見出し画像

私たちは本当に自分の意思で選んでいるのか?|個展コンセプトを振り返る#2「神様はサイコロ遊びをさせる」


以前、クトゥルフ神話TRPGのシナリオ作りについて書きましたが、実はTRPGは私の制作にも影響しています。




個展「神様はサイコロ遊びをさせる」展示会場写真
「Rear Window221102-2」2022年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
Photo by Koichi Nishiyama


「神はサイコロを振らない」



物理学者アルベルト・アインシュタインが残した言葉の一つに「神はサイコロを振らない」があります。

この言葉を知った当時、私の生活にはサイコロがたびたび登場していました。というのも、サイコロを使用して遊ぶゲーム「クトゥルフ神話TRPG」で遊んでいたからです。


クトゥルフ神話TRPGとは

クトゥルフ神話TRPGは、会話とサイコロを使って遊ぶテーブルトークRPGです。

クトゥルフ神話TRPGで遊んでいると、プレイヤーは自分のキャラクターを動かす時に「○○します!」と宣言したり、行動が成功したか失敗したかをサイコロの出目で確認する時間が発生します。自分のキャラがこれから何をするか、どうしたいか、をはっきり言語化してキーパーに伝える必要があるため、ゲーム内で発生するすべての行動に明確な意思があります。

実生活でも、人は常に何かを選択し続けていて、そして何かを選択するたびに選択の結果を実感します。しかし、あまりにも常に選択をし続けているので、選択する瞬間を意識していないように感じます。
何か情報を得る時も取捨選択しているはずですが、何を捨てているのかを意識していないような気もしていました。

私たちはいったいどこまでを自分の意思で決めているのでしょうか。そして決めた選択についてどこまで把握しているのでしょうか。



左から順に「Rear Window221102-1」2022年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
「Spot Hidden230831」2023年、33,3cm*24,2cm*2cm、綿布にアクリル絵具
「Rear Window230608」2023年、91cm*65,2cm*5cm、綿布にアクリル絵具
「Rear Window230829」2023年、91cm*65,2cm*5cm、綿布にアクリル絵具
Photo by Koichi Nishiyama


サイコロの音には意味がある


クトゥルフ神話TRPGプレイ中にサイコロを振る音がする、ということはその瞬間に必ず何かが発生しています。サイコロの出目によっては失敗に終わり、結果的には何も起こっていないように見える時もありますが、何の意味もなくサイコロを振る音がすることはまずありません。
なので、プレイヤーが何も行動を起こしていないときにキーパーが説明なくサイコロを振ると、ほとんどのプレイヤーは「今のダイスロールは何だ」「何が起こるんだ」「怖い」と不安を口にすることが多いです。
それぐらいクトゥルフ神話TRPGの中でサイコロという存在は大きいのです。


私が愛用しているTRPG用のサイコロ。
4面、6面、8面、10面、20面がある。
10面を2つ同時に振ることで100面として使用することもできる。


絵画鑑賞中の脳内に問いかける


どこへ行くか、絵を眺めるか、どれぐらい眺めるか、次の絵を見るか、部屋からいつ出るか、ギャラリースタッフに話しかけるか…これらの行動の選択はTRPG内だと全て口頭でキーパーに向かって宣言することで実行されます。
そして、もし上記にあげた行動がTRPG内でのものだった場合、キーパーはプレイヤーが絵を眺めたいと宣言したときにサイコロを振るよう指示を出すと思われます。なぜなら絵とは多くの情報が内包されている物体で、その情報をどれぐらい得ることができたかを確認する必要があるからです。
出目が良ければ絵から多くの情報を得ることに成功し、出目が悪ければ絵から限られた情報しか得られなかった、という結果になるでしょう。



正面:「Rear Window230830-2」2023年、162cm*112cm*5cm、綿布にアクリル絵具
右:「Rear Window221102-1」2022年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
Photo by Koichi Nishiyama


TRPGで遊んでいるうちに「私たちは認識していないだけで、実は常にサイコロを振っているのかもしれない。そしてその出目によって行動をしているのかも……神様はサイコロを振らないかもしれないが、私たちにサイコロ遊びをさせているんじゃないか。」そんなことを考えるようになりました。

そこで、個展展示会場にサイコロを転がしたときに鳴る音を流し続けてみようと思ったのです。
実際に私がTRPGで使用していた10面ダイスを2個使い、サイコロが転がる音を録音しました。想定していたより軽い音になりましたが、加工などもせずそのまま使用することにしました。


展示で使用したスピーカー
Photo by Koichi Nishiyama


絵を眺めながらサイコロの音を聞くことで、今この何気ない瞬間にも私たちはサイコロを振っていて、そしてその出目によって何かが起こっていることを認識するきっかけになればいいな、と考えました。


左から順に「Rear Window221102-2」2022年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
「Rear Window230830-1」2022年、53cm*45,5cm*5cm、綿布にアクリル絵具
「Spot Hidden230820」2023年、33,3cm*24,2cm*2cm、綿布にアクリル絵具
Photo by Koichi Nishiyama



「神様はサイコロ遊びをさせる」


当時の私が書いた展示コンセプト文章は下記のものになります。


展覧会コンセプト


絵を見ている時、人は無意識に自分自身の中にある経験や知識の引き出しを開けている。引き出しを次々と開けているうちに絵とは関係がないはずの思い出に繋がっていく事もあるだろう。ただ、引き出しが一切開かない事もある。それは決して悪い事ではない。我々はいつだって自由に意思や行動を選択できるはずだし、そうあるべきなのだ。

私の作品は絵具が持つ美しさとその美しさが最大限に引き出された絵画表現についての研究記録である。モチーフや物語を排除し色と質感に焦点を当てている。いつだって絵具のために絵を作り、画面の中で取捨選択を繰り返してきた。

我々はいつだって何かをする時に選択をしている。その選択が成功する場合もあれば失敗することもあるだろう。成功失敗という重要な結果はどのようにして決まるのだろうか。もしかすると、想像以上に呆気なく決まっているのかもしれない。



展示記録動画


展示会場で流れていたサイコロの音は下の動画からお聞きいただけます。




【展覧会概要】

「神様はサイコロ遊びをさせる」
会期:2023年9月2日(土)〜9月24日(日)
営業日:水曜日〜日曜日
休廊:月曜日・火曜日 (※9/18は営業致します)
営業時間:11:00〜19:00
場所:KATSUYA SUSUKI GALLERY(〒152-0022 東京都目黒区柿の木坂1−32−17)



前回の個展コンセプト記事

続きの個展コンセプト記事


いいなと思ったら応援しよう!

家田実香(Ieda Mika) 読んでいただきありがとうございます!いただいたチップは制作やアトリエ維持費に使わせていただきます。