実家本箱断捨離の記:Vol.1|出てきたもの、残っていたもの
これは、実家に残る三竿の本箱に挑む記録である。
というわけで——
いざ、突入。
とは言ったものの、ざっと眺めたあとは一段ずつ、取り出して段ボール箱に詰めていく。そのはずだった。が、ついつい、ペラペラとめくってしまう。
「この挿絵いいね」
「この装丁、おしゃれ」
「わっ、すごい写真」
半分以上が棚に戻っていく。
まずい、すでに敗北が目に見えている。
しかも、あいかわらず読むつもりはないらしい。
買取してもらうもの。
資源回収に出すもの。
焼却処分するもの。
残すもの。
量としては、この順番になってほしい。
おまけに、この部屋の床はすでに傾いている。ビー玉を置けば、本箱側にコロコロと転がるくらいに。のっぴきならない状態なのだ。
にもかかわらず、すぐに妥協案が提出される。
「まぁ、第一弾ということで」
とにかく、進めよう。
出てきたのは、大きな封筒の数々。中身を出せば、記念誌とか、趣味の会の会報とか。どれもこれも、個人情報がダダ漏れである。電話番号や住所まで、事細かに記載されている。
小学校の記念誌をめくっていた姪が、校歌を口ずさむ。途中から、わたしも合わせて口ずさむ。そしていよいよサビ。
突如、二人揃って、首をふりふり大声で歌い出す。
そうなのだ。サビの部分はスタッカート。
「はい、大きな声で元気よくー」
指揮棒を上下にひょいひょいと振る、先生の姿がまざまざと蘇る。
曲はすぐさまレガートに切り替わる。
先生の指揮棒は、大きくゆったりと左右に振られる。
姪とわたしは作業の手を止め、体ごと横に揺らして、おおらかに歌う。
大笑い。
スタッカートからレガートへの切り替えが難しく、
「指揮棒をよく見て!」
何度も号令が飛んだ。指揮棒に操られて繰り返し習った。体で覚えた校歌。
世代は違っても、同じような記憶が残っているらしい。
本箱の中には、捨てられずにいたもの、捨てるのに困ったもの、忘れていたものが詰まっていた。
名簿が載ったものは、まとめて地区の清掃センターに持ち込むことになるだろう。けれど、すべてが処分されるわけではない。
紙で残さなくても、残っているものはあるようだ。
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