膨大なDNAデータの中にだれも気づいていない箇所を見出してひとり悦に入る

はじめに
このところこれまでやってきた生命科学の研究のなかで、未解明のまま棚に上げていたものをひとつずつ手元に引き寄せて見直している。その糸口は、近年たいへん充実してきた遺伝子やタンパク質のアミノ酸配列データベースの情報。だれでも自由にアクセスできてデータを取り出せる。もちろん自分たちからも情報を解析した後に提供して公開している。いわば持ちつ持たれつの関係が成立する。
そこから誰もが気づいていない新たなことを月にひとつぐらいのペースで見つける。それがつぎの実験へのヒントをくれる。
きょうはそんな話。
検索の日々
遺伝子(DNA)やタンパク質のアミノ酸配列データベースの情報と、手持ちの蓄積して未だ論文に仕上げていない内容を照らし合わせる作業を行っている。過去20年余りで置いたままの未発表のデータは結構な量。そのひとつひとつについて、データベースの情報との照合を進める。
当時は気づいてなかったことが、これだけ世界中から情報が集積することで新たな意義を生じていると日々感じる。その大もとの検索システムの能力もさることながら、一度に得られる検索結果の情報量も膨大。それを見つめているとあっという間に時間が過ぎる。
発見の日々
すると、見慣れない配列情報に出くわすことがある。日々これだけのタンパク質や遺伝子(DNA)の配列を並べて見渡すと、特異な羅列や何を表しているのだろうというところに目が行く。まさに暗号解読といっていい。暗号を解く鍵や手がかりを探す。これもさまざまなものを見続けたからできる作業。
こうしていくつも並べていき、見慣れたはずの手元のアミノ酸配列と見比べると、その中に「おやっ」と変わったものが見つかることがある。重要なはずの部位に変異が入っていたり、特別な何かの目印だろうかというアミノ酸残基の連なりを見出したりする。
未知の場合
それらは既に知られたシグナルや機能部位の場合が多いが、中には未だ知られていない数残基からなる特異な配列が見つかる。そんな場合は心当たりの論文を検索して、それに関連する機能に関するものかどうか調べる。
そこまでの作業について、見つけた経緯などをノートに記しておく。後に「あれだ」と改めて気づき、そんなノートの記述との照合を行えて、結論に辿りつくことがある。そうしたメモや文献を記しておくと、何度も行う確認の際に役立つ。場合によっては新たな仮説を立てたり、実験を計画したりの手がかりになる。
ひと月に1回
ほぼそんなやりかけの対象の見直し作業をひとつずつ進めると、ほぼひと月に1回ほど新たな発見に出くわす。この頻度はほぼ均等であり、それも興味深い。
それだけ過去にやりかけて手に負えないとか、将来にまわそうとしたものはかなりの数になるということ。その意味ではどこから出掛けても良いし、どれもが捨て難い。たしかに見直すたびに少なからず発見がある。それなりに良い内容を含んでいるし、独自性もある。それぞれ続きをやる価値があるとの自負がある。
おわりに
こうした研究シーズの蓄積は過去の資産といえる。まだ大学の運営費が多少でも研究に費やせていて、「極端な集中」が起きていなかった名残といっていい。何しろ研究にあてがう費用は自前で充てるしかなく、これはどうしようもない。
発表したい良質な学術雑誌への投稿の費用は、ひとつに数十万円単位といずれも高額で、自費(別途自ら働いて得た収入)を充てるかどうか悩ましく、その点でも苦慮している。ノーベル賞授賞者ですら研究資金集めに苦慮するほどだから、研究者の端くれの私はなおさら研究で自立するつもりならば、なおのことその点での努力は怠れない。民間では当たり前の新規事業の運営や資産運用などと両立させて真剣にやらねばならない。
このまま埋もれたままになってしまうのだけは惜しいので、その方策をいずれもやりながら考えている。
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