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雪の降る街で 第七章 「疑念」 ②(Special Thanks clutch0105様/アホウドリの空MV作成いただきました!)

 本編に入る前に、皆さま、な、な、なんと、clutch0105様が、以前に作って下さった「アホウドリの空」の素晴らしい主題歌に、更に、私が作ったAIイラストを、な、な、何と動画にしてMVを作って下さいました!😭😭😭

 ↓こちらです! 2つあります!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 信じられない!:(;゙゚'ω゚'):
 夕陽と敏生が動いてるよー! イチャイチャしてるよー! チューしてるよー!

 なるほど、note大学のAI音楽コラボ部の活動なのですね😌 嬉しくて仕方ないです!🥹

 clutch0105様! いや、クラちゃん! 本当にありがとうございました😭😭🙇‍♀️🙇‍♀️🙇‍♀️

 第二弾で場面追加もトライいただけるとのことなので、またご紹介させていただきます!

 それでは本編に入ります💦

↓マガジンはこちらです。

この作品はフィクションです。実在の人物団体事件出来事とは一切関係ございません。


第七章 「疑念」 ②


「いつまでも暗い顔してんじゃねえよ。とりあえずこれでも飲んで体あっためろ」

 光一がマグカップを受け取ると、矢部はドカッと隣に腰を下ろした。

「ま、あれだ。菜々ちゃんなら大丈夫だ」

 能天気な声で話しかけてくるポン友。

「何でお前に分かるんだよ」

 ぶっきら棒に返す。

 一人にして欲しかったが、彼なりの気遣いだと分かっていたので、無下に追い払うことはしなかった。

「それはほら、俺の予感?」
「……」
「うそうそ。茜ちゃん占い得意でさ、前に占って貰ったんだよ。今年の俺は絶好調なんだと」
「……お前が絶好調で俺に何の関係があるんだよ?」
「いいか? 俺が絶好調ということは、親友のお前に悪いことは起こらない。お前に何かあったら俺はハッピーになれないからな」

 真顔で話す矢部に、光一は呆れたように鼻を鳴らした。

「どういう理屈だよ。ラッキーとハッピーを履き違えているだろ?」
「似たようなもんだろ?」
「バカじゃねえの?」

 光一が小突くと矢部も笑いながら応戦する。

 辛い時も苦しい時もずっと一緒だった仲間。光一はひと息つくと、マグカップに口をつけた。

 即席のポタージュが冷えた身体に染みる。

「コウ、煙草あるか?」
「ああ、悪い。煙草止めたんだ、俺」
「マジで?」
「菜々が身体に悪いっていうから」
「そっか」

 いつもならここで入る突っ込みも今日は来ない。明るく振舞っている彼とて、大勢の仲間を失った現実はそう簡単に払拭できるものではない。

「なあ」
「ん?」
「十六旅団っていったら……、逸見だよな」

 矢部が夜空を見上げながら呟く。仲の良かった同期の一人。

「……ああ」
「あの底抜けのバカが反乱なんかに加担するわけないと思うんだ」
「ああ、あいつバカだったもんな」
「うん、バカだった」

 昔を思い出し、二人で静かに笑う。

「あいつ、今頃きっと苦しんでると思う」
「うん」
「助け出そうぜ。俺たちの手で。必ず」
「ああ、必ず」

 光一は頷くと、冷めてしまった残りのポタージュを一気に呷った。
 
          *
 
 藍はそっと目を瞑ると、物音を立てぬようその場を離れた。

 見上げるのは透き通った冬の夜空。持ち場に戻ると、黙々と八九式自動小銃の手入れをしていた相原が顔を上げた。

「どうだった?」
「先客ありだったわ。二小隊の矢部君。口惜しいけど、男同士の友情って羨ましい」
「言った通りだろ? こういうときは上官が出ていくよりも仲間の方が良いんだって」
「本当ね。ジンさんには教えられてばかりだわ」

 藍は寂しそうな笑みを浮かべると、遠慮がちに相原の横に腰を下ろした。

「で、藍ちゃんはどうなんだ?」
「え?」
「溜まってるもの全部吐き出しちまえよ。おじさんが受け止めてやるぜ?」
「あたしは別に……」
「そうか? 時々泣きそうな顔してるよな?」

 山本山以降、最先任幹部として大隊再編に頭をフル回転させてきた藍に、感傷に浸る暇など微塵もなかった。

 だから相原が言うのは恐らく、一戦車に異動してからの日々のことを指しているのだろう。

 彼に掛かれば全てお見通し。それが大隊の上級曹長たる所以。

「……多分、彼なんです」
「彼?」
「あたし達の、敵」

 相原が目を丸くする。

「彼って、例の藍ちゃんの想い人か?」

 藍はそっと頷いた。

 実は相原だけには早い時期に打ち明けていた。自分が戦車隊に来た理由を。もっとも相原には一戦車への異動は左遷ではなく栄転だ、と、いたく叱られたが。

「そういうこと、か」

 相原が組みかけの小銃を再び手に取る。

「人生ってやつは、本当に上手くいかんもんだな。神様はいつだって意地悪だ」

 相原はしみじみと呟くと、作業を再開した。

 見事な手つきで組み上げられていく小銃を藍はじっと見つめていたが、やがて視線を逸らすと、抱えた膝に顔を埋めた。

「……何も、言わないんですか?」
「ん? ほかに何かあるか?」
「あたしのこと信じるの? だって、あたしは……」
「この騒ぎを起こした張本人の元カノだから裏切るってか? 俺たちの知っている藍ちゃんがそんなことするわけないだろ」

 作業しながら憤った様子で吐き捨てる彼。

「ジンさん……」

 胸が熱くなり、必死に感情を宥める。

「これでよし、と」

 相原は組み上がった小銃をそっと置くと、藍の方に振り向いた。

「いいぞ、ここで思い切り泣いちまえ。そしてとっとと忘れろ」

 父親のような優しい目。歪んだ唇は最早隠しようが無い。

「指揮官が泣くわけにはいかないわ。まして今は最先任として大隊を預かる身なのよ?」

 精一杯の己への抵抗。去来するさまざまな想いを振り払う。だが。

「強がんなよ。藍ちゃんはいつだって頑張ってる。だからこんな時くらい素直に泣いとけ」

 自分を力強く肯定してくれる言葉。それが藍の心を解きほぐす。

「この先、涙はきっと出なくなる。戦争ってのはそういうもんだ」

 ズキンと心に刺さる一言。

 恩人の死を前にして一滴たりとて零れなかった涙。それは決して訓練によるものなどではない。

「……上級曹長殿。お胸をお借りしてもよろしいかしら?」
「おっしゃ。光栄でございます、小隊長殿」

 おどける相原に藍はクスクスと笑ったが、それは時を経ずに嗚咽へと変わった。

 限界だった。何もかも。

 堪えていた涙も一度零れると、あとは感情の赴くままに溢れ出すだけだ。

 山本山での戦闘以来、いや、一戦車への異動以来、張りつめていたものが一気に解放されると、藍は相原の胸に縋り顔を埋め、声を上げて泣いた。

 相原は何も言わず、ただグシャグシャと藍の頭を掻き回してくれる。

 鬼軍曹の無骨な手がとても温かくて、溢れ出した涙はもう止まる術を知らなかった。
 
          *
 
「この陰鬱な曲は何とかならんのか」

 トントンと指先が机を叩く。

 大音量で鳴り響く、混声四部の荘厳なミサ曲。明らかに場違いな曲だったが、音源がモニター画面の向こうでは切りようもない。

「ジョバンニ・ダ・パレストリーナ。教会音楽を確立したルネサンス期の巨匠です。曲名はSitivit Anima Mea」

 その返答に応える者はなく、誰もが固唾を飲んで画面を見守る。

 映っているのは武装した男達。機関拳銃を携え、物音ひとつ立てずにミサが鳴り響く廊下を進んでいく。

〝こちら一班。Bポイントをクリア〟

「了解。二班、状況はどうか?」

〝こちら二班、Eポイントをクリア。突入可能だ。指示を仰ぐ〟

 報告を受けた無線担当の隊員が振り返る。

「突入させますか?」
「危険です。相手の武装が分からない以上、ここはひとまず待機をした方が良いかと」

 険しい表情で遮ったのは、陸上自衛隊の連絡幹部である三等陸佐。

「そんな悠長なことは言ってられん。MHK放送センターがゲリラに占拠されているんだぞ? あんたらの警備の間隙を突いて」

 憮然とした表情で噛みつくのは警察庁の担当官である警視長。

「警備員として随分前から紛れ込んでいたようです。我々としては想定外でした」
「言い訳はいい。ここは警察でやらせてもらう」

 警視長が毅然と言い放つ。

「相手は恐らく、それなりの訓練を積んだ自衛隊員です。レンジャーであれば数名でも確実に手古摺る。我々も空挺団を出します」
「馬鹿にしているのか? SATは極めて優秀な警察官で編成された特殊部隊だぞ?」
「彼らは警察が相手にしているそこらの犯罪者たちとは訳が違う。貴方達は正規に訓練されたコマンドーの恐ろしさを知らない」
「話にならんな。あんたはそこで見ていたまえ。我々の実力を」

 担当官は三佐を睨み付けると、マイクに口元を寄せた。

「こちら指揮所。突入を開始せよ」

〝了解した。一班が先に突入する〟

〝二班了解。一班の合図で突入を開始する〟

 次の瞬間、画面がホワイトアウトする。突入部隊が閃光手榴弾を炸裂させたのだろう。

〝突入!〟

〝行くぞ! 二班も続け!〟

 鳴り響く銃声。隊員達のヘッドギアに装着されたCCDカメラの映像が激しく揺れる。

〝いたぞ!〟

〝武器を捨てて手を頭の上に乗せろ!〟

 画面越しにぼんやりと見える敵の姿。

 言われた通り大人しく手を頭の上に乗せている。確認できる人数は一人、いや二人か。

「なんだ、大したことないじゃないか」

 安堵する警察関係者。だが、三佐は突然顔色を変えると、担当官のマイクを奪った。

「ダメだ! SAT! 今すぐ退避しろ!!」

 遅かった。

 次の瞬間、立て続けに乾いた破裂音が鳴り、画像が横向きに倒れた。

〝うわあああああああっ〟
〝ぎゃあああああああっ〟

 幾重にも重なる断末魔の叫び。

「おい! どうした! 一班! 何だ今のは! 二班!」

 だが、呻き声ばかりで応答はない。三佐が苦渋の表情を浮かべる。

「罠です。恐らくクレイモアかと」
「クレイ……モア?」
「指向性散弾です。C4プラスチック爆薬の爆発により数百個の鉄球をまき散らし、広範囲の敵を確実に殺傷する。突入部隊は……恐らく全滅したものと思われます」
「そんなことが……」
「これでお分かりいただけましたか?」

 三佐はモニターから静かに視線を外すと、呆然とする担当官を睨みつけた。

「彼らは警察力で対処出来るような相手ではない。これは戦争だ。自衛隊を舐めるな!!」

 そう一喝すると、音声回線を切り替えた。

「作戦指揮所より対策本部へ。作戦は失敗。突入部隊は全滅。立て籠もる敵は数名のレンジャー有資格者と推測。対人障害システムを保有している。空挺団の投入を上申します」

 もっとも最精鋭の空挺レンジャーをもっても、制圧にはかなりの時間を要するだろう。

「Sitivit Anima Mea. 我が心は餓え渇く、か」

 回線の向こうで混乱する対策本部に、三佐は臍を嚙んだ。


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あとがき

 clutch0105様の素敵なPVご紹介の後の、この鬱展開……💧 
 すみません🙇‍♀️

 警察の精鋭部隊SATを無慈悲に殲滅してまで反乱軍がMHK放送センターを占拠した理由とは。

 はい。ついに次号、仲木戸が国民の前に姿を現します。
 ほぼ全て仲木戸です。

 山本山の戦闘以上に、私の神経をとことんまで擦り減らしてくれた第七章の締め括りとなる次回は、10月13日(月)に掲載予定です。

 どうか、刮目してお読みいただけますとありがたいです💦 よろしくお願い致します🙇‍♀️