初心者でもわかる『レベル(段階)』人間の内的発達を示す地図~人の成長とは?発達とは?~
先日は「インテグラル理論とは? 人(そして、組織・社会)の本質的な成長の可能性を探求するためのツール」ということで、インテグラル理論の概略について紹介させていただきました。
今回はその中の5つの重要概念の一つである『レベル(段階)』について解説していきたいと思います。
人間の成長と変化、「発達心理学」とは?

私たちは人生を通じて、さまざまな人や物との関係を経験しながら成長していきます。
たとえば、母親や父親との関係、兄妹や友人との関係、恋人や同僚との関係、書籍や芸術作品との関係など……
それらの関係性が、私たちの人格や社会的存在として必要とされる様々な能力を育ててくれるのです。
そうして充実した人生を生き抜くためには、たとえば、
他者の幸福をともに喜び、他者の苦悩をともに悲しむ能力
自分の目標を見つめ、それを達成するために努力する能力
組織の未来を考え、発展のために積極的に動く力。
次世代の幸福を願い、社会貢献をする能力。
死期を迎えて、自己の人生の根源的な意味を探求する能力
などなど、無数の能力を開発・発揮していくことを求められます。
こうした意味で、私たち人間は、たとえ肉体的に衰え始めても、精神的には継続して自らの可能性を開花させていく権利と義務を与えられている存在であると言えます。
人間の成長と変化はゆっくりと進むもの
幼年期・思春期・青年期・熟年期・老年期など、人生の季節を通過する中で、私たちを取り巻く生活環境は変化し、それに伴って求められる能力や行動も変化していきます。
また、そうした変化と並行して、私たちの価値観は根本的に変化して、日常生活における私たちの目標や関心を変えていくことになります。
10年前に大切だと思っていたことが、今ではそれほど重要ではないと感じることもあるでしょう。逆に、昔は理解できなかったことを今ではしっかりと受け止められるようになることもあります。
あらためて振り返ってみると、自信の感性や思考、行動の枠組みが根本的に変化していることに気づきませんか?
たとえば、10年前には明確に認識できていなかった世界の複雑性や人間の可能性を、今では理解できるようになっているかもしれません。
このように、人間は長い時間の中で、深い意味で変化・成長する存在です。
単に知識や技術を習得することを通して達成される変化・成長とは異なる、質的にいっそう深い変化や成長を経験するのが、私たち人間なのです。
ただし、こうした種類の変化や成長は、簡単に認識したり、実感したりできるものではありません。
10年、20年といった長いスパンで人生を振り返ったときに初めて「ああ、変わったな」と気づくことが多いのです。
「発達心理学」とは? 人間の成長を研究する学問
こうした長期的な視野から、人間の内的な成長について調査・研究する学問が「発達心理学」です。
そして、「インテグラル理論」は、古今東西の発達理論の知見をふまえ、人間の発達のステップについて詳細な地図を示しています。
この地図を使うことで、私たちは人生という旅路を歩んでいく中で経験することになる段階を確認し、今自分がどこにいるのかを客観的に把握することができるのです。
人生は長い旅路です。その中で経験する成長の喜びを、ゆっくりと味わいながら進んでいきましょう。
「発達する」とはどういうことか?
人間とは「意味」をつくる存在である

組織と個人のポテンシャルを最大化する秘訣© DIAMOND, INC.
ハーバード教育大学院のロバートキーガン博士は、人間存在を規定するもっとも本質的な精神活動を「意味をつくる行為」と定義しています。
これは、「自分とは何者なのか」「この世界はどんな場所なのか」といった問いに、自分なりの「物語」を作り出す活動だといえます。
私たちは日々、さまざまな出来事を経験します。その中には、どうしても納得できないような理不尽なことも含まれます。しかし、そうした経験に直面してもなお、私たちは何らかの「意味」を見出そうとするのです。
このように、人間とは本質的に意味をつくることを宿命づけられた存在だと言えます。
この「意味をつくる」という行為は、人間にとって避けられないものでもあり、同時に非常に大切な活動なのです。
「意識内容」と「意識構造」
これらの私たちが人生で造り上げる「意味」や「物語」は、一人ひとり異なります。
また、物語をつくる上で用いられる素材は、時代や社会によっても変化していきます。
たとえば「学歴」という価値観を見ても、この10~20年で大きな変化を遂げました。
昔は、偏差値の高い一流大学に進学し、一流企業に就職して出世するのが幸福への王道だと思われていました。
しかし、今ではその価値観は過去のものとなりつつあります。
教育のあり方自体も多様化し、単にたくさんの知識を覚えたり、決まった答えを効率よく出す力を求めるのではなく、「本当に解決すべき問題を発見する力」や「さまざまな知識を組み合わせて活用する力」が重視されるようになっています。
その流れから、留学や起業といった自己研鑽の新しい選択肢を模索する人も増えてきました。
インテグラル理論では、私たちが「意味」や「物語」を作るための素材を「意識内容」と呼びます。
この意識内容には、社会や文化、時代がもたらす知識や価値観、さらに個人が経験から得た知識や洞察が含まれます。
一方、これらの素材を観察・統合し、物語に仕立てる装置が「意識構造」です。
「意識構造」は、世界をどのように見て、どのように意味を紡ぐかを決定する「レンズ」といえます。
ある意味では、このレンズは、われわれが認識することのできる世界の解像度を規定するものということもできるでしょう。
レンズが変化することで、同じ出来事を見ても、新しい発見や深い理解が生まれるのです。
レンズが変わることで広がる世界
顕微鏡や望遠鏡のレンズの倍率を変えたとき、同じ対象物でも見え方が変わることがありますよね。対象物自体には変化がないのに……
それと同じように、人生を通じて「意識構造」というレンズが変化することで、これまで気づかなかったものに目を向けられるようになります。
たとえば、以前はつまらないと思っていた音楽や絵画が、実は深い意味を持っていることに気づく瞬間があるかもしれません。
このように「意識構造」が深まることで、私たちが観察できる世界も質的に深まります。
そして、それまで認識できなかった深い意味や次元が、世界に息づいていることに気づくのです。
「意識構造」は人間の「器」

鈴木 規夫 (著), 久保 隆司 (著), 甲田 烈 (著)
少し角度を変えると、「意識構造」は、知識や技術、経験といった「意識内容」を収める「器」とも言えます。
その「意識内容」を増やすことは大切ですが、それらは効果的に活用されてはじめて本来の価値を発揮するものです。
そのためには「意識構造」という「器」に収納されている「意識内容」を整理したり、発酵させたり、融合させていかなければなりません。
意識が人間の「器」にたとえられるのは、このような理由からです。
意識構造の変化が私たちにもたらすもの
私たちの「意識構造」は、一生を通して段階的に成長していきます。
この成長によって、個人の思考・感情・行動の質は大きく変容していくのです。
こうした変容は、それまでの古い自分自身を否定することでもあるので、時として大きな精神的な混乱を招くこともあります。
しかし、その混乱を乗り越えることで、徐々に新しい段階の自己が確立され、新しい可能性に開かれた生活が始まることになるのです。
そのため、意識構造の変容は「死と再生」に例えられることがあります。
これは、これまで自分が拠り所にしていた価値観や考え方から離れる「自己否定」と、それを乗り越えた先で見つける新しい自分との出会い「自己発見」の両方を経験するプロセスだからです。
このプロセスを通じて、人間の成長や変化がさらに深まっていくのです。
意識の発達モデル

6つの意識構造の発達段階
インテグラル理論では、意識構造の発達を説明する際に、6つの段階を紹介しています。
段階0:衝動的(本能的)段階 / インフラレッド
段階1:呪術型段階 / マジェンダ
段階2:利己的段階 / レッド
段階3:神話的合理性段階(順応型段階) / アンバー
段階4:合理性段階(達成型段階) / オレンジ
段階5:相対主義型段階(多元型段階) / グリーン
段階6:統合的段階(進化型段階) / ティール
もちろん、発達段階は、より細かく分けて詳細な「成長の地図」を描くことも可能です。
また、発達過程は単純に直線的に進むわけではなく、多数の領域の能力が並行して成長し、互いに影響し合いながら展開するものとして捉えることも可能です。(その点では、カート・フィッシャーの理論が非常に重要であり、発達の複雑性を理解する助けとなります。)
ただし、本記事の目的は、発達理論の専門書ではなく、インテグラル理論の骨組みをわかりやすく紹介することにありますので、ウィルバーの発達理論をシンプルな形でお届けします。
それでは、各段階について一つひとつ見ていきましょう!
……と言いたいところですが、長くなってきたので今回はこの辺で。
次回は「6つの意識構造の発達段階」について一つ一つ解説していきますので、もし、ご興味のある方は、またIVAPのNoteにお越しください!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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