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氷河期世代AD、テレビの片隅で。#25「テリーさんが笑い夢は叶った。誰の人生にも物語がある」


娘が2人生まれた。

娘たちが生まれて、

思ったことがある。

僕は両親に、

大切に育ててもらった。

だから今度は、

僕が娘たちを、同じように幸せにする番なのだと思う。

両親が僕にしてくれたように。

あの100万円だけじゃない。

何度失敗しても、

見守っていてくれたことも含めて。

いつか娘たちが大人になった時、

「幸せだったな」

「大事に育ててもらったな」

そう思ってもらえるように。

そんな想いを抱きながら僕は、

今もテレビの現場にいる。

片隅から、

“真ん中少し右斜め” くらいには

来れたのかなと思う。


いろいろあったけど、

僕は自分の過去を、

美談にしたいわけじゃない。

AD時代の理不尽。

パワハラ。

怒鳴られる毎日。

無職。

あの時は夢中だったから、

そんなもんかと思っていたけど、

今振り返るとかなりキツい。

あんな経験、

しなくて済むなら、

しない方が絶対いい。

普通に考えて、

しんどすぎる。

でも、

無駄ではなかったとも思う。

あの頃、

どうにもならない環境の中で、

なんとか生き残ろうとしていた。

たぶん、

その経験が今の僕を作っている。

そして、

僕が今もテレビの現場にいるのは、

才能があったからではない。

運が良かった部分もある。

たくさんの人に助けてもらった。

でも、

一つだけあるとしたら、

テレビの世界を、好きなことを、

やめなかったことかもしれない。

AD時代、

辞めていった人をたくさん見た。

みんな弱かったわけじゃない。

むしろ優秀な人もいた。

ただ、

あの環境は普通にキツかった。

だから辞めるのも当然だったと思う。

僕も何度も環境を変えた。

制作会社も辞めた。

無職にもなった。

でも、

テレビの仕事そのものはやめなかった。

しがみついていた。

だから今も、

こうして好きなことを

仕事にできているのかもしれない。


自分の人生を振り返って思った。

「僕の人生、けっこう色々あるな」

と。

でも、

たぶん誰だってそうなのだと思う。

誰の人生にも、

その人だけの物語がある。

テレビのディレクターになった話だけが、

物語じゃない。

何年も部屋から出られない人にも、

物語はある。

出たいのに出られない。

明日は出ようと思う。

でも今日も出られなかった。

そんな葛藤にも、

その人だけの物語がある。

物語には、

主人公がいる。

味方もいる。

そして“悪役”もいる。

僕の人生にもいた。

左目殴りの田中。

チョコボール西山。

恫喝エロメガネ竹田。

今思うと、

あの人たちは、

僕の人生の名悪役だった。

あの人たちのおかげで、

僕は困ったし、

怒ったし、

泣きそうにもなった。

でも、

少しだけ物語も面白くなった。

だから、

感謝している。

もちろん、

もう会いたくはないけど。

たぶん、

人生にドラマの大きさは関係ない。

テレビに出る人生も、

誰にも知られない人生も、

同じように誰かの物語。

そしてその物語の主人公は、

自分しかいない。

だから僕は思う。

せっかくなら、

少しでも面白い物語にした方がいい。

ハッピーエンドかどうかは分からない。

でも、

自分で続きを書けるうちは、

まだ終わりじゃない。

自分の物語は、

自分で決めていい。

世の中、

理不尽なことばかり。

テレビ業界に限らない。

頑張っても報われないこともある。

嫌な奴もいる。

でも、

いい人もいる。

そして難しいのは、

自分にとって嫌な奴が、

他の誰かにはいい人だったりすることだ。

逆もある。

人間って、

ややこしい。

その一方で、

環境を変えるたびに、

新しい出会いもあった。

戦友のディレクターたち。

広末直子(愛妻)。

王騎将軍。

そして、

今まで出会ってきたたくさんの人たち。

もし、

最初の会社で我慢し続けていたら、

会わなかった人もたくさんいると思う。

だから今は、

あの頃に環境を変えたことが、

間違いだったとは思わない。

嫌なヤツのせいで、

自分の好きなことまで

諦めるなんてバカらしい。

だから、

もし今、

しんどい場所にいる人がいたら、

逃げてもいいと思う。

環境を変えてもいい。

もちろん、

僕に偉そうなことは言えない。

僕自身、

今でも苦手なことはたくさんある。

字は相変わらず汚い。

道もよく迷う。

簡単なことが苦手だなと思うことも多い。

でも、

物語を考えることは好きだった。

企画を考えることも好きだった。

だから、

人には得意不得意があるのだと思う。

字が上手く書けなくてもいい。

勉強が少し苦手でもいい。

簡単なことがうまくできなくてもいい。

その代わり、

自分が少しだけ得意なこと、

少しだけ好きなことを見つければいい。

僕はたまたま、

それがテレビだった。

どこかに、

自分に合う場所があるかもしれない。

もちろん、

見つかる保証なんてない。

誰にも分からない。

だから、

見つかるまで探せばいい。

好きなものが一つあるだけで、人生は少し楽しくなる。

だから、

自分で人生を終わらせるようなことは、

絶対にしないほうがいい。


今、

テレビは、

「オールドメディア」

とか、

「マスゴミ」

とか、

いろいろ言われる。

実際、

ダメな部分もたくさんあると思う。

でも、

この業界には、

本当に面白い人たちもたくさんいる。

東大を出たテレビ局員もいる。

ヤンキー上がりの制作会社スタッフもいる。

何をやっていたのかよく分からない人もいる。

そんな人たちが、

同じ番組を作っている。

たぶん、

こんな職場はなかなかないと思う。

だから面白いのかもしれない。


そういえば、

ディレクターになってから、

僕が子どもの頃に夢中で見ていた

「元気が出るテレビ」を作った、

テリー伊藤さんが、

僕が担当する番組に出演してくれたことがあった。

収録中、

テリーさんは、

僕が作ったVTRを見て、

ずっと笑っていた。

そして収録が終わった後、

「面白かったよ」

と言ってくれた。

たった一言だった。

でも、

すごく嬉しかった。

子どもの頃、

テレビの前で大笑いしていた番組の演出家に、

面白いと言ってもらえたのだから。

たぶん、

小学校の頃、作文で書いた夢、

「テレビのディレクター」は、

ちゃんと叶ったのだと思う。

昔、

僕が「元気が出るテレビ」を見て、

この世界に憧れたみたいに、

いつか、

僕の作った番組を見て、

テレビの世界に興味を持つ人が、

1人でもいたら嬉しい。

僕が誰かの「元気が出るテレビ」を作れたらいいなぁ。

そして、

この文章も、

誰かに届けばいいなと思う。



で、

「氷河期世代AD、テレビの片隅で。」

映画化決定。

キャスト。

僕……吉沢亮。

広末直子……広瀬すず。

桜井さん……小沢仁志。

とかになればいいなと思う。

ならないけど。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

「氷河期世代AD、テレビの片隅で。」は、これで一旦、完結です。

でも、書きながら思い出した話がまだ少しあります。

家族への手紙だったり、

今では絶対に放送できなかった企画だったり、

幻の企画書だったり。

本編のおまけみたいなものですが、

余談として少しずつ書いていこうと思います。

もしよかったら、

引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

ありがとうございました。


#テレビ業界 #創作大賞2026  
#お仕事小説部門 #実話


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#26 (余談)  「遺言。いや、まだまだ生きるけど!僕の物語は続くけど!」

シリーズを書き終えて思ったこと。
妻へ、娘たちへ、両親へ、祖父母へ。
そして、AD時代の自分へ贈る手紙を書きました。
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📚 シリーズを最初から読む方はこちら

『氷河期世代AD、テレビの片隅で。全話まとめ』

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