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完璧よりも完璧じゃないものに、人は惹かれるのかもしれない

ザァザァと雨音が鳴り響く朝。分厚い雲が空を覆っていて、太陽の光が全く届かない。私の不安な気持ちをよそに、ツアーメンバーはいつもと変わらない様子で出発していく。ミルフォード・トラック3日目のはじまりだ。

● 前回のお話


この日はトラックの中でも、1番過酷な山道を歩くことになっている。
それなのに朝から大雨だなんて、なんだかついていないなあ。と思いつつ、この地域は年間250日くらい雨が降るらしいから仕方ない、と自分を慰める。

https://a-tabito.jp/world/newzealand/より


大雨が魅せる山の絶景

実は、私は自称晴れ女だ。だから、心のどこかでこのミルフォード・トラックも晴れると信じて疑わなかった。ところがどこっこい。一番晴れてほしい日に大雨が降っているではないか。3日目は特に見どころがたくさん詰まっているのに、朝から大雨で私の心も泣いている。

でも、「雨も悪くないね。」そう思わせてくれた大雨が魅せる山の絶景たちを是非とも共有させてほしい。

1.無数の滝

右も左も急斜面の壁(山)に囲まれている"世界一美しい散歩道"は、ただでさえ迫力がすごいんだけど、この日はレベルが桁違いだった。

昨日まではなかった無数の滝が、大雨の影響で何処からともなくこちらに向かって流れてくる。映画でみるような景色が目の前に広がっていて、恐怖と感動が半々、思わず言葉を失う。

自然が創り出すものは、どうしてこうも恐ろしくそして美しいのだろう。

正直、写真じゃ全然伝わらない・・・


2.天空の丘

急斜面の山道を3〜4時間上り続けていると、濃い霧を残して雨が止んだ。"若さ"を本領発揮する番がきたらしく、オーストラリア人のお父さんに「いや〜君たち早いね!先に行っといで!」と道を譲ってもらう。気がづくと10人以上をごぼう抜きしていた。マリオカートの無双モード(スターのやつ)みたいな。

山を登り切ると、霧の奥の方に小さく十字架が見えた。幻想的な景色の中で、まるで幻が見えているかのように感じる。あれは、一体なんだろう? 引き寄せられるように、近づいていく。

目の前まで来ると、予想よりも遥かに大きい石碑だった。とても神秘的で神様のお墓みたいな、そんなオーラを放っていて、なんとも神々しい。

これは、トラックの開拓者Quintin MacKinnon(クィンティン・マッキノン)を称える記念碑らしい。ちなみにここが、ミルフォード・トラックで最も標高が高い場所にあたる。

せっかくの最高地点だけど霧で景色が何も見えないや。そう思っていると、谷から空へ向かって凄い勢いの風が吹き、見る見るうちに霧が引いていく。そうして、渓谷や雄大なフィヨルドランドの山々が姿を現した。

オーストラリア人のお父さん

白い雲が深い緑の山を纏うように存在し、主役を引き立たせる。コンサートなどでスモークを使ってアイドルを引き立たせる、あれと似ているなあ。なんて、変なことを考える。

お父さんがくれたチョコ

3.ラスボス現る

マッキノン峠の後は、ランチ小屋が待っている。その道中も再び濃い霧に包まれてしまい、周りの景色は真っ白だった。

到着したランチ小屋に入ろうとすると、扉がふたつ。片方には"ガイド付ウォーカー"もう一方には"個人ウォーカー"と書かれている。

個人ウォーカーの部屋は扉が開くと中が見えるようになっているけど、こちらの部屋は二重扉になっていて、中が見えない作りになっている。私が個人ウォーカーだったら、めちゃくちゃ中が気になるだろうな・・・。

このトラック中、要所要所でツアー側の高待遇が目に見えてわかるようになっているなあと感じていたけど、やっぱりだ。まあ、中は大して変わらないと思う。個人ウォーカーの方は入ってないからわかんないけれど。

ただ、中ではガイドが温かいコーヒーやココアを提供してくれる。あとストーブがついている。雨で冷えた体には、とってもありがたい至福の空間だ。

ランチを終えて外へ出ると、真っ白い世界に少し彩りが戻ってきていた。先ほどまでは気がつかなかったけど、目の前には巨大な山(というか岩)があって、その形が浮き上がってきている。漂うラスボス感がなんともかっこいい。

両サイドは崖になっており、強い風が見る見るうちに霧を吹き飛ばし、その霧たちは下へ下へと流れていく。その光景が、まるで天空に浮かぶラピュタの登場シーンを目の当たりにしたようで、とても美しかった。

4.ラピュタを歩く

あとは、ハットに向かって峠をくだるだけ。少しずつ霧が引いていき、山谷の全貌が見えてくると、私たちが今とんでもない場所を歩いていることを認識した。すぐ横には壁のように緑が高く聳え立っていて、ずーっと奥まで続く道。それを見てふと、思った。人って、なんてちっぽけなんだろう。

でも、ちっぽけな私たちの小さな一歩は、確実に前へ進んでいる。

お気に入りの一枚

しばらくすると、青空が戻ってきた。今朝の大雨が嘘だったかのように、霧が消えていく。

太陽の光を取り戻した自然たちは、雨の雫をキラキラと輝かせ、とても嬉そうに見える。光合成のおかげなのだろうか、空気も透き通ってさらに美味しく感じる。

しばらくすると、今日のハットに到着。またまた、美味しいジュースや果物が迎えてくれる(写真ぶれっぶれだけど)。だけど実は、今日はまだ終わりではないのだ。

5.天然の化粧水

ハットから往復1時間45分、ニュージーランドで一番高い滝が見れると言うので行ってみた。荷物は置いて、水分とドローンだけを持って行けるので楽ちんだ。

折り返してきたツアーメンバーたちが口を揃えて"君たち、濡れる準備はできてるか?"と言ってくる。なぜかとっても濡れるらしい。そういうの、大好きだ!

木々の隙間から、顔を出した滝は、遠くの距離からでも水量がとんでもないことが伺えた。ゴォーゴォーというイカつい音や、すでに水がこちらにまで少し飛んできている。どうやら、今朝の大雨でとんでもないことになっているらしい。

凄い勢いで落ちてくる水は、風に乗って小さなミストとなって私の顔に降ってくる。天然の化粧水だ、わーい。でも、目の前まで行くとさすがにカメラを出すことは出来なかった。なので、遠くからパシャリ。

大雨が魅せる絶景から学ぶ

今日がもし晴れていたら見える景色はさらに綺麗だったのだろうか。この日何度もそう頭をよぎったけれど、全部見えないからこその良さがあることを知った。ミロのヴィーナスだって、腕がないからこそ美しいと評価されているように。人は、完璧よりも完璧じゃないものに一層心を動かされるのかもしれない。ミルフォード・トラックの雨は、私にそんな新たな気づきを与えてくれた。

おまけ

個人ウォーカーの休憩所
反対側に私たちのハット
もう山小屋ちゃうやん、ホテルやん
山小屋ちゃうやん、ホテルやん2
安定に独占部屋


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