日清食品は、自ら煽っておきながら日清焼きそばの神粉末を売ってくれない。
家族がいないテレワーク勤務時の昼食は、ささやかな楽しみだ。何を食べるかの選択権は、完全に自分にある。さて、今日私は何を食べたいか… やはり、出社時にも、家族がいる時にも食べないメニューを味わいたい。
よし、決まりだ。
『日清焼きそば』を食すとしよう…
*
1963年に世界初のインスタント焼きそばとして発売された『日清焼きそば』を、私は定期的に食べたくなる。フライパンで仕上げる即席麺の焼きそばは、冷凍麺でもチルド麺でもカップ麺でも再現できない唯一無二の味わいだ。スーパーでそんな想いを巡らせながら、商品を手に取ると、パッケージに見慣れぬ言葉が書いてある。
『神の粉末』…?
▪️付属品を主役にする、斬新なCM
ああなるほど。少し前にCMを観たのを思い出した。付属の粉末ソースを『神の粉末』と称して、炭水化物を食べないGACKTがゆで卵にかけて食べていた。

焼きそばなのに、麺を食べないタレントを起用するのは日清食品デフォルトのおふざけなので驚くには値しない。しかし、粉末ソースを前面に打ち出す手法は斬新だ。確かにあの粉末があってこその日清焼きそば。フライパンで乾麺を茹でる最終段階で、あの粉末は急速に水分を吸収する事で仕上がりに香ばしさをもたらす。数ある袋麺の中でも、粉末である必然性がこれほど高い商品もないだろう。
▪️古参ファンも、神の粉末に着目しない
しかしその粉末ソースも、食べる時点では焼きそばと一体化し、粉の形を留めていない。『神の粉末』は、調理過程にしか存在しないのだ。故に、長年の日清焼きそば愛好者である私も、そこまで粉末ソースを意識した事はなかった。そういう意味でこのCMは非常に良くできている。食べた事がない人は『え?神の粉末って何?』と興味を持つし、私のようなオールドファンは粉ソースに改めて想いを馳せる事でますます愛着を持つ。確かにあの粉末は神と言っても過言ではないと。何せ、ゆで卵に直接かけても美味いのだから…
『直接かける…?』
▪️もう、調味料にすればいいのでは
日清焼きそばの味の決め手は、間違いなくあの粉末ソースだ。1963年の発売以来、その基本的な調合はおそらく変わってないだろう。ということは、あの粉末ソースは60年以上に渡り国民レベルで愛される調味料と言っていい。つまり、そのままかけてもいいのだ。ゆで卵に限らず、あらゆる料理や食材に…CM動画を改めて確認すると、当のGACKTも『この粉は、あらゆる食に旨さを授ける』と言ってるではないか…世間では『ほりにし』に代表される万能スパイスが人気だが、そんなものは『神の粉末』に比べたらポッと出だ。焼きそば以外でも活用すればいいではないか。神の粉末そのものを調味料として…
▪️自ら煽っておきながら、販売はしない
このアイデアを、当の日清食品は気付いているのだろうか?調べてみたが、少なくとも日清食品が神の粉末ソースを単体で販売している様子は無さそうだ。しかしあれだけのトップメーカーが、自らゆで卵に振りかけておきながらその発想に至らないとは考えにくい。ひょっとして、大して旨くないのだろうか…?そうだ、試してみればいいではないか。今手元にあるこの『神の粉末』で。少しだけこの粉末ソースを残しておいて、後で何かにかければいいのだ…
いや、出来ない。
目の前のフライパンの中で程よくほぐれた麺たちは今、『神の粉末』の投入を待っている。この粉末を一振りたりとも減らそうものなら、もう日清焼きそばの味わいは台無しになる。ボトルのウスターソースを追加するなどもってのほかだ…
*
そう、我々は試せないのだ。『神の粉末』の調味料としてのポテンシャルを…その状況は『神の粉末』が付属品である限り永遠に変わらない。『神の粉末』を、調味料として活用したいほど『日清焼きそば』を愛しているが故に、神の粉末を無駄には出来ない…
なるほど…おそらく日清食品は、この葛藤を予測している。だから敢えて『神の粉末』を単体で販売しないのだ。
神への如き憧れが、これからも続く様に…
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