2026年版 アニメ原作マップ | 146本調べてわかった、アニメ原作はどこから来るのか。
アニメの原作といえば、漫画か、ライトノベル。だいたいそのどちらかだと思っていませんか。わたしも、ずっとそう思っていました。
ところが、この6月に流れてきたアニメ化の発表を並べていて、新しい発見がありました。イラストレーターのnecoさんが描き続けてきた、武装する女子高生のイラストシリーズ『重兵装型女子高生』が、2027年にTVアニメ化。原作は、漫画でも小説でもありません。1枚のイラストから始まったシリーズです。監督は『プリンセス・プリンシパル』の橘正紀さん。
連載終了から13年がたった完結済みの少女漫画『電撃デイジー』が、世界累計発行部数500万部を引っさげて2027年にTVアニメ化。
そして海の向こうでは、ストーリーモードを持たない人狼ゲーム『Among Us』のアニメシリーズが、Paramount+で6月5日に突然配信開始。
1枚のイラスト。13年前に完結した漫画。物語のないゲーム。
ぜんぶ同じ「アニメ化」という4文字で報じられます。でも、種である原作が採れた畑は、ぜんぶ違うんですよね。
わたしはこれまで、エンタメ企業の事業統括・プロデューサーをしていました。マンガ・ゲーム・アニメの事業を通じて「どの原作に賭けるか」は、ずっと見てきた問いです。その目で見ても、「アニメの原作は、いまどこから来ているのか」に数字で答えた資料を、見たことがありません。みんな体感では知っています。なろう系が増えたよね、Web漫画が強いよね。でも、しっかりした資料は見たことがない。
なら、自分で調べればいい。
というわけで、2026年に放送が始まるTVアニメのうち、その作品として初めてアニメ化された146本を全部リストにして、原作の出自で分類しました。比較対象として、ちょうど10年あまり前、2015年の132本も同じ基準で数えました。
出来上がった地図は、わたしの予想を、けっこうな部分で裏切っていました。
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2026年 アニメ原作の地図
結論から書きます。2026年に初アニメ化される146本の原作は、こういう畑から採れていました。

いちばん大きいのは紙の漫画誌で44本、30%。
次が小説投稿サイト(小説家になろうやカクヨムのように、誰でも作品を投稿できるWebサイトのこと)の42本、29%。
少年ジャンプ+やマガジンポケットのようなWeb漫画・漫画アプリが37本、25%。
この三つで全体の8割を超えます。
文庫の棚に並ぶ商業ライトノベルと文芸は、12本の8%まで縮んでいます。
で、この地図だけ見ると、こう思いませんか。
なんだ、紙の漫画誌が30%で、まだ一番大きいじゃないか。
そうなんです。単年の地図では、変化は見えないんです。10年前の地図と重ねたとき、はじめて景色が変わります。
ちなみに集計のルール:
Wikipediaの放送一覧の2026年8月8日時点の掲載分をもとに、続編や2期、リメイク、プリキュアのようなシリーズ年次作を除いた「その作品として初のTVアニメ」だけを数え、原作が最初に世に出た媒体で分類しています。またアニメは3か月ごとに放送枠が入れ替わって、その1区切りを「クール」と呼ぶんですが、10月からの秋クールは、まだ発表が出そろっていません。本数はこれから増えます。
※本記事は個人による収集・計測になるので、参考程度にご理解ください。
2015年との比較
2015年に初アニメ化されたTVアニメは132本。同じ基準で分類しました(出自を特定できなかったショート作品7本は、数えたことにせず除外しています)。同じ色で、10年前と並べます。

見てほしいのは、それぞれの数字より、緑の帯の厚みです。Web漫画と小説投稿サイトを合わせた「インターネット発」は、2015年には9本、全体の7%しかありませんでした。2026年は79本、54%です。
かわりに薄くなったのは、2015年に大きな顔をしていた二つです。商業ライトノベルの18%と、アニメオリジナルの23%でした。紙の漫画誌は31%で、ここは2026年の30%とほとんど同じ。紙だけが、10年間ずっと動いていないんですよね。
つまり2015年、アニメの原作はおもに三つの畑から来ていました。
紙の漫画誌の畑。
ラノベ文庫の畑。
そしてアニメスタジオのオリジナルの畑です。
一方で2026年、半分以上はこれらの畑を経由していません。
同じ「アニメ化」というニュースに見えて、種の採れる畑が、この10年でほぼ入れ替わっている。これが地図の一番大きな境目です。
商業ライトノベル原作アニメの減少
いちばん劇的なのは、小説です。

2015年、小説からアニメになった作品は26本。そのうち投稿サイト発は3本だけで、残りの23本はスニーカー文庫、ファンタジア文庫、GA文庫といった商業ライトノベルでした。編集部が新人賞で発掘して、イラストレーターをつけて、文庫の棚で育てる。あの王道のルートです。
2026年、小説からアニメになった54本のうち、投稿サイト発は42本。比率は78%です。10年で、商業レーベルと投稿サイトの立場が、そっくり入れ替わりました。
顔ぶれも少しだけ並べておきます。
なろう発の『穏やか貴族の休暇のすすめ。』
『魔術師クノンは見えている』
『領民0人スタートの辺境領主様』。
カクヨム発の『勇者刑に処す』『勇者のクズ』。
アルファポリス発の『最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?』。
なろうの女性向け姉妹サイト、ムーンライトノベルズ発のBL小説『異世界の沙汰は社畜次第』まで放送されます。
投稿サイトの中の、さらに細かい棚の作品まで、アニメ化が届いています。
数えていて、いちばん驚いたのがこれです。
「小説家になろう」を初出とする作品だけで、31本。
紙の雑誌でいちばん多かったのは週刊少年ジャンプと週刊少年マガジンで、それぞれ3本です。
10倍です。
もちろん、1誌と1サイトを並べるのはフェアではありません。なろうに投稿されている作品の数と、ジャンプの連載枠の数では、桁がいくつも違います。土俵がまるで別です。でも、「2026年にアニメの原作が採れた場所」として可視化すると、これが現実でした。
数字が等しく見える影響
なぜここまで一気に置き換わったのか。プロデューサー目線で見ると、答えは単純です。
投稿サイトの作品には、企画書に貼れる数字が、最初からついてくるからです。
たとえば『猫と竜』は、なろうに連作短編として投稿されて、短編としては異例の日刊ランキング1位(2013年9月時点)を取った作品です。『勇者のクズ』は第1回カクヨムWeb小説コンテストの受賞作。アニメ化の検討席に乗るころには、こうした作品は「読者がいることの証明」を4段も5段も積み上げています。
図(小説はこの10年で一番激しく入れ替わった)の下段は、その階段を1本だけ最後まで追いかけたものです。2026年4月に放送された『神の庭付き楠木邸』。なろうの連載開始から書籍化まで7か月、アニメまで5年。各段の数字を確認しながら上がっていったことになります。編集部がゼロから新人を当てにいく賭けと比べて、どの段でも降りられる。投資する側から見ると、これは設計として強いんです。
アニメ化の企画が動く場では、候補作の資料に必ず実績の欄がついてきます。発行部数、アンケート順位、SNSのフォロワー数。そして、その欄が空白に近い企画から順に、議題から落ちていきます。誰かが悪意で落とすわけではありません。アニメは製作委員会(1本の作品に何社もが一緒にお金を出す座組のこと)を組んでつくる巨大なプロジェクトで、数億円が動きます。「数字がまだない作品」に張る稟議は、どの会社でも、書いた本人がいちばん苦しいものです。
紙の時代、その数字は出版社・編集部の中にありました。重版の回数、誌面アンケートの順位。外からは見えない数字です。いまは、ランキングもPVもブックマークも、発掘されるより前から全員に見えています。誰でも、いつでも、無料で。
リスクの査定が、編集部の目利きから、先に見える数字に変わっていった。この視点で見ると、投稿サイトの29%はぜんぶ説明がつくんですよね。作品が良くなったから選ばれるようになったのではありません。選ぶ側が、良さを証明する数字を先に見られるようになった。それだけです。
漫画も半分はWebから
漫画も同じ方向に動いています。

紙の漫画誌は44本で、本数だけなら10年前とほぼ同じです。ジャンプの『あかね噺』『キルアオ』、週刊少年マガジンの『真夜中ハートチューン』、月刊少年ガンガンの『黄泉のツガイ』、花とゆめの『多聞くん今どっち!?』。紙の看板は、いまも最大の畑です(ジャンプの新連載がどれくらいの確率でアニメになるかは、214作品を数えた別の記事に書きました)。
変わったのは、漫画というくくりの中での勢力図のほうです。2015年、アニメ化された漫画の87%は紙の雑誌から来ていました。2026年は54%。残りの46%が、ジャンプ+の『正反対な君と僕』『マリッジトキシン』、マンガワンの『日本三國』、くらげバンチの『カヤちゃんはコワくない』、Souffleの『天幕のジャードゥーガル』といった、Web連載から来ています。
しかも、紙とWebの境界線そのものが溶けかけています。『デッドアカウント』は週刊少年マガジンで始まり、マガジンポケットに移籍したあとでアニメ化が決まりました。
白泉社は2026年の冬クールだけで、ヤングアニマルWebの『拷問バイトくんの日常』、マンガParkの『魔王の娘は優しすぎる!!』『シャンピニオンの魔女』と、Web側から3本のアニメ化を出しています。同じクールに花とゆめ発が2本ですから、紙の誌面とWebの誌面が、同じ編集部の両翼になっているわけです。
そしてそのWeb発の中に、さらに小さい単位が混ざり始めました。図の下に並べた4本です。
作者個人のXから書籍化に至ったものが3本、LINEマンガの投稿コーナー発が1本。編集部に持ち込まれる前に、タイムラインが先に読者を証明してしまった漫画たちです。2015年、この枠に当たるのはONEさんの個人サイト発『ワンパンマン』の1本だけでした。
ENHYPENと連動して累計2億ビューを記録した韓国発のWebtoon(スマホで縦にスクロールして読む形式の漫画)『DARK MOON -黒の月: 月の祭壇-』のように、原作が国境の外から来る例まで含めると、「漫画原作」という言葉の中身は、10年前とは別物だと言っていいと思います。
オリジナルアニメの減少
ここまでは、業界の人なら体感と合う話だと思います。わたしが数えて驚いたのは、アニメオリジナルの減り方でした。

2015年は29本、全体の23%もありました。『Charlotte』『プラスティック・メモリーズ』『コンクリート・レボルティオ』『ローリング☆ガールズ』。アニメスタジオ自身が新しい作品をゼロから生む枠が、およそ4本に1本あったんです。2026年は5本、3%です。イラストやキャラクター企画などの「その他」も、15%から3%へ落ちています。
おかしいと思いませんか。1枚のイラストがアニメになる時代なのに、イラストやキャラクター発の枠は、数の上ではむしろ減っています。
理由ははっきりしています。2015年は5分枠ショートアニメの全盛期でした。図の左に並べたとおり、ご当地キャラも、フィギュア企画も、ラジオ番組も、果てはパチンコ店のイメージキャラクターまで5分アニメになっていた。にぎやかで、ちょっとお祭りのような枠です。製作費が小さいぶん、数字の証明がなくても張れたわけです。
2026年、その枠はほとんど消えました。残った5本のうち2本は、キネマシトラスが設立15周年の看板として立ち上げた『さよならララ』と、1983年の『クリィミーマミ』から続くぴえろ魔法少女シリーズ6作目の『魔法の姉妹ルルットリリィ』でした。スタジオが社運や伝統を背負って張る、特別な席が中心になりました。
そのうえで、2027年の『重兵装型女子高生』がどう帰ってくるかを見てください。5分枠ではありません。フィギュアやプラキットの立体化を積み重ねて、ファンの数字を証明し終えたうえで、実績ある監督を立てた本格的なTVアニメの原作として帰ってきます。
イラスト発が増えたのではありません。イラスト発が、ショートアニメ枠から本流の原作の席へ、格上げされたんです。この地図で起きているのは量の変化ではなく、座席の変化です。
完結済み名作は「最強の安全資産」に
地図には、もうひとつ面白い筋が走っていました。
2026年の紙の44本の中に、連載をとっくに終えた作品の初アニメ化が8本も並んでいるんです。『花ざかりの君たちへ』は1996年連載開始、完結から22年。『少女コミック』で1995年から連載された『天は赤い河のほとり』はこの夏から放送中で、『LaLa』で1991年から連載された『彼方から』も秋から始まります。『LIAR GAME』も『神の雫』も『鉄鍋のジャン!』も連載終了済み。1995年の連載開始から31年たった『百鬼夜行抄』も初のTVアニメです。別枠で数えたリメイクも、北斗の拳、攻殻機動隊、魔法騎士レイアースなど6本並びます。
新しい種を探すだけでなく、書庫に眠っていた「読者の証明がとっくに済んでいる作品」を掘り起こす動き。2027年の『電撃デイジー』、世界累計500万部も、この筋の上にあります。配信が世界の既読層へ直接届く時代、完結済みの名作は、結末まで含めてリスク査定が終わっている、いわば在庫表の優良株です。ここは掘り始めると1本書けてしまうので、本記事は地図の筋として記すにとどめます。
次の10年のアニメ原作を、どう読むか
ここまで見てきたアニメ原作の地図は、実は1本の線でつながっています。
2015年の紙の雑誌、ラノベ文庫、オリジナル企画から、2026年の投稿サイトやWeb漫画、イラスト、完結済み名作まで。畑の名前やフォーマットは変わっても、つねに問われているのは同じです。
「数億円をかけてアニメ化に張る側は、どんな根拠で“この原作に賭ける”と決めているのか。」
この10年で、その根拠の置き場所がどう動いたのか。
そして、いまアニメの原作選びという行為は、何を測るものになっているのか。その答えをひと言で言うなら、
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