初心者でもわかるインテグラル理論『ステート(意識状態)』~意識の多様な状態について~
このシリーズでは、「初心者でもわかるインテグラル理論超入門!」をテーマに、初学者の方でも無理なく学べるよう、インテグラル理論の核心に迫るトピックを一つずつ丁寧に取り上げています。
前回までは、インテグラル理論の主要な構成要素のひとつである『レベル(段階)』を中心にご紹介しました。
『レベル(段階)』は、人間の内面的な発達を示す地図のようなものであり、「世界の捉え方の構造」がどのように変容していくのかを理解するうえで非常に重要な概念です。
また、『レベル(段階)』とは、知識や経験が蓄積されるにつれて、より複雑で包括的な視点を獲得していく発達プロセスを示しています。
しかし、ある段階に達したからといって、常にその段階の認識や行動が安定して発揮されるとは限りません。
そこで、インテグラル理論を理解するうえで欠かせないもう一つの重要な要素が登場します。それが『ステート(意識状態)』です。
今回は、インテグラル理論の5つの基本概念のひとつである『ステート(意識状態)』に焦点を当て、私たちの意識状態がパフォーマンスにどのように影響するのか。その仕組みを探っていきましょう。
『ステート(意識状態)』とは?
インテグラル理論では「意識」を大きく2つの観点から捉えます。
1つは、これまで紹介してきた『レベル(段階)』。これは「意識段階」とも呼ばれ、時間をかけて成熟していく「世界の捉え方の構造」の変化、すなわち人間の内面的成長を地図のように描き出すものです。
そしてもう1つが、今回取り上げる『ステート(意識状態)』です。こちらは、私たちの“今この瞬間”の心の状態に関係しています。
たとえるなら、刻々と変わる空模様のようなもの——晴れていたり、曇っていたり、時には嵐のように揺れ動いたり。
視座の成長を示す「レベル(段階)が持続的かつ構造的な変容」であるのに対し、「ステート(意識状態)は一時的・瞬間的なモードの移り変わり」といえるでしょう。
『レベル(段階)』と『ステート(意識状態)』の相互作用──意識が“パフォーマンス”に現れる仕組み
インテグラル理論では、『レベル(段階)』と『ステート(意識状態)』という2つの軸が複雑に絡み合いながら、私たちの「パフォーマンス」に影響を与えると考えられています。
『レベル(段階)』は、その人が獲得した世界観や意識構造を表す「発達の高さ」ですが、だからといって、いつでもそのレベルの力を発揮できるわけではありません。
どれほど成熟した視座を持っていても、今その瞬間の『ステート(意識状態)』によって、能力・判断・態度は大きく変化するのです。
たとえば、発達段階としては合理的な視点を持つ「合理性段階(達成型段階) / オレンジ」にいる人でも、疲れていたり、傷ついていたりすると…
「自分だけが悪いんだ」と過剰に自己を責める
「どうせ誰も分かってくれない」と閉じこもったり、拗ねる
こうした反応が出てくることがあります。
これは、その人の発達段階が偽物なのではなく、「ステートの乱れ」が一時的に低い意識パターンを引き出している状態なのです。
この『ステート(意識状態)』まさに心の“天気”のように、状況・環境・身体的コンディションなどによって刻々と変化します。

だからこそ、誰かの“今ここ”を理解するには、以下の2つの視点を同時に見ることが大切になります
縦軸:『レベル(段階)』──その人の内面構造の発達度
横軸:『ステート(意識状態)』──今この瞬間の感情・エネルギーの状態

この「縦軸 × 横軸」の相互作用を読み解くことで、人の複雑な心の動きや、発言・行動の背景に深く迫ることができるのです。
『ステート(意識状態)』が整ってこそ、発達段階が活きる
例えば、高次の『レベル(段階)』に到達したとしても、その瞬間のステートが「恐怖」「怒り」「虚無感」に支配されていたとしたら……
客観的に物事を見つめることが難しくなる
他者との関係が表面的になってしまう
他者との対話は浅くなる
といったことが、実際に起こります。
つまり、高次の段階のポテンシャルがあっても、心が波立っていれば、その段階の力は発揮できないのです。
逆に、たとえ発達段階としては未熟であっても、つながりや信頼、愛情といった“温かさ”を感じるステートにあるときには……
自分と他者を柔らかく感じられる
他者との関係が優しさと共感に満ちる
深い問いにも柔らかく開かれた姿勢で向き合える
といった、豊かなパフォーマンスが生まれることがあります。
このように、人間の発達をより有機的に理解し、実践するためには、「段階(意識構造)」だけではなく「ステート(意識状態)」のケアが不可欠です。
そのため、『ステート』を整える方法、つまり「今ここ」の意識状態を調える技術や習慣を身につけることが大事になるのです。
「ステート(意識状態)」を整える方法
私たちのステート(意識状態)を整える方法は、ひとつではありません。
人によって心地よく感じるものも、状況によって効果を発揮するものも違います。ここでは代表的なアプローチをいくつかご紹介します。
🧘♂️ 心身にアプローチする方法
ジャーナリング(感情の言語化)
瞑想/セルフ・コンパッション
内省
ヨガ・ストレッチ・ウォーキング
呼吸法(例:4-7-8呼吸/腹式呼吸)
食事・睡眠・水分補給など、身体の基本ケア
🪞 人や環境を通じて整える方法
安心できる人との対話
コーチング・カウンセリング・セラピー
自然・光・音・香りなどを活かした空間づくり
スケジューリング(朝のルーティン、余白の設計)
などなど、たくさんあります。
とはいえ、すべてを実践する必要はありません。闇雲に手を付けるよりも、まずは「今ここのステートがどんな状態か」を把握して、特に必要なところからアプローチするのがオススメです。
なので、ステートを整えるにあたって、まずはステートの状態を把握しましょう。
ステートの状態を把握するにあたって、以前お話した「四象限」を活用してみるのがおススメです。
例えば、ステートを四象限でマッピングすると、次のようなかたちになります。

このフレームで整理することで、「今の自分に一番必要なアプローチは何か?」が見えてくるはずです。
また、各象限のステートを把握するために、次のような問いを自分自身に投げかけてみてください。
左上象限(個人内面):今、どんな気分? どんな考えが頭の中を巡っている?
右上象限(個人外面):身体の感覚は? 緊張してる? 呼吸は深い? 浅い?
左下象限(集団内面):最近、人とのつながりを感じている?孤独感はある? 所属している集団の文化は安心できる?
右下象限(集団外面):今いる環境(場所・制度・ルール)は、自分にとって安心? 整ってる?
いかがでしょうか? 自分のステートが整理されましたか?
では、次は各象限へのアプローチの仕方をまとめてみましょう。
ステートを整える方法:4象限を活かしたアプローチ

🔹【左上(内的個人)】思考・感情を整える
ジャーナリング(感情の言語化)
瞑想/セルフ・コンパッション
内省・認知再構成(例:思い込みに気づく)
詩を書く、アートで表現する
🔹【右上(身体)】心身を整える
ヨガ・ストレッチ・ウォーキング
呼吸法(例:4-7-8呼吸/腹式呼吸)
食事・睡眠・水分補給
神経系のセルフレギュレーション(例:ポリヴェーガル理論に基づく揺れ・声・ハミングなど)
🔹【左下(関係性)】人とのつながりから整える
安心できる人と話す
グループでの共感的なチェックイン
コーチング・セラピー
安全なコミュニティ・文化づくり(心理的安全性)
🔹【右下(環境・構造)】場やリズムを整える
働く場所の工夫(自然・光・音・香り)
スケジューリング(朝のルーティン、余白の設計)
制度面(休憩文化/チェックインの導入)
テクノロジーの活用(リマインダー、BGM、バイオフィードバック)
「ステート(意識状態)」にも深みがある──意識状態の5つの階層
ここまで、「ステート(意識状態)」をシンプルに理解するために『整ってるか/乱れているか』の視点で紹介してきました。
しかし、実は「ステート(意識状態)」にはさらに深い層があります。
インテグラル理論では、意識状態を以下の5段階に整理しています。
目覚めている状態
夢を見ている状態
夢のない深い眠りの状態
空なる目撃者の状態
純粋な非二元の状態
の5つです。またこれらの意識状態は瞑想体験の進行段階にも対応しており、次のようによばれることもあります。
グロス(粗大)な状態(=物質的ないし物理的な状態)
サトル(微細)な状態
コーザル(元因)の状態(=極めて微細な状態)
トゥリーヤの状態(観想・目撃者”ウィットネス”の状態)
トゥリヤティタの状態(非二元の状態、一なる意識の状態)
このうち1~3までが私たちが日常的に経験している意識状態であり、4~5は瞑想や深い内省、長年の修行などを通して経験可能な深層の意識状態です。
まとめるとこんな感じ。

「1~3.の基本的な意識状態はわかるけど……4~5.の意識状態は、修行してまで身につける必要あるの??」
という声も聞こえてきそうです。
この点、インテグラル理論の提唱者であるケン・ウィルバーは、こう語っています。
『瞑想などによる意識状態の訓練(修行)は、意識段階の発達の促進にも効果がある』
鈴木 規夫 (著), 久保 隆司 (著), 甲田 烈 (著)
これは、もう少し詳しく解説すると、
『これは、サトルやコーザルなどの意識状態に頻繁にアクセスすることにより、日常的な意識状態の中に成立している既存の意識構造に対する”執着”がゆるむため、高次の段階に向けた垂直的な発達が起きやすくなるためである』
鈴木 規夫 (著), 久保 隆司 (著), 甲田 烈 (著)
と言われています。つまり、「ステートの探求が、レベルの発達を後押しする」のです。
次はそれぞれの意識状態について、解説していきたいところですが…
長くなりますので、今回はこの辺で!
次回はいよいよ、それぞれのステートを個別に掘り下げていきます!
ご興味のある方は、是非また読みにいらしてくださいね!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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