ニュージーランド4泊5日の山籠りを終えて
はじまる前は、"世界一美しい散歩道"ってどんな場所なんだろう、早く歩きたいな、という気持ちでいっぱいだった。でも、はじまりがあれば終わりが来る。そうわかっていても、今は終わらないでと切に願う。
▼ 前回までのお話
野鳥の鳴き声で目が覚めるAM6:00。ぐっすり眠って体力は回復したけれど、布団から出たくない。だって、今日がミルフォード・トラックを歩く最後の日だから。
トラック最終日
わたしと語る
この日は空気がよく澄んでいて、柔らかい日差しがフィヨルド地形を照らしていた。絵に描いたような景色が360度広がっており、思わずうっとりする。


こんな美しい景色を眺めながら、ふと色んなことを考える。
"会社を辞めてオーストラリアで暮らすようになってから、もう約1年立つのかあ。あんなことや、こんなことがあったな。私はどう成長しただろう" "日本にいる家族や友達にも、この素敵な景色を見せてあげたい。みんな元気にしてるかな" "あの山どうなってあの形に仕上がったんや。自然の力恐るべし" "オーストラリア生活が終わって、日本に帰るまでにやりたいこと、あれとこれとそれと・・・"

この4日間、もちろん電波なんてものは一切届かない。有無を言わさずデジタルデトックスとなる。ここ最近、というか携帯を持ち始めてから今まで、こんなに長くSNSを見なかったことは初めてかもしれない。無作為に流れてくる縦動画に時間を奪われていた日々とは違い、この旅では自分と向き合う時間が格段に増えた。
自分自身と対話する時間は、私にとって大切なひとときだ。

ふり返りおばさん
前項"わたしと語る"がそうであるように、登山を好きな理由のひとつに「自分や仲間と対話する時間が増える」ことがある。今の時代、友達や家族とカフェや家でお喋りする時、常に携帯が私たちの側で見守っていて、通知がブーブー鳴ると気になってソワソワ。すぐに携帯へ手が伸びて集中が分散してしまう。
でも、山に行けば携帯は使い物にならないただの小さな液晶の箱と化する。そして、自分自身や一緒に山を登る仲間との時間に集中できる。

そんな時間の中で、私は過去を振り返ることがある。夫はこれを通称"ふり返りおばさん"と呼んでいる。
記憶というものは曖昧で、特に私は忘れっぽいため、定期的に過去の出来事を振り返って思い出すようにしているのだ。この旅中もふり返りおばさんが何度か登場し、アルバムのページを捲るように、夫とふたり懐かしい思い出話に花を咲かせた。

ふり返りおばさんに便乗して、この旅中にあった"夫の優しいエピソード"を忘れないように振り返ってみようと思う。
実はこの前日、山道を下っている際につまづいてしまい膝を思いっきり地面にぶつけて左足を負傷した。正直、本当に痛すぎて涙が出そうになったくらい痛かった。すると、夫が私のバックパックを自分の前側に背負うからカバンをくれと言う。・・・あなたは仏か?
そんな夫に甘えさせてもらい、パックパックを預けた。(道ゆく人たちの視線に居た堪れず、結局すぐに返してもらったけれど。) 夫の優しいところも、忘れないようにちゃんと振り返らないとね。

ふり返りおばさんと称してちゃっかり惚気になってしまったのは、新婚なので大目に見てください・・・。
高額ツアーvs個人ウォーク
私の記事を読んでくれている人の中には、Ultimate Hikesのツアーを検討している人も多いと思う。ツアー内容によって多少金額は前後するが、24万円の高額ツアーのことだ。
結論から言うと、このツアーに参加して本当によかった。

登山好きとは言え、4泊5日間(トラック自体は3泊4日)と言う長い期間山に籠ったことがないので、どうしても不安は拭えない。その点ガイドがいれば頼れるし、全ての食事を持ち運ばなくて良いのも個人的にはよかった。毎記事言っているけど、山小屋とは思えないクオリティの食事が出てくるので、120%のエネルギー補充ができる。

ただ、山の中なのに不自由がなさすぎて、引け目を感じるほどに快適だった。私が知っているお泊まり登山はお風呂には入れないし、トイレはぼっとん便所だし、寝る時はちょっと背中が痛かったりする。でも、どれもそんなことなくて快適すぎた。快適すぎて引け目を感じるって変な話なんだけど。正直、"貴族の遊び"感は否めない。

でも、ガイド付きウォークを選んだことはとても良かったと思う。知らなかったたくさんの知識や、自分たちじゃ気づかなかった景色を教えてくれるし、ツアー仲間と国際交流もでき、本来なら出会えなかっただろう人たちと絆が生まれる。"世界一美しい散歩道"を歩く貴重な経験を、最も有意義に過ごせることは間違いない。


We made it
そしてついに、ゴールの小屋が見えてきた。全長33.5マイル(約53.5km)のミルフォード・トラックの完走だ。ここまで、長かったようで短かった。夢のような時間だったけど、確かに胸に刻まれている。


小屋に到着すると、4日間ともに過ごしてきたツアーのみんなで「お疲れさまー!」と言い合って達成感を共有する感じが、なんとも胸熱なシチュエーション。We made it!!


時間が来ると小型のボートに乗り込み、向かった先は最後の宿泊施設。ミルフォード・トラックは終わったが、次の日にはミルフォード・サウンドが待っているので後は体をゆっくり休める。
ホテルに到着し、部屋の扉を開けると、ミルフォード・サウンドが見えるプライベートな一室になっていて、「え、ちょっと部屋間違えてない?」となるくらい豪華だった。ほんとに最高。ありがとうございます。

ミルフォード・サウンド
いよいよ本当の最終日、ツアーメンバー貸切で少し大きめのボートに乗りいざ出発。ひんやりと冷たい風が私を包む。山歩きはもう終わったから、と調子に乗ってスカートなんか履いてくるんじゃなかった。


そんな寒さも吹っ飛ぶほど、大迫力の景色が迎えてくれた。広がるミルフォード・サウンドを眺めながら「あと、もう少しで終わってしまうのか」と寂しさが溢れてくる。本当に一瞬の5日間だった。できることなら、初めに巻き戻したい。


自然の中で新たな体験をしたこと、雄大なフィヨルドを眺めたこと、素敵な仲間に出会えたこと、世界一美しい散歩道を自分の足で歩いたこと。
この4泊5日は、他のなににも変え難い宝物になった。またひとつ、かけがえのない宝物を胸に。そうして今回の4泊5日間の山旅は終わりを迎えた。

長くなりましたが、本記事を読んでくださった方、ミルフォード・トラック関連全ての記事を読んでくださった方、本当にありがとうございます。マガジン「ニュージーランドに恋をした」は、まだまだ続きます。今はすでにオーストラリアの生活に戻っていますが、書きたい思い出が他にもたくさん!
良ければぜひ、また覗きに来てください!
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