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スクワットしながら呪文を唱えた180日。ママ薬剤師がダブルライセンスに挑んだ理由

病院薬剤師として働きながら、初めての育休へ—

褥瘡の認定申請を終えた日、
わたしはもう次のことを考えていました。

職場には高齢の患者さんがたくさんいる。
腎臓が弱って、薬の調整が難しい方も多い。

腎機能が落ちているのに、健康な人と同じ量の薬が処方されて——そのせいで副作用が出ている場面を、何度も見てきました。

「褥瘡の薬剤師」になれたとして、それだけでいいのか——。
答えは、もう出ていました。

これは、周りの全員に「頑張らなくていい」と言われながら、スクワットしながら呪文のように試験問題をつぶやいて、はたから見たら完全に怪しい育休期間を過ごしながらも、資格を勝ち取るまでの記録です。

「挑戦したい。でも誰かに『今じゃなくていい』と言われている」——そんなあなたに読んでほしい記事です。


「このままでいいのか?」褥瘡認定の次に、腎臓を選んだ理由

褥瘡の認定申請を終えたとき、
正直、燃え尽きた感覚はなかった。
むしろその逆。

l  申請を終えてから、回診での発言が変わった。

l  看護師さんとの会話が変わった。

l  「この薬剤師、話を聞く価値がある」と思ってもらえるようになった気がした。

わたしにとって、資格はゴールじゃなかった。
同じ土俵に立つための、入場券だったんです。

だから、次の土俵が見えた。
そう思えたのは、妊娠中でも「資格申請をすることができた」という達成感のおかげかもしれません。

わたしが働く病棟には、高齢の患者さんが多い。褥瘡を抱えながら、同時に腎臓も弱っている方はたくさんいる。

腎機能が落ちているのに、
健康な人と同じ量の薬が処方されている。
そのせいで副作用が出ている

——そんな場面を、何度も見てきた。
それは、
薬剤師として止められるはずの場面でした。
腎臓の資格を取ろう、
と思ったのはそのためでした。

そして、出産を経て育休へ。
赤ちゃんのお世話で毎日くたくた。
眠れない夜が続いて、
仕事をしていない自分がどんどん知識を忘れていく気がして…

焦りと育児の疲労とが毎日ぐるぐるしているのに、
それでも何かせずにはいられなかった。


「母親なんだから頑張らなくていい」―優しい呪いと、夫の一言

育休中に資格の勉強をする、
と周りに話したときの周りの反応はほぼ同じ。

子どもを産んだばかりなんだから、
そんなに頑張らなくていいんじゃない?
今は、子どもの事だけ考えなよ。

同僚も、上司も、友人も、
みんなが優しく、そう言ってくれました。

一番こたえたのは、親の言葉。

母親になったんだから、
子どものことだけ考えていればいい。

悪意はなかったと思う。
なんなら100%善意です。
子供の事だけじゃなく、
わたしの体も心配してくれていたんだと思う。

でも、その「優しい言葉」が、
わたしには

母親になったんだから、
あなた個人の夢やキャリアは一旦諦めなさい

という呪いに聞こえてしまったんです。

何も言い返せなかった。
また、その通りかもしれない、
と思ってしまったから。

そんなとき、夫が一言。

やりたいならやればいい。
俺にはよくわかんないけど、
大事な事なら応援するよ。

それだけ。長い言葉じゃなかった。
でもわたしには十分でした。

応援してくれる人が、たった一人いればいいと、
あのとき初めて思いました。


育休中の勉強時間どう作る?スクワットしながら呪文を唱えた怪しい日々

次は、どうやって勉強時間をひねり出そうか…、という問題。

娘は、なかなか寝てくれない赤ちゃんでした。
寝かしつけには毎回格闘。
「〇か月なら△時間ごとに寝かせた方がいい」とか、色んな情報に右往左往しながら、
抱っこしてゆらゆら、ひたすらゆらゆら。
とても勉強どころじゃない…

でもある日気づきました。
どうせ体を動かすなら、
スクワットしながら寝かしつけよう、と。
なぜスクワットだったのかは、
今でも思い出せません(笑)

覚えたいことを紙に書いて、壁にぺたぺた貼った。
娘を抱っこしてスクワットしながら、
壁の紙を見て、声に出してつぶやいた。

「腎機能低下時にこの薬は半分に減らす、
腎機能低下時にこの薬は半分に減らす……」

呪文のように、ひたすらつぶやきました。
完全に怪しい光景ですよね。

他にも、子守唄を薬の名前に替えて歌ったり、
絵本を読むようなトーンで参考書を音読したり…

赤ちゃんのお世話をしながら、
ブツブツ医療用語をつぶやいている母親。

傍から見たら、通報案件だったかもしれない。
何より、娘はどう思っていたんだろう…
大きくなったら覚えているか聞いてみたいな。

正直、育休中の勉強はなかなか大変でした。
それでも、やらずにはいられなかった理由があります。

育休中、知識がどんどん抜けていく感覚があったんです。
臨床から離れているだけで、昨日まで当たり前に使えていた知識が、霧のように消えていく気がしました。

試験云々の前に、薬剤師としての自分が薄くなっていくような、その恐怖の方がしんどかったから、勉強することで必死につなぎとめようとしていたのかもしれません。

勉強時間を確保するため、
家事は潔く手を抜きました。

•       離乳食はおかゆ以外手作りをやめた
•       コープデリとレンチンが、神だと気づいた
•       掃除機は、
   娘の行動範囲だけかければOK。
   それ以外は週1回でいい
•       洗濯物はたたまない。
        乾いたものをそのまま使う

完璧な母親像は、もうとっくに諦めていた。
掃除しなくても、誰も死なない。
手作り離乳食じゃなくても、子どもは育つ。

そう自分に言い聞かせながら、
今日もスクワットの繰り返し。


資格がくれたのは「いつでも辞められる」という最強のカード

認定試験を受けて合格の通知が届いた日のことは、実はあまり覚えていません。
その頃は時短で職場復帰してて、文字通り「仕事と家事と育児にてんてこまい」だったから。

「やった!」という達成感は、
またしても、あまりありませんでした。

ただ覚えているのは
——安堵でも、達成感でもなく、

「この職場、いつでも辞めれる」

という感覚でした。

それまでのわたしの世界は狭く、
職場の同僚と、身の回りの人間関係。
それだけが、わたしの世界のほぼ全てでした。

だから、職場で何か嫌なことがあっても、「ここしかない」という閉塞感の中で、ただ耐えていた。

でも、資格を取ったことで、
その感覚が変わったんです。
学会や勉強会でつながった人たちがいる。
わたしの世界は、ここだけじゃない。

資格を取ったからといって、
給料が上がったわけじゃありません。
でも、「いつでも辞めれる」という自信は、
逆に、今の職場での仕事を楽にしてくれました。

「ここしかない」という閉塞感の中で耐えるのと、
ポケットに辞表と資格を忍ばせて「いつでも辞めてやる」と思いながら働くのとでは、心の余裕が全く違います。

・・・でも。
逃げ道があると思えると、
不思議と今いる場所で踏ん張れるんですね。

「ここしかない」と思っているときより、
ずっと自由に、仕事ができるようになりました。

そして、何よりあの時スクワットしながら覚えた知識で、過量投与の処方箋を見抜くことができた。
文字通り「患者を救うことができた」瞬間だった。

褥瘡の資格は、チームの中に「居場所」をくれた。
腎臓の資格は、世界を「広げて」くれた。

ふたつ合わせて、はじめてわたしは、
薬剤師としての自分に少し自信が持てるようになりました。

もし今、あなたが「母親だから」という理由で
挑戦をためらっているなら。
資格じゃなくてもいい。
ほんの少しでも、自分を取り戻すための
「自分のための勉強」をしてみてください。
それは必ず、あなたを守る最強の盾になります。


「今じゃない」と言い訳してしまうあなたへ

完璧な状態で始めなくていい。
完璧な妊婦じゃなくていい。
完璧な母親じゃなくていい。
完璧な薬剤師じゃなくていい。

掃除しなくても、誰も死なない。
手作り離乳食じゃなくても、子どもは育つ。

「もう少し時間ができたら」は、永遠に来ない。
環境が整ってから。
落ち着いてから。
もう少し余裕ができてから。

そう思っているうちに、時間だけが過ぎていく。
わたしが動けたのは、準備が整ったからじゃない。
悔しかったから。 負けたくなかったから。
それだけでした。

応援してくれる人が、たった一人いれば十分。
全員に反対されても、たった一人が「やりたいならやればいい」と言ってくれれば、人は動ける。

あなたのそのたった一人が、
もしこの記事だったら、とてもうれしいです。

「今じゃない」と自分に言い訳したことはありますか?
誰かに「頑張らなくていい」と言われて、
その言葉に甘えそうになったことがありますか?
もしあるなら——それは、あなただけじゃありません。

この記事が、毎日仕事と育児に追われながらも
「何かを変えたい」ともがいている、どこかの誰かの背中を少しでも押せたら嬉しいです。

「自分も今、優しい呪いと闘っている」
「家事を手放してでも、やりたいことがある」

そう感じてくれた方は、ぜひ「スキ(ハートマーク)」を押して教えてください。 また、今後も「ママ薬剤師のリアルな生存戦略」や「褥瘡外用薬の使い方」「腎臓病薬物療法学会認定薬剤師の資格の活かし方」などについて発信していきます。

同じように頑張る仲間と繋がりたいので、
フォローをしていただけると嬉しいです!

あなたの挑戦を、わたしも全力で応援します。


資格を取ったHONOが、
現場で実際にやっていること。

▼ 褥瘡編:外用薬の選び方に悩んでいる方へ

▼ 腎臓編:親の健康診断が気になる方へ


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