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加藤正行先生の作って楽しむヴァイオリン Part 2 イベントリポート 本体製作編

Part 1からの続きです。


イントロダクション

 午前10時半、セミナー開始に当たり、加藤先生から以下のようなお話がありました。
1)先生の子供の頃は、現在と異なり、物が豊富にあったわけではない。当時の子供は木を使っておもちゃを自作して遊んだもの。
 「皆さん、木の玩具って何を思い浮かべますか?積み木?」先生の答えは「将棋、けん玉、ヴァイオリン」。ヴァイオリンは将棋やけん玉と同じ、”木のおもちゃ”。遊び道具。
2)ヴァイオリンは木の箱、いわば弁当箱に弦を張ったような構造。鋼鉄の機械であるピアノや金属加工の必要な管楽器と異なり、木工作で自作できる楽器。
3)ヴァイオリンでは弦を押さえる指一本が半音に相当する。実はリコーダーなどより簡単に音階を弾ける楽器。
4)イメージ的にもコスト的にも、始めるには何かと敷居の高いヴァイオリンだが、1)〜3)を踏まえれば、実は簡単に始められる楽器と言える。

 自分で作って弾いて、遊んで楽しもうというのが今回のセミナーの趣旨かと思います。開発されたキット単体での頒布はしない(必ずセミナーで製作し、使い方・弾き方まで指導する)とされるのも、理解できますね。

 毎回満席、キャンセル待ちが出る人気講座。当日の参加者は12名。はじめは皆さん、やや緊張された様子でしたが、製作が始まると、和気あいあいと、楽しそうに工作を進められていました。

 以下、当日の様子をご報告します。これから参加する方の参考になれば、あるいは参加をお考えになる方のハードルを下げることができれば、幸甚です。とはいえ、なにぶん、ヴァイオリン高齢初心者の筆者の書くことですから、誤り、勘違いなどあるかもしれません。ご容赦ください。

加藤先生開発のパーツセット

 着席すると、横長の会議机の上にはすでに一人分のヴァイオリンのパーツが整然と並べられていました。ヴァイオリンの表板・裏板になる薄板、ネックになる角材パーツ、曲面に曲げられた側板パーツ(左右それぞれ三分割)と指板や糸巻きに接着剤など細かいパーツをまとめた袋、作り方と曲の記載されたA3マニュアル、CD−Rなどです。

整然と並べられたパーツセット

表板・裏板の切り出し

 まず最初に薄板から表板・裏板をヴァイオリンの形状に(二枚重ねてテープで固定してあるまま)用意されたのこぎりで切り出します。とは言え、すでに大半はカットしてあり、数カ所をのこぎりで切るだけで、もう、ヴァイオリンの形をした薄板が二枚出来上がります。
 切り出した残りの端材は、後日塗装する際のテスト用に持ち帰ります。端材持ち帰り用の袋もパーツと一緒に用意されていて、もう、いたれりつくせり!

ネックの整形

 次にネックを製作します。ヴァイオリンを構える時、左手で支える棒状の部分です。これは角材を小刀で、断面半円状に削る作業です。小刀については、オルファのクラフトナイフS型を購入して持参することになっています。
 角材を小刀で削る?木工作に不慣れな方は面食らってしまう作業ですが、その点もよく工夫されていて、心配いりません!すでに片側は削ってあり、残りの面を削るようにしてあります。削りやすい材が選んであり、また、木目と削る方向についてのご指導もあり、思ったより簡単に作業を進められました。
 机の上に広げられた広告チラシは、削り屑を集めるためのものです。共用テーブルに置かれた袋に廃棄し、作業環境を保ちます。
 なおこのネック整形作業は必ずしも当日完了させる必要はなく、大体のところで次に移ります。弾きやすい形状になるよう、後日、自宅でじっくり作業すれば良いでしょう。

 さて表板・裏板、ネックとヴァイオリンの主要パーツが揃いましたので、本体の組み立てに取り掛かります(早い!)。

表板の製作

 まずは表板の裏側にバスバーを接着。バスバーはヴァイオリンの表板、家で言えば屋根に当たる部分の”梁”となる構造物とのことです。
 ヴァイオリンの製作では本来、接着剤として膠を使います。膠は蒸気ではがせるので、ヴァイオリンの修理やメンテナンスの際にばらして作業できるのです。
 作業時間の関係もあるためでしょう、セミナーでは組み立てに瞬間接着剤を使用します。これもパーツ袋の中に新品が用意されています。
 瞬間接着剤は全体に塗り拡げるのではなく、1cm間隔で点状に置いていきます。マニュアルに点のサイズ感と間隔を記載したスケールがありますので、これに合わせればきれいに接着剤を配置できます。ほんと、いたれりつくせり。

表板にバスバーを接着

 ついで表板の表側、ヴァイオリンのテール側(構えたときに首に当たる方)にサドルという小さな木片を貼り付けます。
 ヴァイオリンでは、4本の弦を、楽器本体に直接固定するのではなく、一旦、テールピースと称するパーツに取り付け、そのテールピースをわっか(テールガット)で、ヴァイオリンの後端にあるエンドピンに引っ掛ける構造になっています。その際、テールガットが表板の後端に食い込んでしまうのを防ぐのがサドルの役目との説明でした。

表板のテール側にサドルを接着

ネックの取り付け

 次は裏板にネックを取り付けます。この作業は裏板とネックが直線状に並ぶように慎重に進めます。ネックにも裏板にもあらかじめ、中央に直線が書いてあるので、これを目安にすれば歪むことなく取り付けが完了します。
 この取り付けには瞬間接着剤と木ネジを使います。木ネジの位置は、裏板にザグってあるので、ずれることはありません。キリで下穴を開けてプラスドライバーで締め込みます(キリもドライバーも教室に用意されていました)。

ネックを裏板に接着剤とネジ止めで固定

ラベルを貼って”マイヴァイオリン”!

 裏板の製作が始まったところで、大事な作業が入ります(大事と思っているのは筆者だけかもしれないけど)。 
 裏板の内側にラベルを貼ります。ネックを左手にヴァイオリンを見た時、手前側のf字孔から中を覗くと(表板の左右にfの字形の孔が開いてるでしょ)、製作者や製作場所、製作年などを記載したラベルが見えます。今回の我々の軽バイオリンにも、ラベルをつけます。筆者は持参した筆記具でペン書き風に下記の記載内容を書きました(教室にはボールペンが用意してありましたので筆記具の持参は必須ではありません)。

durch Mitleid wissend  ←ブランド?
Falke M.D.         ←製作者名
Nagoya anno 2025   ←製作地と製作年

ラベルのサイズは60mm x 20mm程度

 記入したシールを裏板の指定位置に貼り付けてラベル完成。まさに自分で作った自分の楽器になってきました!

裏板へのブロック取り付け

 ネックの取り付けができたら、今度はネックと反対側、裏板のテール側に”ブロック”というサイコロ状の角材を取り付けます。これも瞬間接着剤と木ネジで取り付けます。
 このブロックの後端側に先述の”エンドピン”があるわけですが、今回はエンドピンとして木ねじを使用します。これもあらかじめブロックに木ネジが取り付けてあるので、作業としてはネジを締め込んで、ネジの頭だけ出るようにするだけです。この部分に、テールガットを引っ掛けるわけですね。

裏板にテール側のブロックを取り付け、エンドピンを締め込む

側板取り付け

 さて、ここから本日のメインイベント的な”難作業”、側板の取り付けです。そう、ヴァイオリンのあの、曲面で構成された側面を形作るのです。そんなこと、素人にできるの?それができちゃうのが凄いところ!
 ご存知のようにヴァイオリンのボディ(共鳴胴)側面は、中央がくびれた”凸・凹・凸”曲面形状。側板パーツは三分割されたうえで、この側面形状に合わせて、あらかじめ、曲げてあります。自分で曲げる必要はありません。
 まず、中央のくびれ部分の側板を裏板に取り付けます。取り付け位置は、裏板に書き込んであります。このガイドに合わせて側板パーツを配置します。これをどうやって接着するのか。
 てっきり、接着剤を塗って、クランプで押さえつけて固定するのかと思ったら全然違いました。最初に位置決めをしてクランプで固定します。
 通常のF型クランプやC型で一ヶ所ずつ止めるのではなく、二枚の板にボルトを通して挟み込むタイプのアレ(画像参照)を使います。

特製クランプによる側板固定

 クランプ固定したら、接着剤を1cm間隔くらいで、内側から点状にほんの少しずつ滴下していきます。すると、裏板と側板の間に接着剤が吸い込まれて接着できます。表側には接着剤がはみ出ないので、とてもきれいに仕上がります。
 ついで同様の作業でテールエンドのブロックから中央の側板までの外側に凸の側板を取り付けます。ブロックにはあらかじめ溝が切ってあり、ここにはめ込んでホゾ組するだけ。中央の側板とは、テール側の側板を外側にして重ねるだけ。2つの側板の接合部は接着しません。
 最後にネック側の側板を同様に取り付けます。こちらもホゾ組と重ね合わせで仕上げます。
 以上の作業、ベンディング加工された木の板をガイドラインに合わせて配置固定するわけですから、イージーというわけではありません。手が二本では足りない感じになりますし、うっかりすると外れて飛ばしかねません。ほかの工程に比べると、ここだけやや難易度が高めなので、今日のメインイベント的な山場と申し上げたわけです。とは言うものの、皆さん、難なく作業を完了されていましたので、これから参加しようという方も恐れることはありませんし、難しければ先生が教えてくださいます。
 ちなみに筆者の楽器は、作り方のデモンストレーションとして片側は先生が組み立てられたので、自分で作業したのは反対側だけでした(ずるい?)。

ラベル下にガイドラインが見えていますね

魂柱を立てるぞ!

 ここで今度は本当に重要な工程が一つ入ります。魂柱を立てるのです!
 魂柱(アニマ、サウンドポスト)は、先程の家の例えで言えば、大黒柱に相当する重要なパーツです。
 家で言えば屋根に当たるヴァイオリンの表板には、弦の張力20kgがかかります(弦1本あたり5kg、これが4本で20kg、子供がひとりぶら下がっているようなもの、との説明がありました)。このテンションを大黒柱として支え、かつ、弦から表板に伝わった振動(音)を裏板に伝える役目も担います。大黒柱というのは文字通りの意味なのです。
 本来、魂柱はヴァイオリンのボディ(共鳴胴)が完成してから、特殊な器具を用いてf字孔から挿入、接着剤を使わないで設置するものです。その位置は、最終的には実際に楽器の音を聞きながら微調整し、これは専門のリューテリア(弦楽器工房)でなければできません。
 今回は裏板のマーキングされた位置に魂柱を接着剤で固定します。

魂柱を立てる(テール方向から撮影)

 この際、手で押さえたりせず、接着剤をつけて、文字通り、裏板に立てるだけ、にするのがコツとのこと。魂柱に限らず、接着剤をつけて手で押さえると、むしろ動いてしまって、接着できないのだそうです。

魂柱を立てる(サイド方向から)

表板の取り付け

 これで軽バイオリンの内部構造は組み上がり、あとは表板で蓋をすれば、”弁当箱”部分が出来上がります。特製クランプで表板を固定(もちろん、表板には取り付け位置を示すガイドラインが記入してありますので、合わせるだけ)。
 今回は箱の内側から接着剤を滴下することはできません。外側から1cm間隔に接着剤を滴下していきます。楽器の表面に接着剤が残ると、後に塗装する際、塗料をはじいてしまうので、余分な接着剤が流れ出さないように作業するよう注意喚起がありました。
 サドル上からテール側ブロックへネジ止め固定して完了。

表板の固定接着(画像では裏板側が上に来るように置いてあります)

 本当にヴァイオリンになってきましたよ。午前中の二時間でここまでできました。早い!

午前の部2時間の成果

昼食とお昼休み

 一時間のお昼休み。筆者はお茶とおにぎり持参(セミナー開始時に、主催者から日曜のフードコートは大混雑とのアナウンスがありました)。
 この間、加藤先生がご自分のヴァイオリンを弾いておられたのですが、そのお姿を拝見するに、実に、楽しそう!先生は本当に音楽が、楽器が、演奏が、お好きなのだなと、先生の活動の原点をかいまみた思いがしました。
 ちなみに先生の軽バイオリン、20年ほど前に製作されたものとのこと。ニスの輝きが美しい。

指板取り付け

 13時半、午後の作業開始。楽器本体の製作で残る作業は、指板の接着のみ。指板はネックからボディにかけて伸びる黒くて細長いパーツ。加藤先生は”ネクタイ”と表現されていましたが言い得て妙ですね。
 この指板、演奏する際に左手で弦を押さえる部分ですが、ヴァイオリンの指板にはギターと違ってフレットはありません。音程の目安として3ヶ所にシールを貼ります。位置はあらかじめ指板に記入してあります。
 指板のネックへの取り付けは、ネックの中心に指板を正確に置いて動かないように手で押さえます。この状態で、ネックと指板が接する部分の、ネックの両端左右4ヶ所に接着剤を滴下して接着します。表板の接着と同様に、接着剤が流れ出さないように接着します。

指板の接着

指板の高さチェック

 指板の取り付けが完了したところで、指板の高さをチェックします。ヴァイオリンのボディ(共鳴胴部分)とネックにはある角度がついていて、側面から見ると”く”の字になっている。ネックの先端側が低く、ボディに近づくにしたがって徐々に高くなる。したがって、ネックに接着した指板も先端側が一番低く、ボディ側の端が最も高くなります。
 この指板のボディ側(テール側)の端と、ボディ表板との距離(高さ)を測定します。工具セットの中に定規が入っているので、これを使います。
 規定の数値の範囲内に収まっていない場合(高すぎる、低すぎる)、弦を押さえられず演奏できなくなってしまうので、このチェックは重要です。
 結果、全員、規定値通り、正確に組み上がったようです。お見事!ここに加藤先生のヴァイオリンキットの凄みがあります。実はネックのパーツ、この角度が正確に出るように製作されているのです。筆者のような木工の素人が作業しても、要求される精度がきっちり実現できるように、かつ、簡単な作業で精度を担保できるように、パーツ自体に工夫されているのです。加藤先生の木材加工、楽器生産技術のプロとしての技術が詰まっているのですね。

 さあ、本当に出来ちゃいましたよ、自分で作ったマイヴァイオリン。では弦を張って演奏できるように準備しましょう。

Part 3へ続く。

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