闇 461(中学時代の先輩編)
闇 461(中学時代の先輩編)

2026/01/22 thu
前回の章
二千十九年七月十七日、水曜日友引。
今日も無事仕事を終え、真っ直ぐ帰路に着く。
小江戸号も媚びるのを辞めたと思ったら、カナヘイ展なる広告が貼ってあった。
ひろみが喜ぶだろうと写真を撮り送る。

本川越駅へ到着すると、無性に腹が減っていたので同駅に接続している川越プリンスホテルの九階にあるブッフェレストラン『エトワール』の看板を眺める。
ここへ行くのはいつ以来だろう?
随分と久しい事は確か。

時間帯を確認すると、朝十時までなので一時間もない。
それでも腹一杯食いたかったので、俺はレストランへ向かった。

エレベーターの九階を押し、最上階へ。
おそらくこのホテルに泊まったのは、二十九歳の時が最後なはず。
過去に執筆した作品『真・進化するストーカー女』。
あれは主人公神威龍一を俺に投影したただの実話。
あの時の恐怖があったからこそ、このホテルに泊まる事は二度と無くなったのだ。
百件以上のメールは、自然と過去のものからなくなっていくようだ。
面倒なので新しいメールを見てみる。
《友香、有休休暇取りました。川越プリンスホテルも予約しました。 友香》
「……」
しばらく携帯電話を持ったまま固まってしまう。
何だ、こりゃ?
友香有給休暇って早口言葉じゃねえんだぞ?
何だ、予約って?
川越プリンスホテル?
うちから徒歩五分だぞ?
おいおいおい……。
メールを見といて本当に良かった。
知らずにこのままいたら、危ないところだった。
写真を以前交換し合うので住所はお互い知っている。
つまり今、俺がいるこの場所へ、あの肉の塊は突然やってくる可能性があるのだ。
こりゃ、ヤバいよ……。
どうしよう……。
すぐ連絡して、何とか分かってもらうしかないでしょ。
しかしどうやって説得するんだ?
俺は態度で充分に分かってもらえるような行動をしたつもりである。
一向に二匹の魔物たちは理解してくれなかったが……。
いや、言葉で分かり易く言わないと、駄目な生き物なんだろう。
別にあいつらに嫌われようが恨まれようが、ストレートに言葉をぶつけなきゃいけない。
これは俺の人生の正念場でもある。
魂の籠もった渾身の直球で、絶対に三振にしないといけないのだ。
メールを続けてみると、どうやら肉の塊は一週間後に関東の地へ上陸するらしい。
何故一人でこうまで勝手に盛り上がれるのだろうか?
人生最大のピンチが訪れようとした瞬間、俺は事前に気付く事ができた。
まだ運はある。
いきなり目の前に姿を現したら、拒絶反応を起こしていたかもしれない。
少し落ち着いて整理しよう……。
肉が来るのは一週間後。
本当に川越プリンスホテルなど予約しているのだろうか?
ホテルに電話をしたところで、顧客情報になるからそんなの教えてもらえないだろう。
あのメールの内容を信じるとして…、いや、それを念頭に置かないでどう対策を練るのだ。
あの女は来る、一週間後に。
それだけは決定事項なのだ。
焦るな。
落ち着け。
一回深呼吸しよう。
時間は一週間もあるのだ。
それまでに説得できればいい。
思い留まらせる決め手は何か?
いかに俺が嫌いかを伝えるべきだ。
あの女はこの鍛え抜いた肉体を侮辱した。
そこに焦点を置き、絶対にそれは譲れない部分であり、いかに俺にとって大切な事なのかを言おう。
だからおまえとは無理だと……。
うん、中々いいんじゃないか。
しっかりしろよ、俺。
ボールは投げられないんだからな。
ストレートだけだ。
俺は着信拒否した番号の中から、友香の携帯電話番号をメモに写す。
掛ける前に、もう一度ゆっくり深呼吸しておこう……。
コール音が鳴る。
一回、二回、三回、四回……。
「もしもし、龍一っ!」
出た……。
電話口の向こうには肉の塊がいる。
しっかりしろよ。
「何で着信拒否にしてるのよっ!」
ヤバい。
いきなり泣き出したぞ。
しばらく寝かせておいたから、熟成して凶暴になってやがる。
まずは冷静にさせないと……。
じゃないと意味がない。
「久しぶりだな」
「何が久しぶりだなよ?」
「落ち着けよ」
「じゃあ、早く着信拒否をやめてっ!」
「だから落ち着けって」
「その前にやめてって言ってんでしょっ!」
嫌だよ。
そんな事したら、また一日で二十回とか電話あるぞ。
馬鹿、違う。
心の中で呟くな。そういった事を口に出せ。
「い、嫌だっ!」
「何でよ?」
「あのさ…、もうちょっと人の気持ちを考えてくれよ、お願いだからさ」
「じゃあ、龍一も私の気持ちを考えてよっ!」
こいつ、詐欺行為で人を騙しておいて、そこまでまだ要求するか……。
「あのね、落ち着いて聞いてくれない?」
「だから早く着信拒否をやめてって言ってんでしょっ!」
ますます泣け叫びながら友香は、どんどんヒステリックになっていく。
とてもじゃないが、ここで写真と実物が違い過ぎるなんて言ったら、かなりヤバくなるだろうな……。
「落ち着けって…。いいか? まず今はこうして話しているんだから、携帯の設定なんていじれる訳がないだろ?」
「だからやめてよ。早く元に戻してよ」
「じゃあ一旦電話切るよ?」
「嫌だっ!」
「どっちなんだよ?」
「だから着信拒否をやめてよっ!」
頭が悪過ぎる。
これはとりあえず空返事しといたほうが賢明だな。
「分かった分かった。やめるから落ち着いて」
「フー、フー……」
肉の荒い息遣いが聞こえる。
生理的にこの女は嫌だなあ……。
「あのね、君が俺と帰り際、何て言ったか覚えている?」
「や、痩せてって……」
「そう…、そうやって君は、俺の誇りをズタズタに切り裂いた。俺の大切なものを踏みにじり、土足で入り込んだんだ。それは分かるよね?」
うん、いい感じの話し方だ。
自分で自分を褒めてやりたい。
「分からない」
くっ、こいつ……。
何故分からないのだ?
「あのさ、君にも大事なものがあるでしょ?」
「君って言うのやめてよっ! 私は友香って名前があるんだからっ! 友香って前みたいに呼んでよっ!」
見苦しい性格だな、このデブ。
「じゃ、じゃあ…、ゆ、友香さん……」
「何で『さん』なんてつけるのよっ!」
「いいかい? また同じ事を言うようだけど、俺はね、あれですっかり心が離れてしまったんだ」
本当は実物を見た時点で心など、とっくに離れていたが、今はこのほうがいい表現だろう。
あまり刺激するなよ、この女を……。
「何で離れる訳?」
「だってそれは俺がそういう風に感じたからでしょ? 自分の気持ちさえ自由に発言しちゃいけないの?」
「うん、いけない。絶対にいけないっ!」
「……」
本当にこいつ嫌だ。
何てわがままなんだろうか。
「絶対に駄目なんだから」
「じゃあ分かり易く言うよ? 別れよう。もう無理です」
よし、よくぞハッキリ言った。
ど真ん中直球ストレート。
「ふーん、そう……」
よし、バッター空振り。
三振スリーアウトチェンジ。
「あのひと言で、俺たちは終わったんだ」
「そうなんだ……」
妙に冷めた友香の声。
会心の一撃が決まった。
永かった……。
前にもこの漢字でそう思ったが、本当に永かった……。
ようやくあの一連の悪夢から、これで開放される。
「ああ、すまないな」
傷つけてしまった事は事実なんだから、せめて誠意を込めて謝ろうじゃないか。
「謝らないでいいよ。もう、私、死ぬからさ……」
「え?」
一瞬目の前が真っ暗になる。
今、コイツ…、何て言ったんだ?
「遺書書くから電話切るね」
「おい、ちょっと待てよっ!」
「何? 何か用?」
「あのさ、ちょっとそういうのって酷くない?」
「何で?」
「だってさ、自分の胸に手を当てて考えてみ?」
「当てた」
「その状態でよく思い返してくれよ?」
「思い返した」
「だから、自殺するなんて言わないで、お願いだから冷静になってよ」
「じゃあ、川越に行っていい?」
「だから何でそうなるのよ?」
「じゃあいいよ。もう死ぬから」
「だからー……」
「龍一には関係ないでしょ?」
「……」
こいつ、本当に汚い。
汚過ぎる……。
「遺書に、ちゃんとあなたの名前は書くから安心して」
「……」
自分で言っている事を認識しているのか、コイツ……。
「何で何も言わないの?」
「あのさ…、死ぬとかそういうのって、ちょっと違うでしょ?」
「何で?」
「逆にさ、俺がそう言ったらどう思う?」
「今すぐ川越に駆けつける」
「はあ……」
「何で溜息なんてつくの?」
「そう言う事を言うからでしょ?」
「ごめん、嘘ついた。今すぐなんて行きたいけど、現実はできない。でも、一週間後、ちゃんと行くからさ」
「……」
こいつ、本当に死ぬ気なんてあるのか?
でも、下手に触発して本当にそうなったら嫌だしなあ……。
「川越プリンスホテルは、ちゃんと予約取ってあるから安心して」
「あのさ……」
「な~に?」
「来ても、俺は会わないよ?」
「何で?」
「もうっ!」
気付けば俺は、携帯電話を切っていた。
エレベーターが九階に到着する。

朝飯で料金二千円台は少々痛いが、他の店に行って二人前食べたらそう変わらない。
俺は受付で金を払い、店内へ入る。

もう営業ラスト一時間を切っているせいか、他に客の姿は見えない。
うん、ゆっくりはできないにしろ自由に取り放題だ。

エトワールから見える丸広の屋上。
あの観覧車ももうじき無くなってしまうのか。
俺はプリンス九階から丸広を撮影する。
美香の娘シーちゃん本当に楽しそうだったもんな。
あー…、何であの時俺は携帯電話の操作を……。
七海…、あれほどの美人、今後出会えるか分からないぞ?
せっかく緑寿司までは格好良く決まっていたはずなのに……。
「あ、お客様…、お席のほうへご案内致しますが」
「あ、すみません。ちょっと考え事をしていたものでして」
俺一人の為にシェフが朝から目の前で焼いてくれるオムレツ。
ソースは四種類の中から選べるようで、イタリアンソースをお願いした。

よし、料理を取りまくるぞー!

ステーキやハンバーグ、マグロに茄子、ミートソースと俺の大好物ベストファイブは見当たらない。
しかしそれでも構わず腹一杯食べようじゃないか。
ジャパンのキングあさりさんが、おまえもバイキング行ってこいやー!と怒鳴られたので、一人で来ましたよ、川越プリンスホテルの朝食バイキング
— 新宿トモ(岩上智一郎) (@shinjukutomo) July 17, 2019
全部食べたから、お腹いっぱい pic.twitter.com/K2W00oseLm
俺は色々なものを皿に盛り、餓鬼のような食い漁る。
もう入らないぐらい胃袋へ詰め込むと、外へ出た。

プリンスホテルを出て、駅前の横断歩道を渡る。
いつもならここで、野良猫ニャーニャーたちが出迎えてくれていたのになあ……。
猫カフェも三軒行った。
何度も探し回った。
一体あの子たちはどこへ行ってしまったのか。
埼玉りそな銀行の駐車場を眺めながらクレアモールへ入る。

家に向かって歩いていると、最近よく行くゲームセンターがちょうど開店しているところだった。
せっかくだし、中のものを見てから帰るとしよう。

このお店だけでなくほとんどのゲームセンターは昔と変わり、UFOキャッチャーやプリクラだらけになったものだ。
あの暗くジメジメした不良が溜まっていた頃を懐かしく思う。
恐喝はした事などないが、喧嘩だけは本当によくした高校生時代。
成人してから訪れた爆発的人気だった対戦格闘ゲーム。
二階へ行く階段を眺める。

今じゃ対戦格闘ゲームなんて、こんな階段を上がった一部の片隅にしかないんだもんなあ……。
暴力が肯定される時代がいいとは思わない。
それでも多少理不尽でも人情味があった昭和時代を懐かしく感じた。
平成の三十年間で、こうまで時代は進化してしまう。
令和に入ったこの先、この国はどんな風に変わっていくのだろうか?
二千十九年七月十八日、木曜日先負。
ひろみがずっと欲しがっていたUFOキャッチャーの戦利品の数々。
俺自身いらないものばかりなので、近所の郵便局へ持っていく。
「すみません、これを九州へ送りたいんですけど」
「えーと…、すみません…。このままですと……」
「もちろん分かってますよ。それで段ボールか何か売ってないですかね? これが全部一度で収まるような」

大きめの段ボールへ上手く収めていく。
若干隙間が空くな……。

「すみません、ちょっとこの先のくらづくり本舗へ行って、お菓子買ってくるのでまだ待ってもらえますか?」
「え、お客様。お荷物はこのままですと……」
「そこに置いておくので、泥棒する奴がいたらチョップをお見舞いしてやって下さいね」
まだ何か郵便局員が言い掛けていたが構わず外へ飛び出す。
実家から真っ直ぐ行った先にあるくらづくり本舗へ向かう。

「こんにちわー、今日は英幸さんいるんですか?」
「あ、社長は普段こちらにはいらっしゃらないので……」
「分かってますって。もし来たら、智一郎が買い物に来たって伝えて下さいよ」
「え、えーと智一郎様…、でございますか?」

「そこの岩上の長男です。冗談で言っただけなので気にしないで下さいねー。今日は九州へ送るお菓子を買いに来たんですよ」
馬鹿みたいに張り切って買っても、あの段ボールの隙間に入るぐらいがちょうどいいのだ。

俺は厳選して和菓子を選び、購入した。
郵便局へ向かう途中にあるラーメン屋『わこう』。
以前から近所で気になっていた店だったが、入口横に書かれた『コラーゲン餃子定食五百円』が気になる。
せっかくだから寄ってみるか。

入ってすぐ券売機があり、ここで食券を買うらしい。
餃子定食と味噌ラーメンを購入。

値段も中々リーズナブルな価格で、好感が持てる。
味噌ラーメンには大きな叉焼が入っており、味はこってり気味。

餃子もこれで五百円でいいのと思えるほど美味しかった。
郵便局へ戻るとひろみ宛てに宅配便を送り、それから帰ってゆっくり眠る。
起きるとまた新宿歌舞伎町へ。
小江戸号で食べるように買った食べ物やドリンクまで写真を撮って送れというひろみ。

まあこうして求められ愛されている内が華なのだろう。
俺は苦笑しながら写真を撮り、彼女へ画像を送信した。
二千十九年七月十九日、金曜日仏滅。
仕事を終え、寝て起きるとまだ昼過ぎだった。
暑さのせいか寝苦しい。
仕方なく起きてまた昨日とおなじラーメン屋わこうへ行く。
また餃子定食と、今回は醤油ラーメン。

近所にこんな良心的な店があったなんてまるで気付かなかった俺。
今後もちょくちょく顔を出す機会が増えそうだ。
扇風機を回しながら横になる。
それでも暑さを感じ、携帯電話を眺めながら眠くなるのを待った。
フェイスブックの過去の思い出を見て、ちょうど一年前が亡くなった税理士の大野さんと大漁丸で会った時だった。
そこまで特別親しかったわけではない。
それなのに俺を一人の人間としてキチンと扱ってくれた人。
何となく斉藤弘一に近いものを感じる。
違う点は、俺と十歳ぐらい年が離れていたからかもれない。
こんな中途半端な俺に対し、いつだって一緒に飲みたいと言ってくれた。
本当に優しく礼節のある人だった。
何かね…、もうちょっと一緒に飲みたかったな。
篠崎の情報では詳しい死因などは未だハッキリ分からないまま。
心筋梗塞か糖尿病の合併症のどちらかだとは思う。
何でまたこんな役立たずの俺が無駄に健康で、社会的に成功もした大野さんのような人がこんな早く亡くなるのだろうか。
世の中本当に理不尽の塊だ。
今頃向こうで好きな酒飲んでいるのかな。
大野さん…、何かね、淋しいっすよー……。
俺は久しぶりにフェイスブックへ投稿した。
そんな状況下においても、俺の生活が変わる事など一ミリもない。
夜になれば変わらず新宿歌舞伎町へ向かい、ラッキーハウスで働くだけ。
それで俺は日銭を稼ぎ、生計を立てているのだから。
二千十九年七月二十日、土曜日大安、夏の土用入り。
今日も忙しい中、INとOUTをこなしながら客を捌く。
橋本と山下もいるので、以前ほどアップアップな状態にならずに済むのが有難い。
「岩上さん、今日帰り小平で一杯飲んで行きましょうよ」
「何で小平なんだよ?」
「この間のうな重のリベンジっすよ」
「……。馬鹿じゃねえの…。あんな店二度と行かねえよ」
あまりにもしつこく根負けして仕事帰り小平で途中下車。
駅前の中華料理屋へ入り、定食を食べながら本当に一杯だけ付き合う。

「自分休みなんでもう一軒行きましょうよ」
「いや、行かない。俺は仕事あるから」
「えー、冷たいっすよー」
「冷たくねえよ、ちゃんと付き合ったじゃねえか」
俺は自分の分の会計だけテーブルに置き、店の外へ出る。
山下を撒いたあと、オンボロのパチンコへ入り少しだけやるつもりが二万負け。
こういう時はやっても意味が無い日だよなと反省しつつ、川越に帰った。
二千十九年七月二十一日、日曜日赤口。
西武新宿駅へ着いた時、小江戸号がちょうど出てしまう。
たまには急行で普通に帰るとするか。
ひろみとチャットでやり取りしている間、いつの間にか電車で寝てしまい、気がつけば所沢。
一度本川越に着いたはずなのに、寝ていてUターンしてしまい、所沢で気付いたのか。
慌てて飛び降りる。
せっかくなので駅の外へ出た。
この地に特別な思い入りはない。
強いて言えばおじいちゃんの四十九日の時にプロペ通りにいた程度。
もう海峡も潰れてしまった。
じゃあ何故俺はここで降りたのだ?
フラッとパチンコ屋へ入るも、数千円を使ったところで気付く。
また休みにこんな事をしても意味がないだろうと。
せっかくだからどこかでご飯でも食べてから帰ろう。
目に付いたお店はうな丼とマグロ丼が置いてある店。
迷ったので二つとも注文する。

鰻は中国産だろうか?
マグロは美味しくマグる事ができた。
俺の人生は、このぐらいで幸せを感じていれば充分なのだ。
電車で寝てしまい、気がつけば川越着いたはずなのにUターンして所沢まで行ってしまう
— 新宿トモ(岩上智一郎) (@shinjukutomo) July 21, 2019
鰻丼かマグロ丼、どちら食べようか迷ったので、両方食べる事にした pic.twitter.com/bugaOiFmZF
もう今日は競馬もパチンコもしないで帰って寝る。
起きてから美味しいものを食べに行けばいい。
アイノー皇帝に少しだけログインして、ひろみや連盟のみんなと会話をして眠った。

起きてからゆっくり風呂に入り、お好み焼きの『かぶや』に行く。
たまには一人でのんびり気楽に。
豚玉と太麵焼きそばを注文し、レモンサワーとお茶割りを飲む。

たまに濃厚なソースを掛けたお好み焼きを食べたくなってしまう。
魚類苦手な俺はいつも豚玉。
両面をよく焼き、ソースをたっぷり塗ってからマヨネーズ、そして青海苔と鰹節を振り掛ける。

太麵焼きそばも鉄板で焼いてから熱々状態で食べる幸せ。
この材料のほとんどが、小麦粉でできているなんて本当に不思議だ。
帰り道加賀屋のおばさんのところへ寄り、他愛ない世間話をしてから隣りのスガ人形を覗く。
栄治さんの姿が見当たらないので配達にでも行っているのだろう。
もうちょっと軽く飲んで行くか。
中央通りに出てピザ屋のバッコへ向かった。
ここのレモンサワーを飲んで、今日は部屋でゆっくりすればいい。

ドアを開き中へ入る。
いつものようにカウンター席へ腰掛けた。
ウイスキーのロックとレモンサワーを注文。
一口飲んでグラスを置くと、背後から「智ちゃん?」と声を掛けられた。
振り向くと栄治さんが後ろのテーブル席に座っている。
「え? 小川さんですか?」
「岩上か?」
中学生以来の再会。
同じサッカー部の一つ上の先輩。
小川さんとの偶然的な遭遇。
十四歳以来だから、三十三年ぶりになるのか?
「そんなとこいないで一緒に飲もうよ!」
「お邪魔させて頂きます」
ジッと俺の顔を見る小川さん。
フェイスブック上で、サッカー部の一つ上の先輩たちとは友達にはなっていた。
だがそれはあくまでもインターネット上の再会というだけに過ぎない。
だが実際にこうして顔を合わせると、何とも言えない感慨深いものがあった。
「岩上…、おまえがさ…、あのジャンボ鶴田とかにしごかれてプロになったと噂で聞いた時はよ…、何て道へ行ったんだなんて思ったけどよ…。こうして目のまで元気そうに無事でいてくれてよ…、俺は……」
涙ぐんで会話が止まってしまう小川さん。
俺はその姿を見て、中学時代の僅かな期間、本当にいい先輩に恵まれたのだなと全身が熱くなった。
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