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息子と学習塾〜フルオプションと、学費回収の男〜

我が子の習い事シリーズ、その最後の砦であり、最も長くお世話になったのが「学習塾」である。

※習い事についてはこちらをどうぞ。


息子の塾通いが始まったのは、小学校6年生の春。中学受験に挑戦するためだった。

私自身は昔から塾など通ったことがなく、「学校の勉強だけで十分だろう」と最初は反対していた。しかし、難易度の高い中学受験を突破するには入塾以外の選択肢はないのが現実だった。
息子もずいぶん迷ったようだが、「受験する」と決めたのは自分自身だ。最終的には自らの意志で、県内大手の進学塾への入塾を決めた。

通い始めて良かったのは、息子にとって「人生の楽しさ」が二倍に増えたことだ。

学校では基礎的な勉強を友達と楽しく学び、委員会やクラブ、行事など6年生としての活動を満喫していた。ここでは社会性や協調性がスクスクと育まれたと思う。

一方、塾で習う内容は高度で、息子の知的好奇心を大いにくすぐったらしい。受験勉強ゆえにテストの点数がシビアについて回るが、それすらもゲーム感覚で楽しんでいるようだった。学校とは種類の違う「知的な刺激の楽しさ」を、彼は貪欲に味わっていたのだ。

どちらもよい先生方に恵まれ、感謝の気持ちしかない。

そして無事に中学受験を終えた直後、息子は当然のような顔で言った。

「このまま中学校になっても塾に通い続ける」

正直、「やめてくれ」と思った。

無事に中学校に入れたのだから、学校の勉強だけで十分だろう。いや、何より中学生になると月謝が格段に跳ね上がるのが親としては切実につらいのだ。

しかし、息子から「どうしても通わせてほしい」と熱烈に懇願され、泣く泣く了承した。そこから息子のせっせとした塾通いは続いていく。

それにしても、塾というビジネスは実に商売がうまい。

毎月の月謝に加え、夏期講習や冬期講習は当然のように別料金だ。さらにその講習の中でも「お盆特別」「年末年始特別」、受験直前には「直前特別講習」や「受験合宿」など、これでもかとオプションを追加してくる。

「少しでも学力を伸ばして合格させたい」という親子の切実な心につけ込む、完璧な戦略である。

すっかり「塾の信者」と化した我が家は、塾の提示するオプションをほぼフルコースで買い揃え、見事なまでに相手の思うツボにはまっていた。まあ、そのおかげで無事に高校受験も突破できたのだから、良しとするべきなのだろう。

……だが、息子の塾狂いはそこで終わらなかった。

高校生になっても、彼は当たり前のように塾へ行き続けた。
「どんだけ行くんだよ」と呆れ果てたが、もはや我が家にとってはそれが自然の摂理のようになっていた。さすがに受講する教科や日時は絞ったものの、それでも「よく通うなあ」と感心(あきれ)していた。

残念ながら大学受験では第一志望合格とはいかなかったが、小学校6年から高校3年まで、実に7年間も同じ塾にお世話になったことになる。

それほどまでに思い入れの強かった塾である。どんな感動的なフィナーレが待っているのかと思いきや、7年間の通塾の終わり(卒塾)は、「電話一本」であっけなく完了した。あまりの拍子抜け感に、「これで終わりだってさ」と妻と二人で笑ってしまったほどだ。

しかし、物語はここでは終わらない。

息子は7年間の通塾生活の中で、すっかりその塾の職員の方や講師の方たちと深い人脈を築き上げていた。

大学生になり、京都から帰省する時期になると、息子はある場所へと向かう。
そう、かつて自分が通い詰めたあの塾だ。彼は現在、夏期講習や冬期講習の非常勤講師として、堂々と教壇に立っているのである。

息子いわく、「他のバイトに比べてめちゃくちゃ給料がいい」らしい。

かつて私たちが胃を痛くしながらせっせと払い込んだ高額なオプション代を、今度は息子が講師として自分の手で回収しているのだと思うと、おかしくてたまらなかった。

……まあ、親である私たちには、その回収したお金から1円もバック(還元)はないのだが。

やっぱり彼はどこまでも逞しく、抜け目ない男である。

※そんな息子の育て方のご参考になれば幸いです。

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