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助けてと言えない夜に|灯りを消さずにいる、小さな選択

心に、ひと呼吸の余白を。
咲かなくても、あなたは美しい。

こんにちは、ゆきのです。
 


 
嵐の夜、コンビニの自動ドアが開きました。

横殴りの雨が頬を叩いて。
濡れた服が、肌に張りつく。

店内の白い蛍光灯が、やけに眩しく感じました。

 
冷蔵ケースの低い唸り音。
レジの向こうの、静かな手つき。

その音が少し遠くて。
自分の心だけが、冷蔵ケースのガラス越しの
向こうに取り残されているような夜でした。
 

 
温かい飲み物を手に取りながら、ふと気づきます。

「また、今日も終わらなかった」

返しきれない連絡、決めきれないこと、飲み込んだ言葉が
——胸の奥に残っている。
 

家に帰る気力が残っていないのに。

ここにずっといるわけにもいかない。

胸の奥で、小さな灯りが揺れていました。
 


両端から燃えていく蝋燭

 
会計を済ませて、レシートを受け取る。

いつもなら、くしゃっと丸めて捨ててしまうのに。
その夜は、なぜか捨てられませんでした。

何かを「全部なかったこと」にしてしまうのが、こわかったのかもしれません。

今日の自分まで、透明にしてしまいそうで。

レシートを見つめながら、数年前のことを思い出しました。

あの頃の私は、昼も夜も走り続けていました。

朝は誰よりも早くデスクについて。
昼休みも食べながら作業をして。
夜は「あと少しだけ」を繰り返して。
 

 
「両端から燃えている蝋燭みたいだね」
 

誰かにそう言われたことがありました。
 

片方の火は、「やらなきゃいけないこと」。

もう片方の火は、「期待に応えたい気持ち」。

両側から燃やされて、真ん中の「私自身」が少しずつ削られていく。

気づいたときには、折れてしまいそうなところまで来ていました。

「踏ん張らなきゃ」と「もう限界かも」が、
同じ声量で胸の奥に並ぶ夜。

どちらかが勝てば楽、という話でもなくて。
ただ、どちらも本音で。
だから、苦しかった。
 


灯りを守るための、静かな合図

 
あの頃の私は、助けを求めることができませんでした。

言葉にした瞬間、何かが崩れてしまう気がして。

弱さを見せることが、負けることのように感じていました。


でも、今なら少しだけわかります。

 
「助けて」は、敗北の言葉ではなくて。
灯りを守りたい気持ちが、
小さな合図になって出てきただけ。
 

 
嵐の中でも消えずにいる街灯を、見たことがありますか。

あれは、ガラスの覆いがあるから。
風よけがあるから、消えないのです。

両端から燃えている蝋燭も、同じかもしれません。

誰かに風よけを作ってもらえたら。
片方の火を、少しだけ預けられたら。

蝋燭は、もう少し長く灯り続けられる。
 


火を守る、ということ

 
それは、嵐の夜に温かい飲み物を選ぶこと。
濡れた体を、少しでも早く乾かそうとすること。
無理な予定を静かに断ること。
十分に眠ること。

そうやって、自分を大切にすることと、同じでした。
 

そして、合図にはいくつも形がある。

声に出す形だけじゃなくて。
メモに書き出す形も。
信頼できる人に話を聴いてもらう形も。
今日は何もしないと決める形も。
 

その全てが、灯りを守ろうとする、あなたの静かな言葉です。
 


レシートを、捨てずに畳んだ夜

 
コンビニの外に出ると、雨はまだ強く降っていました。

レシートを、くしゃっと丸める代わりに。
細長く三つ折りにしてみました。

角と角を、きちんと揃える。

それだけの、ささやかな行為。

でも、その「揃えようとする感じ」が、今の自分には少しだけ優しい動きに思えたのです。

畳んだレシートを、ポケットの中にそっとしまう。


「今日は、これだけでいい」
 

心の中で、小さくつぶやいてみました。

今日の私は、完璧に片づけられなかった。
全部は整えられなかった。

それでも。
ここまで来た。
温かいものを選んだ。
自分の体を冷やしすぎないようにした。

その事実が、レシート一枚分の重さになって、指先にそっと残りました。
 


「言えない夜」も、灯りは消えていない

 
「助けて」と、はっきり言えない夜もあります。

メッセージ欄を開いて、閉じるだけの日。
スマホの画面を見て、息をひとつ吐いて終わる日。

そんな夜があっても。
あなたの火は、消えたわけではありません。

「明日、話せるかもしれない」と思えること。
それ自体が、灯りが残っている証拠です。

完璧でなくても。
今日できる範囲で、火を守ろうとしている。

それで、十分なのです。
 


嵐の夜を、抜けてきたから

 
家に着いて、ポケットの中身をテーブルに出しました。

鍵。スマホ。畳まれたレシート。

窓の外では、雨がまだ降り続けています。

でも、部屋の中は静かで。
温かい飲み物の湯気が、ゆっくりと立ち上っていきます。

畳んだレシートを見つめながら、思いました。

小さな選択を積み重ねていけば。
いつか、自分を守る方法が見つかっていく。

嵐の夜を抜けてきたから。
今、こうして温かい部屋にいられる。

それは、あなたが無理をしたからではなくて。
あなたが、ここまで灯りを守ってきたから。

その事実が、何よりも尊いのだと思います。
 

 
「助けて」と言えない夜も。
レシートを畳むだけの夜も。

灯りを守ろうとする、その小さな選択一つひとつが。
あなたの美しさそのものです。

そのままのあなたで、ここにいてくれて。
ありがとうございます。

咲かなくても、あなたは美しい。

ココミチは、あなたが荷物を下ろせる場所でありたい。

火を大きくしなくても、消さずにいられる場所でありたい。
 

嵐の夜は、すぐには明けない日もあります。

それでも、明けていくための小さな守り方は、きっと残っています。

その灯りを、ここで一緒に見守らせてください。

 
嵐の夜を抜けた朝に、また。

ここで、静かにお待ちしています。

 
ゆきの
 



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