リハビリ(332日目):高知旅行記④
誰が興味あんねん、な旅行記4日目。
前回はこちら↓
●あかおか
漢字で書くと「赤岡」。
赤岡町はかつて日本で最も面積が小さい市町村だったが
2006年に周辺の町村と合併し、香南(こうなん)市となった。
近くを走る土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の駅名は
平仮名で「あかおか」。「あたおか」にしか見えない。
「ごめんなはり」も京都人のいけず言葉のように見える。
今日はまずその「あかおか」にある幕末絵師の美術館に寄ったのだが、
馬路村からの長距離移動で皆、マジで尿する5秒前状態になっており、
施設に入るや否や、入口横にあったトイレに全員駆け込んだ。
(時速185kmで下道をかっ飛ばしていたら良かったのかもしれない)
無事に排尿を済ませ、きもちくなった気分で入場券を買おうと窓口へ。
すると、カウンター内のスタッフが
「なんやお前・・」みたいな謎の怪訝な目で見てくる。
そこでようやく、ここは美術館ではない、と気づいた。
美術館というより役所感が強い。後で確認すると商工会議所だった。
月曜の朝に職場になだれ込んできた家族が勝手にトイレを使う。
スタッフの謎の怪訝な目は「正常性バイアス」そのものだった。
私は当然知っていましたよというテイで美術館の場所を聞くも、
今日は休業日だと言われ、爽やかに次の目的地へと向かった。
●龍河洞
予定が変わったのでとりあえずやってきた。
炭酸を含んだ水が長年かけて石灰岩層を削り形成した洞窟。
龍泉洞(岩手)、秋芳洞(山口)と並び、日本三大鍾乳洞とされる。
だいたい、三大○○というのは、3~5位あたりの弱者が
声高に主張するいかがわしいイメージがあるのだが、
こと鍾乳洞に限ってはTOP3のメンツは変わらない。
AIが言っていたから間違いない。
洞窟入口で「サイフ車に置いてきた!」
「入場券買えないかも!」と老夫婦が揉めていた。
金を貸そうかと思ったが、寸借詐欺だと困るのでやめた。
洞窟内部には大小様々な「石柱・つらら石・石筍」がある。
鍾乳石が1cm成長するのに100年かかるそうだ。
進んでいくと、洞窟内で出土した弥生式土器が鍾乳石と同化した
「神の壺」があった。
出口付近には、「神の壺」を真似て、普通の壺を置いといたら
同じように鍾乳石と同化するかの実験をしていた。
すでに実験開始(昭和12年)から88年が経過していた。
ピッチドロップ実験や暗黒バエ実験など、
長期間にわたる実験はよくわからんロマンを感じる。
もはや続けることそれ自体が大事。
皇室もそんなもんなのかもしれない。
壺は88年の年月でそれなりに同化していっているように見えた。
弥生時代からの「神の壺」の価値が矮小化しないか勝手に心配になった。
往復の参道にはお土産物屋が並んでいた。昭和の光景。
この辺りは刃物が有名らしい。
入口で会った寸借詐欺老夫婦が店の人から包丁を勧められ、
「現金車に置いてきた!」
「スマホで払えますよ!」
「そんなんやってない!」
「駐車場近くに私の2号店があるのでそちらで!」
と応酬していた。エイリアンVSプレデター。
ふらりと立ち寄ってみたが、よいところだった。
室戸の激しい波には、キンメダイが住み、
人のいない馬路の山には、ユズが育ち、
光のない洞窟では、コウモリとカマドウマが暮らす。
人間とはなんとちっぽけなものか。
日々尊大に生きている私には時にこのようなリセットが必要だと感じる。
●沢田マンション
沢田マンション、通称「沢マン」。
日本の違法建築物の最高傑作。
工事業者でも何でもない素人(沢田夫婦)が
「マンションを作りたい!」という熱い想いだけで
設計図も役所の許可も無しに勝手に独力で建築した
鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階地上5階建て(一部6階)、
約70世帯・100人が居住するマンション。
増築に増築を重ねた姿から、軍艦島と共に「日本の九龍城」とも呼ばれる。
一介の珍スポット愛好家としては、参拝せざるを得ない。
沢田マンションは写真でしか見たことがなく、
てっきり田舎にあるのかと思ったら、想像より街中に存在した。
目の前にスタバもはるやまもYAMADAも小僧寿しチェーンもある。
道路の反対側にも様々な商業施設があり、普通に便利な立地だ。
どこが受付なのかわからず悩んでいたら
オーナーの沢田裕江さんが外出から戻ってこられた。
見学希望の旨を伝え、MAPを購入。注意事項を聞いて出発。
曲がりくねるスロープ、ダンジョン・魔境のような建物構造。
突然現れる沢山の隠し階段。
通路にあるグレーチングの上を歩く時は落ちないかハラハラする。
入口でMAPを購入し、それを見ながら屋上まで歩いていくのだが
行く前は「マンションを見て何の意味がある」と言っていた長男も
いまや真剣に探検している。
最上階には池があり沢山の動物達がいた。豚の「ぷー太」も。
更にそこから屋上に上がると、一面の畑と巨大クレーン。
地下には手作り駐車場。高知初の地下駐車場らしい。
次男はその地下でドブにはまり、両足がドブまみれになった。
久しぶりにドブ臭い人を見た。
いやあしかし、思ったより見ごたえがあった。
多くの珍スポットは高齢化により消えゆく運命にあるが、
沢田さんの思想は若い世代に受け継がれ、
マンションの枠組みを超えた生活共同体として息づいている。
これからも皆の力で残していってほしい。
沢マンの詳細は色々と記事があるので興味がある人はご覧ください。
建設の経緯もあってクセ強のオーナーさんだろうと身構えていたが
全くそんなことはなく、丁寧に暖かく見学者を受け入れてくれた。
(当初家族で沢マンに泊まろうかと思ったが、反対されそうなのでやめた)
帰り際に、沢マン絵本と沢マンボールペンを買い(残念ながら沢マンTシャツは品切れだった)、オーナーからは見たことない小さいミカンを貰った。
溢るるホスピタリティ。車内で食べたがとても甘かった。
●本日のホテル(4泊目)
沢マンに泊まるのは家族に拒否されそうだったので、
個人的には気乗りしなかったが、OMO7高知by星野リゾートへ。
この地にあった日航ホテルを乗っ取っただけあり、立派な建物だった。
ようやく周辺に飲食店があるエリアに来たので素泊まりで。
さて、高知には「べく杯(可杯)」というものがある。
盃の底に小さい穴が開いていたり、底が平らでなかったりで、
酒を飲み干さないと机に置けない盃だ。
サイコロで出た目の盃(容量が異なる)を飲んでいく土佐の酒席文化。
(中川政七商店の記事によるとそこまで古い文化ではなさそうだが)
アル中の私も20代の頃に1セット買って家に置いている。
ホテルの1階スペースでは、17時から「べく杯」体験をやっているらしい。
酒が飲めるなら、と17時過ぎに行ったら既にグループが盛り上がっていて
単身の私は入れず、寂しい思いを持ちながら遠くから眺めていた。
ひとしきり終わった後に飲めるかなと近づいてスタッフの人に尋ねたら
酒ではなく、地元の乳酸系飲料「リープル」をべく杯に入れて、
真似事をしていただけのようだった。なんだそりゃ。
大企業のコンプライアンス遵守の方針として、
べく杯で一見の客に酒を飲ませることがリスクなのはよくわかる。
でもそのいわば「アルハラ文化」が土佐文化じゃあないのか。
文化を自ら否定しているようで(かつただ酒も飲めず)少し悲しかった。
高知の人は「アルハラ文化」と言われると「それは違う!」と怒ると思うが、
AIは現代の基準であればアルハラに該当するといっていた。
そして、否認は典型的なアルコール依存症の症状である。
(「AI&否認」の現代における最強論理)こういうところが星野リゾートらしさで、私が気が乗らない部分でもある。
汚物は消毒思想というか。沢マンとは違う思想。
とはいえスタッフは皆若く気持ちのいい接客をしているし、客室も奇麗で
シティボーイの子供たちはここは素晴らしいホテルだ!と喜んでいる。
夜には「よさこい」のショータイムがあり、スタッフが笑顔で踊っていた。
星野リゾートでは、夜に地元の伝統の踊りのイベントをよくやっているけど
踊らされている彼ら(踊りのプロではなく普通のホテルスタッフ)のステージ上での笑顔を見る度に、それは本当の笑顔なのか、それに相応しい対価をもらっているのか、などを思い浮かべてしまう。
それにしても、「よさこい」は全国に広まっている。
一時の流行ではなく、一つの日本文化として根付いた感すらある。
京都でも大学生が練習している風景をよく見かける。
完全に偏見だが、私は「よさこい」を踊る人と仲良くなれる気がしない。
●夜の高知
外出して、近所の居酒屋でカツオなどを食べた。
やはり高知のカツオは美味しいと思う。大きくて臭みがない。
丁度戻りガツオの時期であり、味も濃厚だ。
食後、はりまや橋を通り、有名な「ひろめ市場」にも立ち寄ったが、
人がいっぱいで席取りとか個々の店で注文とか何分待ちとか
私はこういう所はもう無理だな、と心から思って退散した。
「よさこい派」には楽しい所なのだと思う、たぶん。
飲み足りなかったので、家族をホテルに置いて
近所にあった個人経営ぽい店にふらりと立ち寄ったが、
酒にも食べ物にも地元感がなく、
唯一の地元の鶏串と唯一の地元の酒を飲んで退散した。
老夫婦がやっていて悪くない感じではあったのだが、
酒の飲めない店主だったのかもしれない。
一人酒で自分の直感を信じ、失敗するのも良い経験ではある。
繁華街から少し離れている立地だったのでもう一軒は諦めて
帰り道にファミマで酒とおつまみを買って戻った。
今日の運転中、突然うんこが漏れそうになった時にも
すぐに現れた海沿いのファミマに助けられた。
近年、生活の1割くらいは、ファミマのお陰だいう実感がある。
そろそろファミマ会員になった方が良いのではないかと真剣に思った。
5日目(最終日)へと続く。
