まだまだ知られていない台湾デザイン 台湾一深い公園?【Taiwan scape ⑨】 「秋紅谷」景觀生態公園
台湾旧正月の台中一泊旅行。
一日目はオープンしたばかりの緑美圖へ。
(緑美圖の記事リンクは最後に貼ってあります!)
二日目は十数年ぶりの再訪、「秋紅谷」景觀生態公園に行ってきた。
1)都市ど真ん中の巨大な空洞
台中国際会議・展示センターという巨大建築の、地下掘削中に工事が中止になり、3年近く放置された巨大な深い凹地。この負の遺産をどうするのか、その状況を逆手にとって設計された公園だ。


逆にいえば、そのような状況、背景がなければこんな大胆な設計はできないかもしれない。なんせ周辺の道路から公園レベルまで、約9mに及ぶであろう落差があるのだ。しかし、この落差が都市のオアシスを生む上では大きな効果を発揮している。以前に記事を上げた「台南の河楽広場」も周辺の道路レベルから建築一階分下がった凹型広場で、それによって都市の喧騒から離れることができるのだが、こちらは深さでいえばその比ではない。

(河楽広場の記事です↑ 興味ある方は是非!)
凹下空間までくると、都市とは全く別の空間にいるような感覚に陥る。
もちろん周辺を見渡せばビルのスカイラインが見えるわけだが、この公園は「ソコ」とは切り離されたように静かで穏やかな時間が流れる。
周辺道路を忙しく走りまわる車の騒音も、本当にほぼ聞こえない。

2)凹型 × L型の効果
角に四角い隣地があり、この隣地を囲む形で、敷地はいびつなL型の形状になっている。これが結果的にこの公園の魅力を高めているように感じる。
3haとそこまで大規模な公園とは言えないが、L型の敷地の中央にこれまたL型の水池が配置され、その周りをぐるりと散歩道が巡る。水池の中央には橋がかかり、対岸に渡るアクセスとL型の両エリアへの眺望が可能だ。

凹型の敷地に合わせて歩道は高低差の変化があり、「俯瞰する視線」から「仰ぐ視線」へ、変化が豊かだ。平面上はL型なため、公園の全貌を一望に眺めることのできる場所は限られていて、多くの位置では公園の3分の1は見えない。それゆえに奥行き感が高まり、歩いているうちにどんどん見える範囲が変わって、その風景の変化がまた楽しい。






光の表情も場所によって異なり、土地形状の影響から、時間によって異なるエリアが日陰になる。陽射しの強い台中だ。時間に合わせて異なる日陰エリアが心地よく過ごせる休憩スペースになる。それを見越してか、日陰になる場所に大きなデッキスペースが設計されているのがうれしい。

3)非常時の重要任務&シンプルな日常風景
公園中央の水池と凹型の空間自体が都市の調整池の機能をもつ。豪雨の際に雨を一時的にこの場所で貯水し、時間をかけて浸透または排水することで、都市の排水インフラがすぐに容量オーバーにならないように補助するわけだ。

そのような都市インフラとしての重要な役割を担いつつ、普段の公園利用の方法はいたってシンプル。階段またはスロープを下り、水辺の散歩道を歩く。水池の中の魚や亀、黒鳥の様子を眺め、芝生の斜面に腰を下ろしおしゃべりをする。休みながらコーヒーを飲んだりお菓子を食べるのもいいかもしれない。家族で、夫婦で、友人と、カップルで。最後にトイレに寄って、また階段を上って帰路につく。
こんな感じだろうか。






バスケットコートもなければ、子供の遊具もない(階段の上下移動により散歩するだけで適度な運動にはなる)。ただ、このシンプルさゆえに、ここにはかけがえのない穏やかな時間と自由さがあるように感じる。
それは公園やランドスケープにとって、とても重要な役割の一つだ。

4)柔らかい歩道
調整池の機能を兼ねていることから、大雨時には下から段階的に異なる高さで水に浸かることになる。それを考量してか、歩道の舗装材料として砂利や木チップが採用されている。


水に浸かっても問題ないように強く固い舗装材にするのではなく、逆に簡単に補充や補修のできるフレキシブルな素材を採用している。この決断は台湾の公共工事では「出来そうでなかなかできない」ことであるように感じる。
砂利や木チップという素材は柔らかい印象を生み、ここはこういう場所なんだよと、自然に伝わってきて心地よい。
5)10年を経て成長する街、育った公園
前回訪れたときから10年以上が経ち、周辺の都市も大きく変化・成長、よりこの公園の価値が高まっているように感じた。目を見張るのはこの公園自体、ランドスケープの成長だ。

10数年前は、まだまだ小さかった樹木は大きくなり、9m上の地上レベルまで幹が育ち、道路レベルの街路樹と相まって緑のグラデーションをつくっている。玉石を詰めた蛇かごに植えられたつる性植物はしっかり育ち、蛇かごを覆いつくし、いまや緑垣のようだ。




前回訪れたときはまだ完成して数年で、樹木はまだ小さくても良い設計だなぁっと感じたが、その後、さまざまな「手入れ」を経てよく育ってきたことが分かる。

淘汰されるものは淘汰され、残るものは残り、13年分しっかりと公園は育った結果、紅葉谷という名にふさわしい色彩豊かな谷の森になっていた。人工的デザイン要素はその存在感を残しつつも時間の経過分柔らかくなり、何よりもこの公園を使う人、この公園で過ごす人の姿がとても自然だ。
時間を経て、この公園がしっかりと地の着いた場所に育っているという印象を強く受けた。


公園の中に設置された小さな建築が二つある。「心之谷」と名付けられ、今はサスティナブル教育センターになっているようだ。以前はギャラリーとカフェだったと記憶している。この13年で運営団体や利用方法が変化して、今の形に落ち着いたのだと思われる。今回は旧正月中ということもあり、両棟とも開館しておらず、中に入ることはできなかったが、さまざまなイベントを行っているようだ。
6)まとめ ―欠けていたピースが動き出す―
今回の再訪で上述した角の隣地がフェンスで覆われ、工事が始まっているのが見えた。ああ、高層マンションが建つのか、マンションの資産価値は高くなるだろうが、公園への影響は免れないなあと少し肩を落とした。

しかし、工事フェンスの表示をよく見てみると、「台中市政府、安藤忠雄、こども本の森」の文字が!早速ネットで調べてみると、間違いない。
台湾初の「こども本の森 台中」が2026年竣工予定とのことだ!
成長する都市の中でオアシスとして育ってきた紅葉谷公園の最後のピースとして、文化やこどもの未来を願う「こども本の森」ができることは素晴らしいニュースだ。また新たな変化が起こり、より魅力的な場所になっていくことだろうと思う。「こども本の森 台中」の開館が楽しみだ。


プロジェクト概要▼
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秋紅谷景觀生態公園(Maple Garden)は、台湾・台中市西屯区の七期重劃區という都市開発が進む中心エリアに位置する都市型公園である。もともとこの場所は、台中国際会議・展示センターの建設予定地として大規模に掘削されたが、事業の遅延により深い凹地が残されたままとなった。台中市政府はこの未利用地を負の遺産として放置するのではなく、都市の自然資源として再生する方針を選び、下凹した地形を活かした公園整備を進めた。
規模:約3ha
設計:建築家・都市デザイナーの楊家凱Yang Jia-Kai
時期:2012年11月頃 開園
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追記:周辺おやすみスポット
薔薇派
秋紅谷公園前の台湾大道を渡った先にあるパイケーキ屋さん。
台湾の中国語で「派」はパイを意味する。

まず自分では行かないが、妻がネットで見つけたらしく買いにいくというので付いていく。ショーケースには、女性が好きそうな、かわいらしいケーキやパイが並んでいた。薔薇派で買ったパイケーキを片手にコーヒーや紅茶でも飲みながら秋紅谷公園の芝生でゆっくりしてはいかがだろうか。
(2026年2月記)



今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の台中一泊旅行の一日目、
SANAA台湾初設計の緑美圖に行った記事です▼
よければ一緒に是非!
