【連載小説】w 「あたしの道草」②
(二)
同じサークルの女友達にリエちゃんっていう子がいるんだけど、最近彼氏が出来たらしいんだよね。
大学のサークルの先輩でサカガミさんっていう人。
もう卒業しちゃったんだけど、あたしも知ってる人で、OBも交えたサークルの飲み会でどうもそういうことになったみたいなんだよね。
うん、悪い人じゃないと思うよ。一年生のときに、あたしにも色々教えてくれて、親切な印象がある。
サークルに新一年生が入ってきたとき、あたしがそのコ達のことを「コーハイ」って呼んでたら、サカガミさんが
「ミナシロ、山下は確かに後輩だけど、いちいち”山下後輩”っていう言い方はしないんだよ」
って教えてくれた。
あたしは、親の仕事でヨーロッパを転々としていたときに、パパのおすすめのショーンなんとかっていう渋くて有名な俳優が出ている映画をDVDで観て、日本人は「センパイ」「コーハイ」って呼び合うって言ってたから、そうだと思って新一年生のコを「山下コーハイ」って言ってたんだよね。
そしたら、そんな言い方はしないって。
「センパイ!」「コーハイ!」ってなんかかっこいいなあって思ってたから、軽くショックだったんだけど、サカガミさんが教えてくれてよかった。
でもよく考えたら、あたし高校生のときも下級生をコーハイって言ってたから、もしかしたらみんな心の中ではおかしいな、と思ってたのかもね。
そのころ、あたしはそれ以外にも色々と変なことを言ってたらしいから、「コーハイ」とかその程度ではみんな驚かないくらいになっていたのかもしないけどね。
でもセンパイには「サカガミセンパイ」って言うこともあるって、言わないのはコーハイだけだって聞いて、あたしは、やっぱり日本語は難しいって思ったんだよね。
もちろん、あたしは日本人だから日本語はネイティブなんだけど、海外の生活が長かったから日本語の微妙なニュアンスとかがちょっと苦手なんだよね。
あたしが好きな日本語で「おっちょこちょい」っていうのがあるんだけど、覚えたての頃は「おっちょこちょいちょい」なのか「おっちょこちょいちょいちょい」なのかわからなくなることがあって、適当に使ってたんだよね。
弟のケンタがまだ今より小さい頃に、あたしが「おっちょこちょいちょい」って言ってたら覚えちゃって、この「ちょいちょい」っていうのが楽しいみたいで「おっちょこちょいちょいちょい」って勝手に言ってて、あたしが「おっちょこちょいちょい」が正しいと言ったら、パパが「正解は”おっちょこちょい”だよ」って言って大爆笑。
あたしは、いまだにどっちかわからなくなって間違えることがある。
ケンタは、日本の学校に行くようになると、すぐに変な言葉をたくさん覚えて、ママに怒られてた。ある日、誰に聞いたのか「おっちょこちょい」と同じ意味だからって言って「バカまる出し」っていう言葉を覚えてきたけど、まる出しはマズイでしょ。あたしだったら、、、。
「ふがっ!!」
目の前の鼻が光ってるおじさんが、その鼻をいきなり鳴らしたので、あたしの思考はそこで止まってしまった。
おじさんは、自分のイビキみたいな音に自分でビックリしたみたいで、辺りを寝ぼけたような顔で見まわしていたけど、実は目の前のあたしが一番驚いてた。
あたしは、驚いておじさんの顔をずっと見てたんだけど、おじさんがそれに気が付いてあたしを見て、目を逸らして、もう一度見て、また逸らした。
もしかしたら、あたしの鼻が光ってたから二度見したのかと、一瞬思ったんだけど、さすがに違うよね。
とにかく、あたしは、まあ弟のケンタもそうなんだけど、日本語がちょっと変なときがあるし、ニュアンスもよくわかってなかったり、勘違いしていることも多いんだよね。
そのせいで、よく笑われるんだけど、でも仕方ないよね。
「あたしの道草」③へ続く
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