5枚の浮世絵から生まれた物語~黄表紙・講談・落語の三変化で江戸文化を楽しむ
江戸文化大好き司書、きのころです。
絵や写真をもとに、妄想ストーリーを考えるのも大好きです(笑)。
今回の発端は、江戸文化の記事に使うための画像を作成したことでした。

写楽・歌麿・北斎・広重の浮世絵四天王に、
私の大好きな国芳を加えた、五大浮世絵師の代表作。
ずらりと並んだ名画の数々を眺めて悦に浸っていると……
なぜか、頭の中で勝手に物語が立ち上がってしまいました。
しかもひとつでは収まらず、黄表紙・講談・落語の三変化。
江戸の娯楽文化・豪華三本立ての、妄想でっちあげ物語の幕開けです!
専門家ではない、江戸文化ファンの遊びとしてお楽しみください。
壱. 黄表紙:大波戀愛髑髏道中

喧嘩っ早い男が、道端で団子を食べる町娘にひと目惚れ。
男「お、おめえ……団子が似合うぜ」
女「え? これはポッピンですけど」
男「なにィ!? 団子じゃなくてポッピン!?
……どおりで歯ぁ折れると思った」
恋の力は恐ろしい。
その日から男は酒より団子、喧嘩より恋文を投げる日々。
二人は舟遊びに出かけます。
ところが――
ドッカーン!
例の大波がドーン!
舟はひっくり返り、男女は波間に消えました。
そこに現れたのが、巨大な髑髏。
髑髏「舟の保険に入っておらなんだな。
命を粗末にするでない」
男 「へい、命も団子も粗末にしません!」
髑髏「……それ、ポッピンだがな。
地獄もいま満員なのだ。
仕方ない、もう一度江戸に戻っておけ」
男 「地獄でほっとけとはこのことだ!」
髑髏「わし、仏ではないがな……
いや、ある意味、ホトケか。」
ありがたい説法を受けて、二人は無事帰還。
夕暮れの橋で再会し、男は決意を述べます。
男 「もう喧嘩はやめだ。団子屋でも開こうと思う」
女 「それなら、あの世行きになっても安心ね」
(髑髏「それ、ポッピン……」)
かくして二人は団子屋夫婦に。
喧嘩を売るより、団子を売ったほうが儲かるのでした。
弐. 講談:任侠役者・波間改心の一席

さてさて皆さま、お立ち会い。
時は江戸の中頃、町に鳴り響く名は、かの任侠あがりの役者――。
舞台に立てば見得を切り、客はどよめき、木戸銭は山を築く。
しかし裏を返せば、酒に女に博打ざんまい。
ある日のこと、美しき女と出会い、舟遊びへと誘い出す。
ところがどうだ、突如として逆巻く大波!
舟はたちまち転覆、役者は女とともに水底へ。
気を失ったその刹那、目を開けば――
白骨の髑髏が巨体をさらしておった!
「汝の過ちは重い。
だが因果を断ち切るのもまた人の心。」
髑髏はどこからともなく巻物を取り出し、役者に示す。
そこには「赦免状」の二文字。
「この女を守り抜けば、汝の罪は赦す。
ただし再び驕れば、容赦はせぬぞ」
役者は深々と頭を垂れ、赦免状を胸に抱く。
そのとき波は鎮まり、舟は岸へ。
夕暮れの橋を、役者と女は肩を並べて歩んでいった。
嵐のあとには静かな暮らしが待っている。
……されど、これで一件落着と思うのはまだ早い。
この先、役者の身にさらなる波乱が待ち受けておるとは――。
さてさて、ここからがますます面白くなるところですが、
あいにくと、お時間が参りました。続きはまた次回。
参. 落語:怪談・髑髏役者

へえ、みなさんご存じかどうか――
江戸の昔に「髑髏役者」なんてあだ名のついた役者がおりましてな。
舞台に立ちゃ立派なもんで、見得を切れば客席から声が飛ぶ。
ところが素に戻れば博打に女に酒ざんまい。
人の心をおもちゃにして笑いを取るような男でした。
ある晩、この役者が女と舟に乗り出した。
ところがそこに、大波がドーン。舟は転覆。
気がつくと、目の前にでっかい髑髏がにゅうっと。
「おぬし、人の涙を笑いに変えて舞台に立ったな。
その報い、ここで受けてもらうぞ」
声がだんだん女の声に聞こえてくる。
「芝居か真か、芝居か真か――」
翌朝、舟は岸に打ち上げられていたが、役者の姿はない。
舟板に爪で刻まれていた文字――
『芝居か、真か』
その板は今もどこかに漂っていると言われてましてね。
夕暮れ時に橋を渡ると、足元からその文字が浮かび上がる。
「芝居か、真か……芝居か、真か……」
耳に入ったと思ったら、川面にぼんやり女の影。
……で、この話を聞いた人がね、
その夜に橋を渡ると、決まって誰かに後ろから呼ばれるんだそうで。
……てなわけで、これが「髑髏役者」の一席でございます。
(ここで灯りがすっと落ちる)
<幕>
妄想三変化のおまけ話
今回は浮世絵から始まる妄想物語をお届けしましたが、
いかがでしたでしょうか。
同じ5枚の浮世絵から、
黄表紙はバカバカしくも愛嬌たっぷりなお話。
講談は大げさに教訓を説き、
落語は怪談噺っぽく仕立ててみました。
一つのイメージが三つ巴の物語に化ける。
これぞ江戸の娯楽の懐の深さであり、
浮世絵がもつ物語装置としての力でしょう。
さて、本物の黄表紙や怪談などを読むと、
これ以上にぶっ飛んだ世界が広がっています。
たとえばこちら――
『すぐ読める!蔦屋重三郎と江戸の黄表紙』山脇麻生(時事通信社)
もちろん「べらぼう」に出てきた黄表紙も紹介されます。
蔦重ファンにぜひおすすめしたい一冊です。
それから、私も最近知ったばかりで未読なのですが……
こんな面白い趣向の本があるんですね!
紹介文を読んでいるだけで、大和愛さまの黄表紙愛に震えました……
選書のセレクトもよく、黄表紙解説本の決定版でしょう!!
さらに興味のある方は、講談や落語の入門書などもどうぞ。
江戸の想像力がますます身近に感じられるはずです。
<落語>
【合本版】円朝の怪談噺(角川ソフィア文庫)
こちらは、落語の神様・三遊亭円朝の名作怪談噺、
「真景累ケ淵」・「怪談牡丹燈籠」・「怪談乳房榎」を
1冊に合本した電子書籍です。
<講談>
『人生を豊かにしたい人のための講談』神田松鯉(マイナビ新書)
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
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