなんです。


言い訳に聞こえる第一声

本人は、ただ事実を言っているつもりかもしれません。

「言われてません。」  
「入ってると思いました。」  
「俺はやってません。」  
「自分はそう聞いてません。」

たしかに、それが事実の場合もあります。

でも、注意している側が最初に聞きたいのは、そこではありません。

まず確認したいのは、

こちらの指摘が、相手に届いているかどうか。

今、何を指摘されているのか。
どこを直せばいいのか。

そこに意識が向いているかどうかです。

事情はあとで聞きます。

むしろ、そこはちゃんと説明してほしいです。

どこまで分かっていたのか。  
何が伝わっていなかったのか。  
どこですれ違ったのか。

それが分からないと、次にどう教えればいいかも分かりません。

でも、第一声が「自分は悪くありません」に聞こえると、
その後の説明まで全部、言い訳に聞こえてしまうことがあります。

これが、とてももったいない。

言い訳に聞こえたら、怒られる。
説明に聞こえたら、一緒に考えられる。

「すみません」は負けではない

ここで大事なのが、最初のひとことです。

たとえば、
「すみません。」

このひとことがあるだけで、意味が大きく変わることがあります。

もちろん、何でもかんでも謝れという話ではありません。
全部自分が悪かったです、と認めろという話でもありません。

ここで言う「すみません」は、

相手の指摘をいったん受け取りました。

という合図です。

たとえば鏝の話なら、
「すみません。直に置かない方がいいんですね。次から気をつけます。」

対処法が分からないなら、
「すみません。置き方をちゃんと分かっていませんでした。どこに置けばいいですか?」

添加剤の話なら、
「すみません。確認漏れてました。今から全部見ます。」

「すみません。入っていると思い込んでました。どこまで直せばいいですか?」

とか。

この順番なら、事情説明として聞きやすいんです。

最初に指摘を受け取る
「すみません」。  

それから、状況を確認する。
「これができていなかったです。」

その後、状況を説明する
「こういう理由でした」。  

そして、次にどう直すかを確認する
「どうすればいいですか」。

この順番を心がけるだけで、同じ言葉でもだいぶ印象が変わります。

第一声で、相手の姿勢が変わる。
間違えちゃっただけだね、と取られるか。
やんのかこら、と臨戦態勢を取られるか…
猫の「やんのかステップ」なら可愛いんですけどね。

事情説明は必要です

もう一度言います。

事情を説明するな、という話ではありません。
むしろ、事情は説明してほしいです。

「聞いたけど忘れていました。」  
「入っていると思い込んでいました。」  
「どこまでやる作業なのか分かっていませんでした。」  
「これは触っていいものだと思っていました。」

そういう説明があれば、こちらも考えられます。

説明不足だったのか。  
作業の目的が伝わっていなかったのか。  
確認する場所が分かっていなかったのか。  
そもそも、責任範囲を理解していなかったのか。

そこが分かれば、次に教えることも変わります。

でも、第一声で逃げられると、
そこまでたどり着く前に会話が止まります。

「言い訳すんな」

と言われるとき、問題になっているのは、
事情を話したことそのものではないのかもしれません。

その説明が、問題を受け取る前に出てしまったこと。

いくら自分は悪くないと思っても、
問題は発生してしまった後なんです。
(濡れ衣とかは別問題ですよ!)


第一声で逃げるな

注意されたとき、反射的に自分を守りたくなる気持ちは分かります。

怒られたくない。  
悪者にされたくない。  
自分だけのせいじゃない。  

そう言いたくなることはあります。

でも、現場で先に必要なのは、責任の話ではありません。

今どうなっているのか。  
何ができていないのか。  
次にどう直すのか。

ということです。

だから、言い訳するな、というより、第一声で逃げるな。

まず噛み締めてみる。

自分が何を指摘されているのか。  
何ができていなかったのか。  
相手は何を確認したかったのか。

それを一度受け取ってから、事情を説明する。

ちゃんと「すみません」を受け取ってくれる先輩なら、
そのあとの説明にも耳を傾けてくれるはずです。

ミスった時点で、ご立腹かもしれませんけど。

そして、噛み締めてもスッカスカのプラスチックみたいな、
味わいのない「言い訳すんな」は、
こっそりゴミ箱に捨てちまいましょう。

ろくなもんじゃありません。


理不尽に負けそうなとき、これを知ったらラクになるかも?
おすすめの記事はこちら!


【6月23日追記】
この記事は、
こちらのコメント欄でやり取りさせてもらううちに考えがまとまり、生えてきました。
勝手にスペシャルサンクス✨️

公開するタイミングでこのやり方を思いつけばよかったんですが、
後から紹介するかたちになってすみません!
ニコさんの記事、おすすめです✨️

今後も、記事を書くきっかけになった方に
勝手にスペシャルサンクスするかもしれません笑


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