闇 402(森友問題と連繋寺編)
闇 402(森友問題と連繋寺編)

2025/11/28 fry
前回の章
二千二十五年十一月二十八日、金曜日赤口。
目を覚まし目の前のモニターを見る。
無職となった今ではやる事は一つだけしかない。
ひょっとしたらギネス記録で世界一になるかもしれない作品を書いているのだ。
そこへ自身の馬鹿さ加減を歴史に残す訳にはいかない。
その前にベランダへ行き、セブンスターへ火をつけた。
もうすっかり寒い。
俺もいつまでこの自称俳優親族所有のマンションへいるんだかな……。
大久保駅から徒歩一分と立地はいいが、代わり映えのない生活しかしなくなった俺にとって、今や住む場所は生活さえできればどこでもいい。
インターネットが使え、目の前にパソコンさえあれば他に望むものはなかった。
闇シリーズの執筆。
ようやく昨日で四百一章を完成し、何とか先を書き進められる事ができたのだ。
気付けば俺も五十四歳。
もう若くはない。
今書いている部分が二千十七年四月へ入ったばかり。
本当に現在に追い付けるのだろうか?
最近ただでさえ脱線が多くなってきたのは自覚している。
文明の利器AI。
この機能を使い、闇シリーズ関連とはいえ本筋からズレてきていたと指摘されたら否めない自分がいた。
今年の七月に俺は裏稼業を引退した。
理由は一つだけ。
インターネットで今執筆中の闇シリーズをあげるなと言われたから……。
親父の体調がヤバい、心筋梗塞の後遺症で右足の痺れが限界。
両方とも嘘ではないが、それを理由にインカジ『レディー』からは奇麗に辞めた。
自身の頭の中にあったのは立つ鳥跡を濁さず。
世話にはなったのだ。
だからとにかく綺麗に辞めようという事しかなかった。
二千二十一年十月二十五日に起きた二度目の心筋梗塞で死に掛けてから始まった種類の違う地獄めぐり。
コロナワクチン打った翌日に心筋梗塞。
のたうち回るも自分一人で何とか痛みをクリアした俺。
背中や首など背面部分が張るような違和感を覚えながらの一週間。
その一週間後にやってきた二回目の心筋梗塞で俺は死に掛けた。
その少し前、二十九年ぶりに中学時代の同級生神田と再会。
篠崎経由のフェイスブックでお互いの存在に気付いてだった。
ミクシィ時代では飯野君と出会い、その時その時の時代の流れで繋がっていく過去の同級生たち。
音楽プロダクションの会社として成功を収めていたという彼は、とにかく金遣いが荒かった。
結果あいつの披露宴があったのが二千二十三年四月だから、あの辺から関係を切らないと俺自身が破綻すると気付く。
その時住んでいた忌々しい河本マンションでの光熱費不当搾取問題。
入居してから後付けで親メーター方式だから大家からの請求となると言われた。
黙って手書き請求書の額を払ったが、一人暮らしの俺に対し河本台湾人大家は月に安い時で二万円後半、多い月は四万を超える光熱費の請求をしてくる。
この時俺が仕方ないと思ったタイミングがあった。
一つはロシアとウクライナの戦争開始。
それに伴う電気代の上昇。
こんなにも光熱費が上がってしまったのかと誤認した事。
もう一つが四万円を超えた時違和感を覚え、神田へ電話をした事。
人を見下す神田は贅沢の限りを尽くした生活をしている。
そんな彼に光熱費が四万超えたと相談したところで、返ってくる言葉は「うちなんて電気代だけで五万超えたぜ?」というものだった。
馬鹿な俺はそういう世の中になってしまったのかと変に納得し生活していく。
職場で光熱費の事を聞くと、みんなが驚かれる。
絶対にそんな金額なんていくはずがないと言われた。
行きつけの居酒屋『串市場ん』でマスターを始め、仲良くなった人たちにも聞いてみる。
全員話す事は一緒。
結論河本マンションは、明らかに故意で俺から必要以上に光熱費を摂取している。
まだ騙されている俺に対し、職場の星田は小馬鹿にしてくるようになった。
何かにつけ人を情弱だの頭が悪いとからかい、笑いを取ろうという行為が目立つ。
心筋梗塞三ヶ月に一度の定期健診で三万円は掛かる身体。
その為自身の尊厳よりも、生活の安定を第一にしなくてはいけなかった。
内心二十年前の俺にそんな事を抜かした瞬間、打突をブチかますか、顔面鷲掴みにして壁に叩きつけていたものをと、過去の自身の暴威への妄想へ縋るしか術がなかった情けない俺。
そんな状態でも金遣いの荒い神田は何度も注意をしても変わらない。
「俺たちは馬鹿野郎だよ」
酔うと決まって出る神田の台詞。
確かに俺も神田も大馬鹿だが、コイツの為に俺は二年間ほとんど貯金ができていない。
一つ一つ今のこの病んだ生活を改善していかないとこの先の道は暗くなる一方。
危機感を覚えた俺は、まず神田との関係を切り始めた。
向こうの意思など気にせずひたすら拒絶。
次に不動産へ行き、新たなマンションを探してもらう事にする。
ただ仕事をしながらなので物事の優先順位はできてしまう。
ストレスが溜まると決まって俺は大久保駅近くの『串市場ん』へ行き酒を煽る日々。
マスターと群馬の先生の話をテーマに盛り上がっている時に、声を掛けてきた自称俳優。
過去フライングしてこの作品に出した事のある忌々しい男。
この馬鹿とあそこで知り合ってしまったからこそ、今俺がこのマンションへいるという皮肉。
駄目だ…、イライラしてきた。
もう一度ベランダで頭を冷やしながらタバコを吸おう。
それにしても寒いわ。
戻ると文字を打ち出す。
そうだ、何故今フライングしてまでこんな事を書いているのか?
先にネタバレを書く為では無い。
裏稼業を辞め、これまでの恩人たちへ俺は会いに行った。
横浜では霊媒師のシャインさん。
この時キミノヤを辞めた平田が新たに移った居酒屋『稀』。
あそこへ寄ったのがあの日の失敗のすべて……。
いや、そうじゃないだろ。
人のせいにするなよ。
俺自身の悪戯心が招いただけの厄災。
フィリピン人好きの平田をフィリピンパブへ強引に引っ張り、そこで俺がボラれたというだけ。
次に千葉まで行き、坊主さん家族と久しぶりの再会。
奥さんの裕子さんはいいと言うのにしゃぶしゃぶをご馳走してくれた。
俺は言った。
「坊主さん…、今の俺に足りないものって何なんですかね?」
「うーん…、今の智に足りないものかー……」
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