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個展のコンセプトを振り返る#1ー「溶けない心臓」




個展「溶けない心臓」展示会場写真


「幸福な王子」との再会


個展の構成を考えていた時に耳にしたK-POPガールズグループIZ*ONEの曲に、気になるものがありました。

IZ*ONE (아이즈원) - 비올레타 (Violeta) MV


この曲はオスカー・ワイルド著「幸福な王子」から着想を得て作られた曲だそうです。
「いつも応援してくれるファンに、IZ*ONEのメンバーがツバメとなって愛を返しに行く」そんなことをファンに向けた動画で彼女達が説明していました。


個展「溶けない心臓」展示会場写真
左:「Rear Window211117」2021年、91cm*72,7cm*5cm、綿布にアクリル絵具
中央:「Rear Window211122-2」2021年、91cm*72,7cm*5cm、綿布にアクリル絵具
右:「Rear Window211121」2021年、162cm*122cm*5cm、綿布にアクリル絵具


ツバメ=私?絵具?

幼少期、私は母から色々な童話を読み聞かせてもらっていて、その中に「幸福な王子」もありました。ボロボロになっていく黄金の王子像と献身的なツバメが印象的で、大人になっても覚えていた童話の一つです。

個展について考えていた私は、この「幸福な王子」という存在が妙に引っかかりました。この童話に出てくる王子とツバメって、もしかして私と絵具の関係に似ているのでは?

王子はツバメがいたから、町の人々に金と宝石を配ることができました。私も絵具があるから絵が描けます。逆に絵具は私がいるから絵になれるのです。どちらが王子でツバメかはわかりません。少なくとも私は絵具に助けられています。

王子とツバメの関係に想いを馳せていくうちに、幸福な王子を個展コンセプトにしようと思うようになりました。


私にとって「幸福な王子」とは


では、私にとって幸福な王子を象徴するものとは?

私がたどり着いた答えは「王子の心臓」でした。物語の終盤、金箔も宝石も失いボロボロになった王子像は、町の人々によって溶鉱炉で溶かされてしまいます。しかし、鉛でできていた心臓だけが残りました。
天国から全てを見ていた神が天使に「この町で最も尊きものを二つ持ってきなさい」と命じ、天使は鉛の心臓とツバメの亡骸を天国へ持っていきます。こうして王子とツバメは楽園で永遠に幸せになるのです。

王子は自己犠牲によって周囲を幸せにしようとし、最後まで実行しました。
エジプトへ渡る予定を取りやめ、王子の手伝いをする覚悟を決めたツバメも最後は王子の足元で息を引き取ります。

自分たちがどんな最後を迎えるのか、彼らはどこまで考えていたのかはわかりません。しかし彼らはやり遂げたのです。その強い想いを具現化したものが「鉛の心臓」なのではないか、と私は考えました。


個展「溶けない心臓」展示会場写真
左:「OSCA211101」2021年、145,5cm*112cm*5cm、綿布にアクリル絵具
中央:「OSCA211002」2021年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
右:「Rear Window211122-1」2021年、41cm*27,3cm*5cm、綿布にアクリル絵具


作家ステートメント


下記は当時個展会場に掲示していただいていた作家ステートメントになります。


個展タイトル「溶けない心臓」


絵を描こうとした人間が現れた時、炭や土が絵具となった。長い時間をかけて画家と絵具は共に多様化し、現代には絵具に限らず様々な描画道具が誕生している。絵画の発展に描画道具の豊富さは密接に関係しているだろう。
現代には数え切れないほど描画材料があるが、そこには人類未到の絵画表現へ到達するためのヒントが隠されている。私は画家としてそのヒントを見つけ、新たな境地へ絵画と辿り着きたい。
溶鉱炉の中に残った王子の心臓と、王子に最後まで寄り添ったツバメが楽園で幸せになったように、私は絵画と幸せになりたい。



私の想いと覚悟を表明しよう、そんな気持ちで書いた文章です。
個展準備中に愛用していた画材が取扱中止になるなど、大変心を乱す出来事もありましたが、どうにか辿り着いた答えを発表できた場になりました。



【展示概要】


家田実香個展『溶けない心臓』
会期:2021.12.4-12.12(会期中無休)
営業時間:12:00-19:00 (最終日は18:00まで)
会場:ロイドワークスギャラリー
〒113-0034
東京都文京区湯島4-6-12 湯島ハイタウンB棟1F
https://roidworksgallery.jimdo.com/
TEL: 03-3812-4712


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