雪だるま(エピローグ)_12【シロクマ文芸部】【オートリバース】
雪だるまを息子と一緒に作ったあと、「かまくらも作ろうよ」とねだられた。10年ぶりの大雪に、息子は大はしゃぎだった。
完成したかまくらは、息子が体育座りでずりずりとバックして、ようやく収まるくらいの大きさだった。
「僕の部屋がほしいな」
「お、ちょうどぴったりじゃないか」
「かまくらじゃないよ。本当の、僕の部屋だよ」
「…そうか。もう、そんな年頃なんだな」
…
というわけで、いま、物置になっている部屋を息子の部屋にするために片付けをしている。サボっていないか、ときどき妻が様子を見に来る。
「それ、最後に使ったのはいつなの?」
「うーん、いつだったかな…」
「思い出せないなら、捨てて」
「はいはい…」
自分はなんでも取っておく派だが、妻は不要になればためらわずに捨てる派だ。スマホのラジコでラジオを聞きながら、遅々として進まない断捨離を続けていた。
妻とは大学で知り合い、社会人5年目で結婚、その2年後に息子が生まれた。その息子も4月から中学生だ。月日が経つのは本当に早い。
部屋の奥から、実家から持ってきたダンボール箱が出てきた。なかを覗くと、懐かしいものが入っていた。自分が中学生の頃、お年玉を貯めて買ったウォークマンだ。なかには、カセットテープが入ったままだった。
新しい電池に取り替えて、再生ボタンを押した。しかし、なにも聞こえなかった。カセットテープを見るとB面の終わり際だったので、早送りボタンを押した。しばらくするとガチャリと止まってしまった。
「あれ?A面に切り替わらないな」
もう一度再生ボタンを押しても、すぐに停止してしまう。どうやら、オートリバース機能が故障しているらしい。カセットテープを裏返して、改めて再生ボタンを押した。
On the wing, with broken heart
やぶれた翼で
On the wing, with broken heart
もう一度翔ぶのさ
「どう?片付けは終わった?」
「いま、やってるところだよ」
停止ボタンを押した。電池を抜いて、ウォークマンを軽く撫でると、不燃ごみの袋のなかに入れた。
(おわり)
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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