自然は、答えを教えない。だから、自分の声が聞こえてくる――森で出会った、小さな倍音獣ちゃん
森を歩いていると、不思議なことがあります。
少し前まで頭の中をぐるぐる回っていた考えが、静かになっていくこと。
「あの言い方でよかったかな」
「もっと違う伝え方ができたかもしれない」
「相手を嫌な気持ちにさせていないかな」
そんな言葉が、すぐに消えるわけではありません。
けれど、木々の間を吹き抜ける風の音が、頭の中の声と一緒に流してくれるように感じることがあります。
木漏れ日が揺れる。
遠くから、鳥の声が聞こえる。
足元の土が、少しやわらかい。
気づけば、浅くなっていた呼吸が、少しだけ深くなっています。

自然は、不思議です。
「大丈夫」
とも言いません。
「もっと頑張って」
とも言いません。
「早く立ち直って」
とも言いません。
ただ、そこにあります。
風が吹き、
雲が流れ、
雨が降り、
やがて、また光が差す。
自然は、答えを教えてくれません。
けれど、答えを急がなくてもよい時間を、そっと渡してくれます。
だからでしょうか。
自然の中にいると、
「どうすれば正しいのだろう」
という問いよりも、
「私は、本当はどう感じているのだろう」
という声が、少し聞こえやすくなる気がします。
森の中で出会った、小さな子
少し前、森の中で、不思議な子に出会いました。
青や紫の結晶をまとった、小さな珍獣ちゃん。
木漏れ日の届く場所に、静かに座っていました。
近づいてくるわけでもなく、
逃げていくわけでもありません。
ただ、こちらを見ています。
「こんにちは」
声をかけても、返事はありませんでした。
それなのに、不思議と落ち着きました。
何かを言ってもらったわけではないのに、
「ここにいてもいい」
と思えたのです。

私は心理士として、これまで多くの方のお話を聴いてきました。
苦しいとき、人は答えを探します。
何が正しかったのか。
どこで間違えたのか。
どうすれば嫌われなかったのか。
けれど、答えを急ぐほど、自分の気持ちが見えなくなることがあります。
悲しかったこと。
怖かったこと。
本当は分かってほしかったこと。
自分なりに、何かを守ろうとしていたこと。
そんな気持ちが、「正しいか、間違っているか」という問いの奥へ隠れてしまいます。
森の木は、
「正しく伸びなさい」
とは言われません。
曲がりながら育つ木もあります。
途中で枝を失いながら、それでも新しい芽を出す木もあります。
冬の間、何も変わっていないように見えても、土の中では次の季節の準備が進んでいます。
人のこころも、自然と少し似ているのかもしれません。
すぐに答えが見つからなくても。
立ち止まる日があっても。
安心できる時間を重ねながら、少しずつ育っていく。
そんな力を、もともと持っているのかもしれません。
自分で自分を癒す力
倍音獣ちゃんは、私を助けようとはしませんでした。
代わりに戦ってくれるわけでもありません。
「こうした方がいいよ」
と答えを教えてくれることもありません。
ただ、隣にいます。
私が風の音に気づくまで。
自分の呼吸を思い出すまで。
「本当は、少し疲れていたのかもしれない」
と、自分の気持ちへ戻るまで。
その姿を見ながら、ふと思いました。
人は誰かに癒してもらうだけではなく、
自分で自分を癒していく力も持っているのかもしれない。
自然が、季節を急がないように。
花が、誰かに咲き方を教わらなくても咲くように。
私たちのこころにも、自分の力で回復しようとする働きがある。
ただ、その力を思い出すために、
安心して立ち止まれる場所や、
静かに見守ってくれる存在が必要な日もあるのだと思います。
森に残してきたはずなのに
帰る時間になりました。
「また会えるかな」
倍音獣ちゃんに尋ねました。
もちろん、返事はありません。
その子は、木漏れ日の下で、静かにこちらを見ています。
私は手を振り、森をあとにしました。
あの子は、森に残してきたはずでした。
けれど、帰り道。
胸の奥に、小さな光が残っているような気がしました。
「今日は、ここまででいい」
「すぐに答えを出さなくてもいい」
「まずは、自分の気持ちを聴いてみよう」
そんな言葉が、誰かの声ではなく、自分の中から聞こえてきたのです。
もしかしたら、倍音獣ちゃんは森ではなく、
私のこころのどこかに、静かに座ってくれたのかもしれません。

あなたは最近、自然の癒しを感じたことがありますか。
遠くの森へ行かなくても、
空を見上げたとき。
窓から入る風を感じたとき。
道端の花に気づいたとき。
雨の音を、少しだけ静かに聞けたとき。
ほんの数秒でも、呼吸がゆるんだ瞬間があったなら。
その時間は、あなたのこころが、自分のところへ戻ろうとしていた時間なのかもしれません。
自然は、私たちを変えようとはしません。
ただ、そこにあります。
そして人のこころにも、
自然と同じように、
自分で自分を癒そうとする力があるのかもしれません。
今日は少しだけ、
そんな自分の力を信じてみてもよいのかもしれません。
なんだか今日は、自分にやさしくしてもいい気がする。
そんな小さな感覚が、あなたの中にも残りますように。
🌿関連記事・ご案内
🌿ちび創作大賞について
この記事は、 #ちび創作大賞 の参加作品です。
今回は、ヨシダさん主催の「ちび創作大賞」で発表された、山奥AI研究所さんのテーマ「自然」に寄せて書きました。
自然の中で感じる静けさと、こころが少しずつ自分へ戻っていく時間を、
小さな物語にしています。
素敵な企画をありがとうございます。
📌 ヨシダのちび創作大賞|創作イベントの記事はこちら
📌 ちび創作大賞「山奥さんブース」はこちら
🌿倍音獣ちゃんを生み出してくださった、めじゅさん
物語に登場した「倍音獣ちゃん」は、クリエイターのめじゅさんが、私の想いを受け取りながら生み出してくれました。
青や紫の結晶をまとい、答えを急がせず、静かにそばにいてくれる存在です。
倍音獣ちゃんが、これからどのような物語を歩いていくのか。
私自身も楽しみにしています。
📌 めじゅさんの固定記事はこちら
🌿人間関係の中でも、自分のこころへ戻りたい方へ
自然の中で深呼吸をするように、
人との関係の中でも、自分のこころへ戻る練習ができたら。
そんな想いから、新しい場所をつくりました。
会話やLINEのあと、
「あの言い方でよかったかな」
と考え続けてしまう方へ向けた記事です。
📌 会話やLINEのあと、「あの言い方でよかったかな」が止まらない方へ



#ちび創作大賞
#自然
#AIで遊ぼう
#エッセイ
#自己理解
#自責ではなく自己理解へ
#Iカウンセリングルーム
#倍音獣
いいなと思ったら応援しよう!
もし、応援したいと感じていただけたら。
その気持ちを、そっと置いていただけたら嬉しいです🕊️
あたたかな応援を、ありがとうございます。