なりきり音読 第3回|これが最強の素材だ――AFNという名の生英語
映画の英語が、聞こえるようになる
ネイティブの英語が聞き取れない。
映画を見ても字幕がないとわからない。会議で外国人が話していても、半分も聞き取れない。TOEICのリスニングは何度やっても伸びない。
英語学習を続けてきたのに、耳だけが追いつかない。そういう人に、今日は一冊の教材を紹介する。
これを使い込んだ先に、何が起きるか。
TOEICのリスニングがお遊びに感じるようになる。映画の英語が聞こえるようになる。ネイティブとの会話でも怖くなくなる。
しかも、2000円もしない教材の話だ。
好きな俳優を探したけど、見つからなかった人へ
第2回で言った。好きな俳優を真似ろ。
渡辺謙の英語。菊地凜子の英語。ああいう「真似したい」と思える声を見つけて、なりきって真似る。それがなりきり音読の本質だ。
でも、こういう人がいるのはわかっている。
探したけど見つからなかった。日本人俳優がハリウッド映画で英語を話している場面は数が限られているし、スクリプトが揃っているものとなるとほぼ存在しない。自分で探そうとしたら、すぐに壁にぶつかった。
そんな人のために、今日の話がある。
AFNとは何か
『AFN最強の生英語リスニング スポット・アナウンスメント』(アルク刊)AFNとはAmerican Forces Networkの略だ。旧FEN、米軍放送網のことである。本書には、AFN東京のラジオ放送で実際にオンエアされた「お知らせ」の音声が、80本収録されている。
バリバリのネイティブ英語だ。アメリカ人によるアメリカ人のためのラジオ放送だから、スピードにおいても語彙においても手加減が一切ない。gonna、gotta、wanna、ain'tといった口語表現やスラングが、ナチュラルスピードで飛び交う。教科書には載っていない、本物の英語だ。
声のバリエーションが圧倒的だ。安全、健康、社会、日常生活、家族、マナー、教育・キャリア、余暇と8つのジャンルにわたり、アナウンス、モノローグ、ダイアログ、寸劇、パロディーと声のスタイルも多彩だ。老若男女。
80本の中に必ず「この声になりたい」と思える声がある。
スクリプト、和訳、解説がすべて付いている。
1分弱という設計が、続く理由だ
AFNのもう一つの強みを言っておく。
一本の音源が、1分弱だ。
ディクテーションとして取り組む場合、1日1本は難しくても、1週間で1本はやりきれる長さだ。なりきり音読として真似る場合も、1分弱はちょうどいい。2分、3分になると続けるのがつらくなる。1分弱だから何度でも繰り返せる。何度でも繰り返せるから、身体にしみ込む。
80本の「1分」が揃っている。それがこの教材だ。
私がFENを聞いていたころの話
私はかつて、深夜のFENラジオを聞き続けていた。チャーリー・ツナのDJ、映画のサントラに流れるCB無線の声。好きな声を見つけては、狂ったように真似した。
でも当時、スクリプトはほんの一部しかなかった。アルクからFENガイドという雑誌が出ていて、一部の音声にはスクリプトがついていた。でも全部が揃っているわけではない。聞こえた音を頼りに、耳だけで追いかけるしかなかった。それでも続けたのは、ただ好きだったからだ。
そのFENが、スクリプト・和訳・解説まで完全に揃った教材になって戻ってきた。
手にした瞬間、思った。This is it. これを待っていた。
あの頃の私がこれを持っていたら、どれだけ違っただろうと思う。
正直に言う。ハードだ。でも、それでいい
一つだけ先に言っておく。
AFNは、初心者にはハードすぎる。最初の一本を聞いただけで嫌になるくらい難しい。FENを何年も聞き続けてきた私でさえ、今でも聞き取れないところがいくらでもある。
でも、それでいい。
聞き取れないところがあるということは、まだ伸びる余地があるということだ。第2回で言った。失敗そのものが学習データになる。AFNはその「失敗できる教材」として、何年でも使い続けられる。
ただし、英語を始めたばかりの人がいきなりここに向かうのは早い。入口が別に必要だ。
次回はそこを書く。
今日やること
AFNがどんな教材か、まず確認してほしい。
書店で手に取るか、アルク公式サイトで目次を見てほしい。Safety、Health、Society、Daily Life、Family、Manners、Education & Careers、Leisure。8つのジャンル、80本のスポット・アナウンスメント。
タイトルを眺めるだけでいい。自分が興味を持てそうなジャンルが一つ見つかれば、それで十分だ。
ちなみに、私は一銭もお金をもらっていない。純粋にこの教材を薦めたいだけなのだ。それほど素晴らしい、奇跡の教材なのだ。
TOEIC 600点前後の人には、ぜひ挑戦してほしい。
ある程度の英語力はある。でも伸び悩んでいる。そういう人がぬるま湯の教材をいくら繰り返しても、耳は育たない。本物のスピードで、本物の語彙で、本物の声に叩きのめされる経験が必要だ。
社内の英語サークルに、TOEIC500点台から始めた40代の同僚がいた。
生きた英語には一刻も早く触れるべきだ。そう信じていた私は、彼にAFNを薦めた。返ってきたのは「難しすぎる」という拒絶だった。
それから1年。彼は700点を突破した。しかしそこからリスニングが止まった。400点の壁が、どうしても越えられない。
私はもう一度AFNを薦めた。
今度は逃げなかった。彼はディクテーションをやり遂げた。
さらに1年後、リスニングは400点を超え、トータルスコアは800点に乗った。
500点台の彼にはまだ早かった。700点を超えてから、AFNは彼にとって最強の武器になっていた。
TOEICが600点あるなら、勇気をもって飛び込んでほしい。ぬるま湯の教材でいくら耳を撫でても、本物の力は育たない。本物の音とスピードに叩きのめされる経験が、耳を育てる。
最初は難しいと思う。しかし、本物の英語に少しでも早く触れて欲しいと思っている。くじけてもいい。700点になってからまた再開すればいい。
次回は、初心者向けの入口となる教材を紹介する。AFNはさすがにハードすぎる。では、どこから始めればいいのか。
塾講師として10年以上、社内英語サークルで30名以上の同僚に英語を教えてきた経験から、自信を持って勧める一冊がある。
このシリーズでは、なりきり音読の具体的な方法を順番に書いていきます。第0回から読むと理解が深まります。
◀ 前の話:[なりきり音読 第2回|真似る前に、聴け――ディクテーションという武器]
▶ 最初から読む:[なりきり音読|第0回 リスニングはこれしかやっていない]
