まだまだ知られていない台湾デザイン 台南街で裸足に【Taiwan scape ③】 河樂廣場
台南、嘉儀に二泊三日の旅行に行ってきた。
古都として有名な台南は古い建築や街並み、そのリノベーションで有名だが、ここ5~10年は台南美術館や台南市立図書館など、古都の中に新しいデザイン空間が現れ、新旧のコントラストが新たな魅力になりつつある。
今回の目的地のメインの一つが、そんな台南の中で、ランドスケーププロジェクトとして異彩を放つ河樂廣場である。
台南の町のど真ん中、車を駐車して歩いて目的地に向かうと、地下一回レベルまでポッカリと空いた凹型のヴォイド空間が突如として現れる。
プロジェクト概要↓
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河樂廣場(The Spring)は、台湾・台南市中西区に位置する都市再生プロジェクトであり、地下2階から地上11階まであった、かつての大商業施設「中國城(China Town Mall)」跡地を親水性のある公共空間へと転換したものである。1983年に開業した中國城は一時期、台南の中心的な商業施設であったが、老朽化と共に衰退。市は歴史ある水路都市としての都市性を取り戻すべく、再開発を計画。
規模:約9,800㎡
設計:オランダの建築事務所MVRDVが主導、台湾のLLJ Architectsなど協働
時期:2020年3月に一般公開
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1) 干潟に裸足で入っていく
一階レベルは大きなヴォイドになっており、下を望むと地下一階レベルに広がる長細い大空間が見える。中央にはエリアの半分ほどを占めるであろう水面が広がっており、曲線形の水面に明確な境界はなく、水底からスロープ状に除々に地面が立ち上がり、陸地につながる。平面的にも断面的にもゆるやかに変化する地形の中で窪んだ場所が水面になっている感じだ。この地形と水の関係は非常に大胆で、実際に靴を脱いで水深20cm程度の水の中に入ってみると、なんとも不思議な感覚を覚える。

のちに「干潟」をイメージして設計をしたと聞いて納得がいった。
現場で感じた「わくわくする自由さ」、「開放感」は、潮が引いた後の干潟に裸足で入っていくときに感じるそれに通じるものがある。しかもしつこいようであるが、そんな空間が都市のど真ん中にあるのだ。


シャワー付きの更衣室やトイレも完備されていて、しかも無料
水深が浅いため安全感があり、小さな子供から大人まで夏は水遊びができ、それ以外の季節も水を眺め、近くに感じることができる。水面があることでそこを通る海風が冷やされ、都市の冷却効果にも貢献しているだろう。

また地下一階レベルという環境によって都市の雰囲気を感じつつも、その喧騒からはゆるやかに離れており、穏やかな時間が流れる。

2) 象徴装置化された柱と梁
広場のエレメントで次に目を引くのが、白くペイントされた粗いコンクリートの柱や梁だ。中国城の建築の構造体の一部が意図的に残されたもので、歴史の連続性を保つだけでなく、空間を柔らかく分節する役割をにない、大空間の中でよりどころになっている。

実際、柱にもたれかかって休む人や、柱とベンチが絡んで設計されていたり、この柱を生かして照明を設置したりと機能している。
柱単体だけでなく、柱と梁の複合体として構造が残されている場所もあり、地下レベルの空間と地上レベルの空間をつなぎ、統一して白くペイントされたそれらの構造体は、あたかもローマの史跡のような象徴性を有している。


3) 道路下の地下空洞
またもう一つ特筆すべきは、車道を挟んで二つのエリアに渡るこの広場は、道路下の地下でつながっているということだ。
道路下は天井高も低く、太陽光があまり届かないこの暗い空間は再利用するには躊躇する場所であったことは想像に難しくない。そこに明快な動線を通し、最低限の照明を設置、連続性を途切れさせることなく水面を引き込むことで、結果として、光が燦燦と降り注ぐ両脇の明るいボイド空間とは大きな対比を生み、河樂廣場の多様性と変化に大きな役割を担っているように感じる。台南の熱い日差しを防ぎ、雨の際には雨を凌ぐことのできる半屋外空間としても機能している。



4) 台南の賑やかな色とのコントラスト
広場の空間は白く塗装された旧構造体をはじめとして白色ベースで色がまとめられている。この「統一された白」が周辺をぐるりと囲む台南の町、つまり「色が溢れかえる環境」と強いコンストラストを放ち、それが心地よい。それは新旧の対比でもあり、長い歴史のある台南の時間をより強く浮かび上がらせる。台湾の中でも南部に位置する台南の日差しは特に強い。その日差しのなか、この白はより鮮やかに輝いて見えるのだ。
また、地上レベルの幅広の歩道空間は町との接点の役割を果たし、今回私たちが訪れたときにはマルシェが開かれており、まさに町と広場が相乗効果を生んでいる様子を感じることができた。

5) 水がないときがある!?
知り合いは以前に何度か行ったが、ともに水が張られていなかったらしい。今回水が張られている状況で初めて訪れて、その印象の差にびっくりしたと言っていた。台南は決して地下水や水源が豊かな都市ではない。乾期には降雨量が足らず水源が確保できずに水が張られない日がつづくことがあるのかもしれない。
また全体的にひとつながりの空間を生み出すために、水面下から陸地にかけての舗装の、ほとんどが統一して洗い出しが採用されているが、ひび割れ防止目地の数が比較的少なく、すでにひび割れや表面材の隔離が起こっているところがいくつか見られた。これだけ使用頻度が高く、台南の強い日差しと温度を考えると、この部分の施工品質管理及び維持管理は克服すべき難しい問題点があったのであろうと想像する。

6) まとめ ―凹型ランドスケープ―
もともと中國城という巨大な凸空間であった場所を、建築を再建するのではなく凹空間のランドスケープとしてリノベーションしたことが、このプロジェクトのまず第一にすごいところである。しかも土地の経済的価値が激高の都市のど真ん中である。

地下レベルにつくるということは、維持管理、治安、気候変動下の豪雨時の排水の問題など、地面レベルの場合に比べて技術的運営的にクリアすべき課題が多い。この河樂廣場が地上レベルにできていたらどうだっただろうか。それでも十分に魅力な場所になっていたはずである。しかし、やはり都市との関係性、道路で分断されてしまう点など、今のデザインに比べると差は歴然だ。それだけにこの大胆な提案をしたデザイナー、それを承諾したクライアントの判断には頭が下がる思いである。


台湾のランドスケープデザインで、下凹型の公園といえば台中の秋紅谷廣場を思い出すが、ここでも公園の大きな部分を水面が占める。しかし、こちらの水面は生態、景観的な水池で、その中に人が入ってのアクティビティは想定されていない。むしろ気候変動下の都市における調整池としての機能がメインである(こちらもまたいつか紹介したいと思う)。また秋紅谷廣場は新しい都市計画区の中、河樂廣場は旧市街地の中という意味でも大きな違いがある。ただ、どちらも都市に対して大きなインパクトを与え、都市や訪れる人にとって大切な魅力的な場所になっている点は同じだ。

歴史感あふれる台南の町を散策した後、河樂廣場で足を水に浸け(子連れは子どもをここで遊ばせれば絶対に喜ぶ)、マンゴーアイスを食べながら、熱い日差しでほてった身体をクールダウンしてはいかがだろうか。
(2021年12月記)
追記:周辺おやすみスポット
残念!今回はお休みです。
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