新しい【#シロクマ文芸部】
『新しいラーメン屋を見つけたので一緒に行きませんか?』
和彰は優衣にラインを送ったあと、風呂に入った。風呂から出て、歯を磨き、布団に横たわるとスマホをつけた。優衣からの返信は届いていなかった。遅い時間だったので、もう寝てしまったのかなと思い、しばらく動画を見てから眠りについた。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは、マスター」
和彰は仕事帰りに喫茶店『ロイヒテン』に寄った。店内を見渡してから、いつものカウンター席に座った。
「優衣さんはお休みなんです」
「そうでしたか」
和彰はなぜ優衣を探していることがマスターにわかったのか、ちょっと気になったが、お気に入りのナポリタンを注文した。
「実は…」
「あの…」
同じタイミングで話かけてしまったので、マスターに譲ることにした。
実は優衣のことで相談したいのだがお時間を頂けないか、よろしければ今日は店を閉めてしまおうかと思っているとのことだった。
和彰も優衣について相談したかったと伝えるとマスターは表の看板の電気を消して『OPEN』のプレートを裏返して『CLOSED』にした。
和彰は優衣にラインを送ったのだが返事がないので『ロイヒテン』に来てみたのだとマスターに伝えた。
「昨日、大学生らしい青年が優衣さんを訪ねに来たんです」
マスターは昨日の顛末について教えてくれた。
お昼のピーク時間帯を過ぎた頃、青年が店に入ってきた。青年が優衣に何かを話しかけると優衣の顔色が曇り出した。優衣は休憩かねて外出すると言って、その青年と一緒に店を出ていった。
30分ほどして戻ってくると、体調不良で早退させて欲しいと告げられ、店のことは心配しなくていいと帰宅させた。優衣の顔がとても青ざめていたからだ。
青年が優衣に話しかけているときに「借金」や「三百万円」と言っているのが聞こえた。
「優衣さんは借金を抱えていたんですか?」
「そんなことはないはずです」
「それならどうして借金取りが来るんです?」
「そういえば『父親』ってことも言っていました」
「優衣さんは児童養護施設にいたと聴いてます」
「私もそう伺っております」
和彰は問題が借金であることがわかったので母に相談しようと思っていた。母は以前、法律事務所に勤めていたからだ。弁護士ではなく事務員であったが、いまでも弁護士の先生と懇意にしている。借金を専門にする法律事務所だったので先生が相談にのってくれるだろう。
母を通して弁護士に相談してみるとマスターに伝えると、少し安堵した表情に変わったようだった。
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