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不安と体の不調を取り違える:試合前のお腹の痛みは、本当に体のせい?

大事な試合の前。急にお腹が痛くなる。気持ちが悪い。頭も痛い。

そういうとき、僕らはつい「体調が悪いんだ」と思う。でも最近、ある研究を読んでから、ちょっと考えが変わった。その不調、本当に体だけのせいなのか。

自分の体の中で何が起きているかを感じ取る力を、内受容感覚(interoception)という。心拍、呼吸、体の感覚。それをどれだけ正確に読み取れるか、という力だ。そしてこの力は、心の状態を読み取ることとも深くつながっている

不安は、ちゃんと「体の症状」になる

ちょっとドキッとする研究がある。

2006年の研究では、不安障害のある子ども128人のうち、96%が何かしらの体の症状を持っていた。一人あたり平均6個。多かったのは、落ち着かなさ、お腹の痛み、顔が赤くなること、動悸。

お腹が痛い。心臓がドキドキする。本当にそう感じている。仮病じゃない。でも、その奥に不安がある、というケースがとても多い。

研究者はこう考えている。子どもや10代は、まだ自分の気持ちを言葉にする力が育つ途中だ。だから、心のしんどさが、体の症状という形で出やすい。

ここで内受容感覚が関わってくる。体の信号を読む力がまだ育つ途中だと、「不安からくる体の感覚」と「本当の体調不良」を、うまく区別できない。緊張しているだけなのに、「具合が悪い」と感じてしまう。この切り分けこそ、感じ取る力の仕事だ。(ここは複数の研究をつなげた僕の整理で、一つの研究がそう言ってるわけじゃない。)

これは、アスリートにとってかなり大事な話だと思う。

対処を、間違えてしまう

なぜ大事かというと、取り違えると、対処を間違えるからだ。

大事な試合の前、「お腹の調子が悪い」と感じる。これが本当の体調不良なら、休むのが正解かもしれない。でも、もし正体が不安なら、休んでも治らない。むしろ呼吸を整えたり、気持ちを落ち着けたりするほうが、ずっと効く。

正体が分からないまま手を打つと、ずれる。体の問題だと思って動いても効かないし、心の問題だと気づければ、まったく別のやり方ができる。

「不安なのか、本当に体調が悪いのか」。「怖いのか、ただ疲れているのか」。これを切り分けること。それが、内受容感覚の仕事だ。

同じドキドキを、どう読むか

しかも、読み方しだいで結果が変わる、という研究の流れがある。

心理学者のジェレミー・ジェイミソンたちは、「体の反応をどう解釈するか」で結果が変わることを、実験で示してきた。2016年の研究では、試験前の学生に「心拍が上がるのは体が準備しているサインで、むしろ力を出すのを助ける」と教えた。すると、何もしない学生より、テストの不安が減って、成績も上がった。

ゴルフでも、同じことが確かめられている。Mooreらの2015年の研究では、プレッシャーのかかるパットの前に、この「体の反応は味方だ」という捉え直し(リアプレイザル)をした人は、自分の体の反応を前向きに解釈して、実際にパットの成績も良かった。

緊張で心臓がドキドキするのを、「自分はビビってる、ダメだ」と読むか。それとも「体が戦う準備をしてるサインだ」と読むか。同じ反応でも、読み方で意味も結果も変わる。

「メンタルが弱い」の、本当の正体

IMGには「Handling Pressure(プレッシャー対応)」という、メンタルの柱がある。大事な場面で力を出せるか、という力だ。

でも僕は、こう思うことがある。プレッシャーにうまく対応できない選手の中には、「メンタルが弱い」んじゃなくて、「体の信号を読み違えている」だけの選手がいるんじゃないか。

緊張のドキドキを脅威のサインと読めば、自分で自分を追い込む。でも同じ反応を「準備が整ったサイン」と読めれば、それは武器になる。リアプレイザルの研究が示しているのは、その切り替えが、訓練で変えられるということだ。

これは僕の意見だけど、メンタルの問題に見えて、実は「感じ取る力」と「その読み方」の問題だった、ということは、たぶんかなり多い。

だから今度、試合前にお腹が痛くなったら、一回止まって考えてみたい。これは体なのか、不安なのか。

正体が分かれば、打つ手も変わる。

正直、僕もまだうまく切り分けられない。練習中だ。

参考リンク

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