【映画鑑賞記録】#94「顔を捨てた男」不条理ではないから余計にキツい
点数(100点満点)
75点
予告動画
感想・短評(ネタバレ含)
こーれが存外に面白かったです。
A24製作の映画、大体苦手なんですよ。
大体、説教くさかったり、なんかカッコいいでしょ?みたいな鼻につく感じの映画が多いから、自分とは合わないことが多い。(「ザ・ホエール」と「アイアンクロー」は別格!)
ここのところは「関心領域」とか「異端者の家」とか、面白いなぁと思う作品が出てきたものの、「ボーはおそれている」「ドリームシナリオ」や「マキシーン」で白目になったり、ギャンブル性の高いA24製作映画。
不条理劇とされているが、別に不条理か?というのが率直な感想。
荒唐無稽なブラックコメディ。もともと神経線維腫症によって顔が極端に変形している俳優志望のエドワードが、自分の住むアパートの隣に美女が引っ越してきて交流が生まれる。自身の顔に負い目を感じるエドワードは、モグリの医者による外見変形治療を受け、セバスチャン・スタンの顔に生まれ変わり、新しい人生を始める。隣人の美女イングリッドが劇作家として、最初の作品に選んだのはエドワードをモデルにした男の物語。気持ちが分かる自分が、と過去の自分を隠して主演に名乗りを上げるが、そこにかつての自分の「顔」に似たイケてる男オズワルドが現れて…。

このオズワルドを演じたアダム・ピアソンのスーパー陽キャっぷりが気持ちよかった。ハッキリ言って社交的でグイグイ来るからなんならウザいぐらい。かつてコンプレックスに感じていた「顔」を持つ男が、新しい男前の顔を持った自分をあっさりと凌駕していく。不条理ではない、と言ったのは、このセバスチャン・スタン顔になってからのエドワードも精神性が引き継がれているからである。その何というか、自分の人生に責任を負っていないような印象を受けるからだ。

一方、オズワルドはその一見引かれてしまう見た目を逆に利用して、他者との関わりを積極的に作る努力と卑屈にならないための行動とマインドを人生をかけて作り上げてきた風格のようなものを感じさせる。オズワルドが登場するのはおそらく、映画の半分以上消化してからだと思うので、短時間で新しい顔になってからのエドワードを凌駕していくさまは痛快さすら感じる。

映画冒頭は生まれ変わる前のエドワードの静かながらも、少しずつイングリッドとの交流を深めていく物語が良かった。ただ全体を通して観たあとだと、イングリッド自身は初めてエドワードを観た際のリアクションはビックリした様子はあったものの、引っ越し業者だったり、部屋の修理に来た工事屋さん、町ですれ違う人々など、案外反応が薄かったり、気にしていなかったりしていることがわかる。何より、見た目で判断しないイングリッドの言動は心強いものであったはずなのに。
正直、オズワルドがエドワードに向ける言動は悪意である部分も少なからずあるだろう。しかし、強く生きる男からの力強いメッセージである可能性の要素のほうがはるかに感じる。そこに気づくことができなかったエドワードの破滅は類型的でありながら、自分の人生を自分で良くする、ということから逃げた男の悲しい末路を示している。
決して不条理ではない。
ただ筆者がセバスチャン・スタンみたいな顔じゃないのは、やっぱり不条理だと思う。(白目)


