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歴史_09【シロクマ文芸部】【lpz.89】

( 前 話 / 登場人物と目次 )


風が吹くと凍てつくような寒さのベルリンの街で、凌太は失踪した希実が残した暗号『lpz.89』を追っていた。友人のエリカと解読を試みるも行き詰まり、更には秘密のアプリにペトロフ・コネクションから脅迫が届いた。それは追跡を止めねば彼女の命はないという警告だったが、希実が生存している証でもあった。

前回まで


翌朝、凌太とエリカは、かつて東西を分断していたベルリンの壁の痕跡が残る近くのカフェで朝食をとっていた。昨夜、ペトロフ・コネクションから届いた警告メッセージを受け取ってから、凌太は常に周囲を警戒していた。エリカはコーヒーを一口飲み、目の前のノートパソコンを広げた。

「『 lpz.89 』の暗号について、旧東ドイツ時代のプロトコルや、軍事コードを重点的に調べてみたの」
「何か手がかりは見つかった?」

「ええ。まず『 LPZ 』。これが三文字の略語で、地名を示すコードだと仮定して、旧東ドイツ時代の略語リストと、コードの資料を総当たりで調べた結果、一つだけ有力な候補があったわ」

エリカは画面を凌太に向けた。表示されたのは、旧東ドイツの鉄道の駅コードリストだった。

「これを見て。『 LPZ 』は、ドイツ語圏の地名で『ライプツィヒ(Leipzig)』の略号として使われていた記録がある。かつて、ライプツィヒは東ドイツの中で、政治と文化の中心地の一つだったわ」

「ライプツィヒ…、なぜ希実はその場所を?」
「そして『89』よ。これはドイツ人にとって、単なる数字じゃない」

エリカは窓の外、かつてベルリンの壁がそびえていた方向を見つめた。

「1989年。ベルリンの壁が崩壊して、東西ドイツが統一に向かった、ドイツ史における決定的な年だわ」

凌太はハッとした。そして、ポケットから『 lpz.89 』のメモを取り出すと、テーブルに広げた。その瞬間、全てが繋がるのを感じた。

「エリカ。このメモが挟まっていたのは、ヨーロッパ旅行のカタログだ。あれ、ドイツのページの角に折り目がついてるぞ」
「リョウタ…!彼女は場所のヒントを伝えていたのよ!」

「旧東ドイツの超高速暗号解読技術『レプロ』。その開発者であるギド・エンゲルスは、ライプツィヒ近郊にある極秘の研究施設にいたのかもしれない」
「ライプツィヒは、89年秋に平和革命のきっかけとなったデモが起こった場所よ。きっと、その混乱している最中にギド・エンゲルスは失踪したのよ」

「つまり、希実はその極秘研究施設を探しにライプツィヒに向かったのかもしれない」
「そうに違いないわ」

凌太は、希実が失踪する直前まで、彼に託すための手がかりを残していたことに、胸が熱くなった。

「ライプツィヒだ。エリカ、すぐに行こう。きっとそこに、手がかりがあるはずだ」

凌太の瞳には、迷いではなく、確かな決意の光が宿っていた。

(つづく)



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ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。

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