「ある日、突然傘が花柄になった」
私の傘は花柄になった!
社会に出て、すぐの会社員だった頃のお話です。
ある朝、雨が降っていました。
私は傘をさして出勤しました。
特別お洒落な傘ではありません。
落ち着いた色の、ごく普通の傘です。
会社には部署ごとの傘立てがあり、私はいつもの場所に置きました。
その日の帰りには雨が止んでいたので、傘はそのまま会社に置いて帰宅。
そして翌日。
昼過ぎに、よく話をする同性の先輩が近づいてきました。
手には一本の傘。
しかも、花柄。
なかなか素敵な傘です。
「昨日、帰りに傘借りていったら、飲み屋に忘れてきちゃって。ごめん。」
その瞬間、全てを理解しました。
どうやら私が帰った後、先輩は私の傘を借りて帰ったらしいのです。
そして飲み屋さんに置き忘れたらしい。
電話したけど、もう傘はなかったそう。
さらに、休憩時間に新しい傘を買ってきてくれたらしい。
「似合うと思って。」
結果として、
私の地味な傘は花柄の傘になりました。
グレードアップです。
使い心地の良い落ち着いた傘でしたが、戻ってこないものは仕方ありませんでした。
当時は特に気にしませんでした。
先輩も申し訳なさそうでしたし、新しい傘を似合うと思って買ってきてくれたのですから。ありがたく受け取りました。
当時の私の好みは、白、黒、モダン色。
(ですが性格は、今も変わらず、ぽわっとした天然質。たぶんw)
。。。。。。
でも、当時の事を
今、ふと思うのです。
あの日。
傘立てには透明なビニール傘も何本かあったはずです。
なぜ私の傘だったのでしょう。
たまたま?
取りやすかった?
それとも、
「ゆらりなら許してくれる」
と思ったのでしょうか。
あるいは、
飲み屋さんに行くのにビニール傘では少し気が引けたのでしょうか。
真相はわかりません。
聞く機会もありません。
ただ一つ言えるのは、
私は人の傘を無断で借りたことがありません。
だから今でも時々思い出します。
あの日の先輩は、どんな気持ちで私の傘を手に取ったのだろう。
朝、早くきてそっと返せば良いと思ったのでしょうか?
もし飲み屋さんで傘を忘れなかったら。。
さりげなく傘立てに傘は戻されていたのでしょうか。
そうすると
私は、それを知らずに
あの落ち着いた色の傘を、使い続けていたのでしょうか。
花柄の傘との出会いはなかったのでしょうか。
巡り合わせ
人も持ち物も
人生は不思議です。
私の傘は、ある日突然、花柄になりました。
皆さんなら、この出来事をどう思いますか?

※本記事が応募作品です。以下はこれまでの作品です。

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