最後の日【#シロクマ文芸部】
最後の日が突然やってきた気分だった。
タクヤの銀行口座が振り込め詐欺に利用され、なぜか借金回収までやる羽目になってしまった。なんでこんなことになってしまったのか?お金欲しさに銀行口座と個人情報を教えてしまったからだ。先輩もグルだったとすれば、もう逃げることはできない。まったく、なんて日だ!
タクヤは大学の授業どころではなかった。大学に戻りはしたが授業に出る気にはならず、自動販売機の隣のベンチに座っていた。
『タンタン タタタン タタンタン』
非通知設定の電話が着信している。
「…もしもし」
「もしもし、タクヤさんですか?」
「そうですけど」
「ハジメです。先輩から伺っているかと思いますが」
「はい…」
「この度は集金してくださるとのことでありがとうございます」
「はい…」
「まずは三百万円を回収して頂きたいのですが」
内容は三十年前に借金した男から金を回収することだった。いまでは利子が膨らみ総額三千万円になっているらしい。しかし、男は蒸発して行方不明になっていた。男の戸籍を調べたところ結婚していて娘が一人いた。妻は既に亡くなっていて、娘は児童養護施設に預けられていた。
「何をすればいいのですか?」
「喫茶店ロイヒテンに行ってください」
「先輩からもらったショップカードの…」
「そうです。そこで男の娘が働いています」
「娘さん、ですか」
「その娘からまずは三百万円を回収して頂きたいのです」
「あのう、その借金は時効にならないのでしょうか?それに、その男と娘は本当の親子なんでしょうか?」
「真実なんて関係ありません」
「えっ?」
「真実だと思わせればいいんです」
「どうやって?」
「タクヤさんは大学生でしょ。それくらい自分で考えてください」
「そんな」
「来週までに三百万円を回収してきてください」
「来週?無理ですよ」
「回収できなかったら、慰安旅行につれて行ってあげますよ。海がいいですか?それとも山がいいですか?」
「…なんとか、します…」
「では、宜しくお願いします。そうそう、娘の名は安堂優衣といいます」
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