《闇夜に刻まれた印》外伝:処刑人日記III(下):鉄の匂いと甘さ(処刑人シリーズ)/《烙印於黑夜之印》外傳:處刑人日記III(下):鐵味與甜味(處刑人系列)(和訳付き)
はじめてのあなたに
前篇
作者便り(26年5月)
日本語訳
【処刑人日記III(下):鉄の匂いと甘さ】
処刑自体は終わって、
人も散って、
書類も一通り片付きました。
これで終わり——のはずなんですが。
……どうも、そういうわけでもないみたいです。
残るものは、やっぱり残ります。
たとえば、匂いとか。
最後に出てくるパフェも——
まあ、そういうものです。
トーマスを上で「踊らせた」あと、
梯子を降りながら、私は彼の父親のことを考えていた。
——あの時、きちんと躾けていれば、
こんな結末にはならなかったかもしれない。
次は中央の一人。
まるで泥のように崩れ落ち、騎士に支えられている男だ。
確か、ハーレンだったか。
興奮剤を入れすぎたのだろう。
全身の震えに加えて——
生理的な反応まで出ている。
股間が、不自然に盛り上がっていた。
私は一瞥しただけで、何も言わなかった。
どうせ、吊り上げればしばらくはそのままだろう。
だが——台下の連中は、そうは受け取らなかった。
処刑台に近い者たちがそれに気づいた瞬間、
一斉にざわめきが広がり、やがて罵声へと変わる。
中には立ち上がり、怒鳴りつける者までいた。
「ふざけるな!
お前は絞め殺される相手にまで、侮辱するつもりか!」
……正直なところ、
このあと木樽ジョッキでも投げ込まれるのではないかと、少しだけ気になった。
群衆が怒っているのは、私のためだ。
——だが、もし本当に当たったら、その責任は誰が取るのか。
それに今の彼にとって、
唯一縋るべき相手は——
絞首具を握っている私だ。
苦しんで死ぬか、そうでないか。
その選択は、最初から彼の手にはない。
……もっとも。
彼の運命は、
あの食堂のテーブルの上で、すでに決まっていたのだが。
私は視線を引き戻した。
まともに立つこともできない状態だというのに、
挑発していると受け取られる。
……こういう光景は、初めてではない。
「去勢してから殺せ!」
台下のざわめきは、やがて騒ぎへと変わっていく。
——まずいな。
これ以上引き延ばせば、余計に面倒になる。
私は一歩前に出て、絞首具を首にかけ、締める。
彼は何かを言おうとした。
だが、口元の布に塞がれ、漏れるのは濁った息だけだ。
私はわずかに身を寄せ、
耳元で低く囁いた。
「この段階で、まだ反応があるのか……」
一瞬だけ間を置く。
「向こうで、ゆっくり考えろ。」
私は手を上げ、合図を送る。
騎士が動いた。
身体が引き上げられる。
私は一歩退き、
彼がもがき始めるのを見届ける——
トーマスと同じ、“舞い”に入る。
二度目の結びを取りに梯子へ上がったとき、
私の視線は、すでに三人目へと移っていた。
——一番右。
……ガリス。
ほとんど騎士に抱え上げられるようにして、連れてこられている。
涙で顔はぐしゃぐしゃに濡れ、
歩いた跡には、黄ばんだ水の筋が引かれていた。
「……もう、もたないな。」
状態が悪すぎる。
私は結びを後回しにし、すぐに梯子を降りた。
正面に立ったとき、ようやく聞こえた。
彼は、同じ言葉を繰り返していた。
「……パパ……パパ……」
命乞いではない。
私は、わずかに足を止めた。
——彼の父親は、殿下が私にこの件を持ってくるより前に、
すでに「いなくなっている」。
本来なら、この種の情報が死牢まで届くことはない。
……だが、伝わってしまったらしい。
私は押送してきた闇夜の騎士に視線を向ける。
彼女は肩をすくめた。
「さあ。私も知らない。」
それ以上は問わなかった。
時間はない。
——先に行かせる。
私は絞首具を首にかけ、締める。
わずかに身を寄せ、
耳元で低く囁いた。
「……そうだ。理由は、分かっているはずだ。」
一瞬だけ間を置く。
「向こうへ行ったら……自分で会って話せ。」
一歩、距離を取る。
手を上げて合図を送る。
彼は引き上げられた。
私は目を閉じる。
最後の結びを横木に固定し、
梯子を降りる頃には——
三人とも、まだ微かに震えていた。
……しばらくは、揺れ続けるだろう。
私は顔を上げ、王宮の窓へと視線を向けた。
殿下は、おそらくあそこから見ている。
——でなければ、あの方の性格だ。
とっくに人混みに紛れているはずだ。
視線をさらに上げると、
上空で警戒を続けているエルールと目が合った。
私は軽く親指を立て、
続けて、もう一つ合図を送る。
彼女は一瞬だけ動きを止め、
腕を交差させて「見ていない」の合図を返すと、
そのまま旋回して離れていった。
……ということは。
殿下は、宮中だな。
書記官が近づき、声を落として尋ねてきた。
「さっきの……ずっと『パパ』って呼んでいた子、彼の父、まさか……?」
私は一瞬だけ間を置く。
「……おそらく、もう“いない”。」
彼女は小さく頷き、それ以上は何も聞かず、報告書の処理へと戻っていった。
---
私は上に吊るされた三人を見上げる。
痙攣していた身体が、やがて力を失い、
ゆっくりと風に揺れるだけのものへと変わっていく。
広場の人波も、少しずつ引き始めていた。
——どうせ見るなら、あと七日ある。
---
ある程度、失禁も落ち着いたのを確認してから、
私は書記官に一声かけ、梯子を立てかける。
再び上がり、トーマスの横に立つ。
懐から聴診器を取り出し、胸に当てる。
……心音はない。
「トーマス・クイグ、死亡確認。
死亡時刻——」
腕時計に視線を落とす。
「十一時三十二分。」
下では書記官が記録を取り始めていた。
残りの二人も、同様の手順で確認する。
すべて終え、梯子を降り、書類に署名する。
——あとは、七日間吊るしておくだけだ。

書記官は書類をまとめながら言った。
「私はこれで報告に戻るわ。
あなたの報告書、期限は守ってちょうだい。」
闇夜の騎士に護衛され、彼女はその場を後にした。
私は工具を片付け始める。
処刑室へ戻る準備だ。
そのときになって、ようやく気づいた——
広場の人影は、ほとんど消えている。
……だが、一人だけ。
その場に立ったまま、動かない男がいた。
私は近づく。
彼は私を見なかった。
ただ上を見ていた。
あの三つの影。
まだ、風に揺れているそれを。
燻製肉のように吊るされた塊を。
「……知っていますか。」
彼が口を開く。
声は、すでに掠れていた。
「私の妻……アンナは。」
一瞬、言葉を切る。
「昔は、よく笑う人でした。」
私は何も言わない。
一瞬、あの話が浮かんだ。
——言葉にはしない。
「……あの日から。」
「彼女は、ずっとそこに座っている。」
「泣くこともある。」
「何もないこともある。」
彼は息を吸う。
——それだけで、崩れそうだった。
「私は……抱きしめることしかできない。」
「ずっと、抱いているだけだ。」
彼は処刑台を見上げたまま、
涙を流した。
「もう一度でいい……
もう一度だけ、あの笑顔を見たい……」
私は手を伸ばし、
その肩を軽く叩いた。
何も言わなかった。
しばらくのあいだ、
私たちはその場に立っていた。
風の中で揺れ続ける、三つの影を見ながら。
やがて、私は背を向ける。
処刑室へ戻る。
夕刻——
魔力燭台の灯りが揺れる処刑室には、
報告書をまとめている私だけが残っていた。
そのとき、不意に扉を叩く音がする。
この扉がノックされることは、ほとんどない。
私は顔を上げた。
扉の向こうには、闇夜の制服を着た王女が立っている。
手には、小さな冷却箱。
「殿下。」
「違うよ。謎の黒髪少女だよ〜」
私は苦笑した。
……また、あの食堂のときの殿下だ。
彼女は冷却箱を机の上に置く。
私は報告書を閉じて、脇へ寄せた。
やがて彼女は、その中からパフェを一つ取り出す。
「これ、本当は……あの……チェナに渡す予定だったんだけど。
一つ余っちゃって、最初に顔が浮かんだのがあなたでさ。」
……“余った”、ね。
心の中でだけ、軽く突っ込む。
「神罰祭三百年記念・限定パフェ」。
当時は百個限定。
並んでも手に入るとは限らない——
そんな代物だ。
それが今は——
こんな形で、“復活”している。
……殿下は、満足しているのだろう。
彼女は少しだけ黙り、銀のスプーンを差し出した。
「お疲れさま。」

私はそれを受け取り、ひと口すくう。
……美味しい。
甘さは、ちょうどいい。
——だが、心に残る味は、それとは違っていた。
「そういえば、殿下。あの……ガリスの様子ですが——」
「分かっている。」
彼女の声が、わずかに沈んだ。
「牢の清掃中に見つかった。」
そう言って、彼女は一枚の紙を差し出す。
そこに書かれていたのは、ただ一言——
『父、死亡』
その横には、一本の指。
——読む者を指すように描かれている。
意味は、明らかだった。
彼女はそれを一瞥し、少しだけ困ったように言った。
「あとで、あの子たちには話しておく。」
「……まあ、あの連中が彼女たちの一線を踏み越えたのも事実だけど。」
一瞬、言葉を切る。
「ただ——知らせるタイミングは、本来こちらが決めるべきものよ。」
声の調子が、わずかに和らぐ。
「規律は、規律だから。」
彼女は立ち上がり、制服の裾を軽く払った。
「まだ書類が山ほどあるの。先に戻るわ。」
「あとで女官が回収に来るから、食べておいて。」
そう言い残し、部屋を出ていった。
扉が閉まると、室内は再び静けさに包まれる。
私は彼女が去った方向をしばらく見てから、
視線をテーブルへ落とした。
置かれたままのパフェ。
……今回は斬首ではないはずなのに。
鼻の奥には、鉄の匂いが残っている。
——甘さを感じるまでには、
もう少し時間がかかりそうだ。
それでも、手は止めなかった。
以上の翻訳は ChatGPT による翻訳文をもとに、自ら校正・監修した形でお届けしています。
もし文体や語調などに不自然な箇所がありましたら、ぜひご指摘いただけますと幸いです。
ご感想やご質問などございましたら、コメント欄にてお知らせください。できる限りお返事させていただきます。
改めまして、本作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。
中国語本文
【處刑人日記III(下):鐵味與甜味】
台上的事情結束了,
台下的人也慢慢散了,
該寫的文件也寫完了。
照理說——
事情應該到這裡就結束了才對。
但好像,也沒有真的結束。
有些東西還是會留下來。
像味道一樣。
至於最後那個聖代……
嗯,大概也是那種東西吧。
讓湯瑪斯在上面『跳舞』之後,我一邊下梯子,一邊還在想著他那可憐的父親——如果當初能好好管教,或許現在也不會落得這樣的下場。
輪到中間那位,像爛泥一樣要騎士架著的傢伙。
好像叫哈倫吧。
可能是興奮劑打太滿了,除了全身顫抖之外,某個部位也出現了生理反應。
股間撐起了帳篷。
我看了一眼,也沒說什麼。
反正等下吊上去,大概還會撐一陣子。
但台下的人不這麼想。
靠近刑台的人先注意到,噓聲一下子湧了上來,有人甚至站起身對他怒吼——
「太過份了!你是連要絞死你的人都要汙辱嗎?!」
老實說,我有點擔心等下會不會有木製啤酒杯砸上來。
群眾在氣他,是在替我抱不平。
——但要是真的砸到我,這筆帳到底該算誰的?
況且現在,他唯一需要哀求的人,是拿著絞索的我。
他要死得痛苦還是痛快,從來不在他自己手上。
……雖然說,他的命運在食堂那張桌子上就已經決定了。
我收回視線。
他連站都站不穩,卻被當成在挑釁。
這種場面,我也不是第一次見了。
「應該要把他閹掉再讓他去死!」
台下的聲音開始失控。
不行了,再拖下去只會更麻煩。
我上前,把絞索套進他的脖子,收緊。
他還想掙扎著說什麼,但聲音被毛巾堵住,只剩下含糊的氣音。
我稍微靠近一點,在他耳邊低聲說:
「到這個時候還有反應啊……」
我停了一下。
「過去那邊再慢慢想吧。」
我抬手示意。
騎士動手。
他被拉了上去。
我退後一步,看著他開始掙扎——
踏上與湯瑪斯相同的舞步。
上梯子去打第二次死結的時候,我的視線已經落到第三個人身上。
最右邊。
……蓋瑞斯。
他幾乎是被騎士架上來的。
淚流滿面,沿途拖出一條發黃的水痕。
「……他撐不住了。」
狀況太差,我只好趕緊先下梯子。
走到他面前時,才聽見他一直在念:
「爸爸……爸爸……」
不像是在求命。
我停了一瞬。
他父親,在殿下找我之前就已經「失蹤」了。
這種消息,本來不該傳到死牢裡。
……但還是傳到了。
我看了一眼押解的闇夜騎士。
她聳了聳肩:「我也不知道。」
我沒有再問。
時間不等人,先送他上路。
我把絞索套上他的脖子,收緊。
靠近一些,在他耳邊低聲說:
「對,你應該知道為什麼吧。」
我停了一下。
「過去之後……再去找他說吧。」
我退開一步。
抬手示意。
他被拉了上去。
我閉上眼。
在架上綁上最後一個死結,我下樓梯時,三個人都還在顫抖。
看起來還會晃一陣子。
我抬頭望向王宮的窗。
殿下大概在上面看著吧——
不然,以她的性格,大概早就混在人群裡了。
視線往上時,和還在空中警戒的艾露爾對上。
我朝她比了個大拇指。
再比了一個手勢。
她停了一下,雙臂一交,表示沒看到,隨即轉身飛走。
……那應該是在宮裡了。
書記官靠過來,壓低聲音問:
「剛才那個……一直在喊『爸爸』,難道……?」
我頓了一下。
「應該是……失蹤了。」
她點了點頭,沒有再問,轉身去處理回執。
我看著上面的三個人。
從抽搐,到慢慢變成隨風擺動。
廣場的人潮也開始散去。
反正要看——還有七天。

看著他們失禁得差不多了。
我跟書記官打了個招呼,把梯子架上去。
爬上去,到湯瑪斯旁邊,拿出聽診器,貼上胸口。
沒有心跳。
「湯瑪斯.奎格已經死亡,死亡時間——」
我看了一眼手錶。
「十一時三十二分。」
書記官在下面開始記錄。
另外兩個,也照同樣程序確認。
完成之後,我下梯子,簽名。
剩下的,就是讓他們掛滿七天。
書記官整理文件。
「我先回去覆命了,妳的報告記得準時交。」
她在闇夜騎士護送下離開。
我也開始收拾工具。
準備回處刑室。
這時才注意到——
人群幾乎散了。
但還有一個人站在那裡。
沒有動。
我走過去。
他沒有看我。
只看著上面。
那三個還在晃的影子。
像燻肉一樣掛著的肉塊。
「妳知道嗎?」
他開口。
聲音已經沙了。
「我妻子……安娜。」
他停了一下。
「以前很愛笑。」
我沒有說話。
想起了一些東西,但是沒說。
「出事之後……」
「她就坐在那裡。」
「有時候哭。」
「有時候什麼都沒有。」
他吸了一口氣。
像是撐不住了。
「我只能抱著她。」
「一直抱著。」
他抬頭望著處刑台,
眼淚卻流了下來。
「再一次,我只想再看一次她的笑容啊......」
我伸手拍了拍他的肩。
沒有說話。
我們就這樣站了一會。
看著那三個在風裡搖晃的影子。
然後我轉身。
回處刑室。
傍晚,魔力燭台搖曳的處刑室裡,只剩我在整理報告。
門口忽然傳來敲門聲。
這個門很少響起敲門聲。
我抬頭看了一眼。
王女穿著闇夜的制服站在門外,手上還提著一個冷凍箱。
「殿下。」
「才不是,是神秘黑髮少女喔~」
我苦笑了一下。
……殿下又是那個在餐廳的殿下了。
她把冷凍箱放在桌上,我也順手把報告收起來。
然後,她從裡面拿出一個聖代。
「這個本來要拿給...那個...切娜的,不過多買了一個,我第一個就想到妳了。」
……這才不會是「多買」的吧。
我在心裡吐槽了一下。
「神罰祭三百年紀念限定大聖代」。
當年限定一百個。
排隊排到天昏地暗的那種......還不見得買的到。
現在——
被「復活」了。
......用這種方式。
殿下應該很滿意吧。

她沉默了一下,把銀匙遞過來。
「妳辛苦了。」
我接過,挖了一口。
很好吃。
甜得剛好。
——但心裡不是那個味道。
「對了,殿下,那個……蓋瑞斯的樣子——」
「我知道。」
她的聲音沉了下來。
「清理囚房的時候發現的。」
她遞給我一張紙。
上面只有——『父已逝』。
旁邊畫了一根手指。
指向讀字條的人。
那意思很明顯。
她看了一眼,語氣有點無奈:
「我等一下會去說說她們。」
「不過……他們確實踩到她們的底線了。」
她停了一下。
「只是——消息的時機,應該由我決定。」
語氣放緩了一點。
「紀律還是紀律。」
她站起來。
拍了拍衣擺。
「我還有一堆公文要簽,先走了。」
「等一下女官會來收,記得吃完。」
說完就離開了。
門關上之後,房間又安靜下來。
我看著她離開的方向。
再看了一眼桌上的聖代。
明明不是斬首,
我鼻子裡卻還是滿滿的鐵鏽味。
……大概還要花一點時間,才能嘗出甜味吧。
但是我還是挖了下去。
