プロンプトだけを磨く時代は終わった。次は「AIへの引き継ぎ書」の話
このシリーズの読む順番
この記事は、前回の無料noteから一歩進んだ内容です。
前回は、AIの記憶だけに任せず、大切なことを自分でも残す話をしました。
まだ読んでいない方はこちらです。
無料note①
「AIって、放っといたら忘れるんです。——記憶させるだけで、相棒が変わる話」
https://note.com/keikeigo/n/nc96f112a3216
今回の無料note②では、
「では、何を残し、どうやって新しいAIへ渡すのか?」
まで進みます。
神プロンプトを探していた
少し前までの僕は、AIからいい答えが返ってこないと、プロンプトが悪いんだと思っていました。
もっと詳しく書かなきゃ。
もっと上手な言い方を探さなきゃ。
誰かが配っている「神プロンプト」を使えば、すごい答えが出るんじゃないか。
実際、いろいろ試しました。
でも、返ってくるのは「間違ってはいないけど、なんか違う」という答えばかり。
きれいに盛りつけてある。
でも、自分が食べたかった味ではない。
世界一の料理人に注文しているはずなのに、出てくるのは平均点のチェーン店のカレーでした。
そこで、ようやく気づきました。
問題は、注文の言い方だけではなかったんです。
プロンプトは「目的」と「自分」を結ぶもの
プロンプトは、魔法の呪文ではありません。
僕なりに整理すると、プロンプトの役割はこれです。
「何をしたいのか」と「自分は何者なのか」を結び、AIへ仕事を頼むための指示。
必要なのは、次の3つでした。
1. 目的
何を作りたいのか。
それを作って、どうなりたいのか。
2. コンテキスト
自分はどんな人なのか。
誰に届けたいのか。
何を大切にして、何をしたくないのか。
3. プロンプト
その目的とコンテキストを使って、AIに何をしてもらうのか。
どれか一つが薄ければ、答えもそれなりにしかなりません。
たとえば「ホームページを作って」と頼む。
これは手段の話です。
でも、本当の目的が「店の売上を上げたい」なら、必要なのはホームページではないかもしれない。
Instagramかもしれない。
Googleマップの口コミかもしれない。
既存のお客さんへの案内かもしれない。
目的を伝えず、手段だけを頼めば、AIはその狭い範囲で一生懸命答えます。
AIが悪いわけではありません。
材料を渡していないんです。
深めるべきは、呪文ではなく「目的」と「自分」
料理で考えると分かりやすいです。
「カレーを作って」は注文です。
でも、
誰に食べてもらうのか
辛いものは大丈夫か
予算はいくらか
冷蔵庫に何があるか
今日どんな気持ちになってほしいか
ここまで分かれば、料理人はずっと自分に合った提案ができます。
家族を喜ばせることが目的なら、
「今日はカレーより唐揚げの方がよくないですか?」
と、手段そのものを疑ってくれるかもしれません。
僕がAIに求めていたのは、言われた料理を作る人ではなく、目的から一緒に献立を考える相手でした。
そのためには、僕自身が目的と自分のことを渡さなければいけなかった。
でも、AIは勝手に全部覚えてくれない
会話を続けていれば、AIが自分を全部理解してくれる。
僕も、どこかでそう思っていました。
でも、AIの記憶や会話の引き継ぎ方は、サービスや設定によって違います。
前の会話を覚えていることもあれば、別のチャットではうまく引き継がれないこともある。
新しいAIを使えば、また自己紹介から始まります。
だから、AIの記憶だけに任せるのではなく、自分の情報を自分で持っておく必要があります。
そこで出てきたのが、ブリーフです。
難しく聞こえるので、僕はこう呼ぶことにしました。
ブリーフ=AIへ渡す「引き継ぎ書」
自分の背景、目的、価値観、得意なこと、苦手なこと、守りたいルール。
それを一枚に整理しておき、必要な部分をAIへ渡す。
プロンプトが「今日の注文」なら、ブリーフは「この店の方針と、お客さんの好みを書いた引き継ぎ書」です。
新しいAIが出ても、ゼロから始めなくていい
新しいAIが出るたびに、
「どれが一番すごいんだろう?」
と迷います。
でも、性能表や誰かの感想だけでは、自分に合うかは分かりません。
同じブリーフを渡し、同じ仕事を頼んでみる。
すると、
自分の言葉に近いか
目的を理解しているか
大切なルールを守るか
手段を決めつけず提案できるか
分からないことを勝手に埋めないか
を、自分の基準で比べられます。
ブリーフは自己紹介であると同時に、新しいAIを試すための共通テストにもなるんです。
AIに自分を合わせるのではなく、同じ自分をAIへ渡して、どのAIが自分に合うかを選ぶ。
AIが増えるほど、この考え方は大事になると思っています。
調べたら、作っている側も同じ方向を向いていた
ここまで考えたところで、
「これ、本当に僕だけの思いつきじゃないのか?」
と疑いました。
調べてみると、AIを作っている側では「コンテキストエンジニアリング」という考え方が広がっていました。
Anthropicは2025年9月、AI活用はプロンプトの言葉選びだけでなく、「どんな情報をAIへ渡すか」を整える方向へ進んでいると説明しています。
OpenAIの公式ガイドでも、AIへ渡す内容を「役割」「指示」「例」「背景情報」などに分けて設計する方法が示されています。
Microsoftの2025年の調査でも、これからAIと働く人に必要なのは、目的や背景を伝え、最初の答えをそのまま受け取らず、弱い部分を見つけて修正する力だとされています。
もちろん、これで僕の考えが絶対に正しいとは言えません。
ただ、自分で使ってたどり着いた方向と、作っている側が示す方向が重なっていた。
それなら、少なくとも一度は試す価値があると思いました。
AIに自分を説明していたら、自分が見えてきた
そして、ブリーフにはもう一つ大きな価値がありました。
AIへ自分を説明するためには、
自分は何を大切にしているのか
何が得意で、何が苦手なのか
誰に何を届けたいのか
何のためにそれをやるのか
何をしたくないのか
を言葉にしなければいけません。
普段は、頭の中で「まあ、こんな感じ」と済ませていたことです。
でもAIに伝えようとすると、「それって具体的には?」と考えることになる。
一つずつ言葉にすると、頭の中が整理されていきました。
僕にとってブリーフ作りは、AIの設定ではありませんでした。
自分の仕事、自分の目的、自分の判断基準を整理する作業だったんです。
AIに自分を理解させようとしていたら、先に自分が自分を理解できた。
これは、ビジネスをしている人ほど価値があると思います。
AIへの引き継ぎ書であると同時に、迷ったときに自分へ戻るための引き継ぎ書にもなるからです。
AIに使われる人と、AIを使う人
AIは、もっと便利になります。
自動化できることも増えます。
でも、AIの答えや提案を全部正解だと思っていたら、自分がどこへ向かっているのか分からなくなるかもしれません。
AIに使われる人と、AIを使う人。
その差は、操作の上手さだけではないと思います。
自分の目的と判断基準を持ち、AIの答えを「自分の目的に合っているか」で選べるかどうか。
ブリーフを渡せば正解が出るわけではありません。
でも、自分の軸が言葉になっていれば、AIの答えを疑い、比べ、選びやすくなります。
AIの性能が上がるほど、差がつくのは「AIをどれだけ知っているか」だけではなく、「自分をどれだけ説明できるか」なのかもしれない。
プロンプトはなくならない
だから僕は、「プロンプトは終わった」とは思っていません。
正確には、
プロンプトだけを磨けば、すごい答えが出ると思う時代が終わり始めている。
プロンプトは、これからも必要です。
ただし、それは魔法の呪文ではない。
深めた目的と、整理したコンテキストを結ぶための指示です。
深めるべきなのは、言い回しだけではありません。
自分と目的です。
そして、それをAIへ渡せる形にしたものが、僕の考えるブリーフです。
次は、プロンプトを集める時代ではなく、自分の引き継ぎ書を持つ時代なのかもしれません。
自分の引き継ぎ書を作りたい人へ
ここまで読んで、
「では、自分の何を書けばいいの?」
と思った人もいると思います。僕も、そこで止まりました。
自分のことは、自分が一番分かっているようで、実は一番書きにくい。
そこで僕は、一人で立派な自己紹介を書くのをやめました。
AIに一問ずつ質問してもらい、会話から自分の材料を引き出してもらったんです。
有料記事は、無料部分だけでも読めます
有料記事だからといって、開いた瞬間に料金がかかるわけではありません。
無料公開部分では、次のことを持ち帰れます。
なぜ神プロンプトを試しても平均点になりやすいのか
AIへ渡す「目的・自分の情報・依頼」の3つ
自分の答えが浅くなる原因を見つける考え方
有料部分で何が完成するのか
まず無料部分だけ読んで、自分に必要か確かめてください。
自分専用の一枚を作ってみたい方へ
実際にAIへ質問してもらいながら、自分の目的・経験・価値観・判断基準を整理したい方は、こちらにまとめています。
AIの答えがズレる人へ。自分専用の「AIへの引き継ぎ書」を作る方法必要でなければ、買わなくて大丈夫です。
→ 無料公開部分を読む:AIに自分を教えて、いつでも相談できる相棒を作る方法
購入すると完成するもの
有料部分では、AIに質問してもらいながら、あなた専用の「AIへの引き継ぎ書」を実際に一枚完成させます。
自分の全体像をまとめた「自分の台帳」
仕事ごとに使える「用途別の引き継ぎ書」
新しいAIを同じ条件で比べる確認表
必要な場面で使う、台所言葉つき実践プロンプト15個
売っているのは知識ではなく、自分を分かってくれるAIの相談相手を作る体験です。
3本の役割
無料①:大切な情報を残す習慣を作る
無料②:目的と自分を「引き継ぎ書」にする意味を知る
有料:AIに質問してもらい、自分専用の引き継ぎ書を実際に完成させる
この文章について
※これは、AIの専門家ではない僕が、半年以上遠回りしながら実際に使って気づいたことです。
AIの世界は変化が速いので、これも正解として押しつけるつもりはありません。
「本当にそうか?」と疑いながら読んでください。
僕自身も、そうやってAIと付き合っています。
参考にした公式情報
Anthropic, "Effective context engineering for AI agents"
https://www.anthropic.com/engineering/effective-context-engineering-for-ai-agents
OpenAI, "Prompt engineering"
https://developers.openai.com/api/docs/guides/prompt-engineering
Microsoft, "2025: The year the Frontier Firm is born"
https://www.microsoft.com/en-us/worklab/work-trend-index/2025-the-year-the-frontier-firm-is-born
※各社の説明をそのまま「ブリーフ」と呼んでいるわけではありません。専門領域でいうコンテキスト設計を、この記事では初心者にも伝わるよう「AIへの引き継ぎ書」と表現しています。
