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言葉遊びの楽しさを伝えたい――「アイウエ王」作文/「それ ほんとう?」

言葉遊び大好き司書、きのころです。

突然ですが、
言葉遊び、お好きですか?

言葉遊び、言葉あそび、ことば遊び、ことばあそび……

いろんな表記があって、どれを使えばいいのか迷いますが、
いったん、ここでは「言葉遊び」に統一します。

昔、「言葉遊びなんて、ただのオヤジギャグやろ?」
と言い放った友人がいました。

いやいやいや、何いっちゃってんの?
言葉遊びの奥の深さをご存じない!?

知らざあ言って聞かせやしょう!!


私と言葉遊び

それがきっかけで……というわけでもないのですが、
私は昔から、いくつもの言葉遊び作品を創作してきました。

その創作の源泉としては、偉大な先行作品の存在があります。

たとえば、「あいうえお」を巧みに使った作品として、
『アイウエ王とカキクケ公』三芳悌吉、武井武雄(童心社)
という絵本があります。

どう説明してもネタバレになってしまうので、
ほんのちょっとだけ。

登場人物は、アイウエ王国のアイウエ王。
そして、敵はカキクケ公国のカキクケ公。
タチツテ塔にとじこめられた王様を助けるのがサシスセ僧……。

こんな感じで進行していきます。

この作品にインスパイアされた私は、
大学時代に所属していたサークルの「打ち上げ」を念頭に、
打ち上げの光景を読み込んだ「アイウエ王」作文を考えました。

文頭を使うわけではないので、「あいうえお作文」ではなく、
「アイウエ王」インスパイア作文です。


打ち上げの光景を読み込んだ「アイウエ王」作文
(きのころ・作)

アイウエお酒が  来ましたよ 
カキクケコップに つぎましょう
ガギグゲごちそう 食べましょう
サシスセそろそろ 無礼講
ザジズゼぞろぞろ 酔っぱらい
タチツテとなりは 大丈夫?
ダヂヅデ怒濤の  ハイテンション
ナニヌネ飲み食い おさまって
ハヒフヘほどほど 腹具合
バビブベぼろぼろ 泣き上戸
パピプペポーズだ 「はい、チーズ」
マミムメもうない ビールびん
ヤヰユヱよろよろ 千鳥足
ラリルレろれつが 回らない
ワイウエ起きてて いいけれど
次の日 ン と  眠たいよ


ご清聴、ありがとうございました(笑)

大昔の作品を引っ張り出してきて、改めて読んでみると……

元ネタは「アイウエ王」だと思い込んでいたものの、
なんとなく、もっと近い元ネタがあるような気がしてきました。

特に、最後の「ン」を「ン と」というやり方で終わらせるのも、
元ネタの踏襲(本歌取り)だったような...…。

もう30年ほど経っているので、記憶が定かではないのですが、
元ネタをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

いずれにしても、

  • あ行から順に、五十音の展開に沿って、打ち上げも進行していくところ

  • 通常の「あ行」等だけでなく、「が行」などの濁音や、「ぱ行」の半濁音も含めて、全部の「行」を使っているところ

が、私なりに工夫した新機軸だったと思います。(大げさ)

昔作った言葉遊びは、時事ネタや内輪ネタが多く、
そのままでは使えないものが多いのですが、
少しずつ蔵出ししたり、新作を考えたりしたいですね。


「あいうえお」の最高峰

さて、私がいかに長く言葉遊びというものを楽しんできたか、
ということをお話させていただきました。

ここでは、そんな私が選ぶ、
「あいうえお」モノの最高峰を紹介したいと思います。

「あいうえお」をテーマにした作品にはいくつもの名作がありますが、
ちょっと他では味わえない究極の「あいうえお」を登頂できるのが、
『それ ほんとう?』です。


『それ ほんとう?』
 
松岡享子・さく、 長新太・え(福音館書店)

「あいうえお」テーマの本というと、その多くが、

・「あ」で始まる単語をいくつか並べる
・「あ」で始まる文章をいくつか並べる

という感じですが、『それ ほんとう?』では、

・「あ」で始まる文章が延々と続く
 なんなら、何ページにもわたって続く

という驚きの展開を見せます。

公式の紹介文では、

「あめりかうまれのありのありすさんがあるあきのあかるいあめのあさ……」と、「あ」ならあのつく言葉だけを集めたお話が「わ」までぎっしり。どの音のお話も、思わず「それ、ほんとう?」と言ってしまいたくなるような、奇妙きてれつでナンセンスなドタバタ劇に充ち満ちています。

とありますが、これでも、まだわかりにくいです。

この本の最大の魅力は「やりすぎ感」

たとえば、「か」を全文お見せしましょう。


んしゃくもちのかまきりが
かしこいかみきりむしに
からかわれて
かっとなり
かまをかざして
かかっていったら
かみきりむしも
かんかんになって
かまきりのかおに
かみついた。
かまきりが
かんだかい
かなきりごえをあげたので
かりもののかみしもをきて
かってぐちに
かしこまっていた
かなかなぜみも
かつらをかぶって
かもいのうえに
かくれていた
かとんぼも
かいきんしゃつをきて
かーてんのかげで
かくざとうのかずをかぞえていた
かぶとむしも
かくてるどれすをきて
かだんのかたわらで
からすむぎをかりとっていた
かげろうも
かくぼうをかぶって
かなだらいのなかで
かすてらのかいぐいをしていた
かたつもりも
かおいろをかえて
かけこんできて
かわるがわる
「かんにんがかんじん。」と
かたったって。

『それ ほんとう?』より

こんなのが、「あ」から「わ」まで、
すべての文字について続いていくのです。

なかなかの労作ですね……
ってそういうレベルじゃない。

でも、誰もやろうとしなかっただけで、
頑張ったら、1つ2つはできそうな楽しさに満ちています。

打ちのめされて、神棚に飾っておくような本ではありません。
そこもいいのです。

こういう絵本を読んで育つと、言葉の面白さに敏感になるし、
「言葉遊びなんて、ただのオヤジギャグ」
なんて言わない大人になるんでしょうね……(ため息)


文章も絵もナンセンス

長新太さんのイラストも、ナンセンスな文章に華を添えます(笑)。

意味がわからない文章に、へんてこなイラスト。
この本の世界観に、見事にジャストフィットしています。

このイラストが添えられていることで、
子どもは「意味がわからなくても楽しんでいいんだ」と安心できる。
大人は「意味を求めすぎなくていいよね」と肩の力が抜ける。

その自由さも、この本の大きな魅力です。


こんな人におすすめです

この本は、ことばそのものを楽しみたい人にぴったりです。

子どもと一緒に
意味がわからなくても、音だけで楽しめるので、言葉に親しみはじめる頃(4〜5歳ごろ)からおすすめ。大人がテンポよく読んであげると、言葉のリズムに自然と耳がひらきます。

小学生に
「読書=ストーリー」と思い込んでいる子どもに、「ことばで遊ぶ」世界を知ってもらうのに最適です。音読や早口言葉みたいに競い合うのも楽しいですよ。

大人にも
言葉に詰まったときや、思考がかたくなったときに開くと、頭がほぐれるでしょう。「音のリズム」「ナンセンスの面白さ」「ことばの広がり」を味わいたい人はぜひ手に取ってみてください。


言葉の愉快さにひたる一冊を

それ ほんとう?は、読むたびに新しい発見がある、言葉の遊園地のような本です。
本棚に一冊置いておくだけで、ふとした瞬間に「ちょっと遊びたい」ときの言葉のおもちゃになってくれます。

「読む」よりも「ことばと遊ぶ」ための一冊を――
そんな気分になったら、ぜひこの本を手に取ってみてください。



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