夏を飲む
こんにちは黒パグです🐾
夏の定番とはなんでしょうか?人それぞれ想像するものは違うはずです。では黒パグ家はどうなのでしょうか。
そんな感じのゆるい夏を感じていただけたら幸いです。
以下本文
わが家の夏には、決まった音がある。
冷凍庫を開ける音。
ICE BOXのふたを剥がす音。
そして、三ツ矢サイダーの栓が「しゅっ」と夏を解放する音。
グレープフルーツ味の氷へ、透明な炭酸を注ぐ。氷の隙間から細かな泡が立ち上がり、ぱちぱちと弾ける。見慣れた光景なのに、毎回少しだけうれしい。
誰が最初に考えたのかは知らない。
けれど、ICE BOXに三ツ矢サイダーを注いだ最初の人は、きっと原初の炎を手に入れた人と同じ顔をしていたと思う。
「これだ」
そう言ったかどうかは知らないが、少なくとも心の中では叫んだはずだ。冷たいものと冷たいものを合わせたのに、発見としては炎に近い。
子どもたちは、部活から帰ると冷凍庫へ向かう。日に焼けた顔で、ただいまより先に「ある?」と聞く日もある。
あるよ。
その一言で、玄関から引きずってきた夏が少し軽くなる。
妻は仕事を終え、ようやく肩から力を抜く時間にこれを作る。今日あったことを話す日もあれば、何も話さず氷をかじる日もある。ぱちぱちと炭酸が弾ける音が、会話の代わりになる夜もある。
私は、リモートワークを終えてから。
パソコンを閉じ、通知を止め、冷凍庫を開ける。ICE BOXを取り出し、三ツ矢サイダーを注ぐ。もはや飲み物というより、業務終了を宣言する儀式である。
今日の仕事は、ここまで。
そう言う代わりに炭酸を注ぐ。
ICE BOXにはナトリウム、ビタミンC、クエン酸が入っている。けれど、それらを夏の飲み物として完成させる最大の立役者は、三ツ矢サイダーだと思っている。
少し溶けたグレープフルーツ味の氷と、甘い炭酸が混ざる。最初の一口はサイダーに近く、最後の一口は果汁のように濃い。時間とともに味が変わるから、飲み終わるまでがひとつの小さな物語になる。
特別な材料ではない。
特別な作り方でもない。
それでも、子どもたちには部活から帰った時間の味であり、妻には仕事を終えた時間の味であり、私には一日の電源を落とす味になっている。
同じものを飲んでいても、そこに入っている一日はそれぞれ違う。
夏という字を
氷のカップに入れてみる
サイダー注げば
今日がほどける
今年も冷凍庫にはICE BOXがあり、冷蔵庫には三ツ矢サイダーがある。
誰かが最初に生み出した小さな炎を、わが家は今日も冷たく飲んでいる。

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